14.あらぬ誤解
昨日投稿できなかったので本日2話目です。
「帰ったぞ」
「おかえり、わざわざありがとな」
「なに妾もよい話が聞けたのじゃ、してノワールは?」
「…もう寝てるよ」
「ん?ベッドにはおらんぞ?」
普段彼女たちが寝ているベッドに目を向けても、膨らみはなく人がいる気配は感じ取れない。それもそのはず彼女はそこにいないのだから。
「ちょっとあってな、ここにいるよ」
「そこにおったか」
その後頭を撫でていたら抱き締めたまま寝てしまった。何とか離そうとしたが強く抱き締めてるせいで早々に諦めた。お腹の所を抱き締めたまま寝ているので毛布に隠れてサフィには見えなかったのだ。
「さっきは"よい話が聞けた"って言ってたけど、何を話したんだ?」
「乙女の秘密ぞ」
「?」
「なんじゃその目は!!妾は歴とした乙女じゃぞ」
乙女なのは疑ってるわけではなく、サフィからそんな言葉がでるとは思ってなかった。むしろノワールが言いそうだなぁと感じていた。
「サフィが乙女なのは理解してるが、意外だと思ってな」
「軽く受け流すのはどうかと思うぞ?まぁよい明日にでも分かることじゃ」
「明日…ルミアさんが教えてくれるのか?」
「そんな所じゃ」
明確な解答を得られなかったが明日分かるのであればルミアさんに教えてもらおう。サフィが帰ってきたことだし明日に備えて俺も寝るとしよう。
「明日を楽しみにしとくよ。おやすみサフィ」
「あぁおやすみじゃ主よ」
ノワールの寝顔を見てたらこっちまで眠くなり、眠気に誘われサフィよりも早く眠りについた。
「朝だよご主人様」
「あぁもう朝か…おはよう」
起き上がろうしたらやけに体が重く感じ声のした方を見ればずっとそこにいたのか、抱き締めたままのノワールがいた。問題は反対側にいるサフィだ。俺が先に寝たのを良いことに潜り込んで来たのか?眠気のせいか頭がうまく働かない。
にしてもサフィもがっつり抱きついているせいか形がかわっていて……朝から刺激が強い。
「起きたいから離してくれないか?ルミアさんがくる前にやることやりたいんだが」
「あらあら朝からやることやるだなんて、いつからそんな人になったのですか?」
「ええぇ!?何故ここにルミアさんが!?」
いないはずの人物がいて眠気が吹っ飛んだ……のは有難いがそうじゃない。時計を確認するが約束の時間にはまだ早いし、部屋の場所は伝えてない。それよりもこの状況はまずい。
「出かける準備がしたいってことで変な意味ではありません」
「両手に花の状態で言われても説得力がありませんよ?」
「これはですね、そのなんというか朝起きたらこんな風になっていまして。サフィも起きて潔白を証明してくれ」
百歩譲ってノワールは仕方ないとしても、サフィが同じベッドにいるのは少なくとも俺のせいではない。本人の口から説明してもらえばルミアさんも信じてくれると思い多少乱暴に起こす。しかしこれがよくなかったのか―――
「…激しいのはダメじゃ」
「朝だけでなく昨夜もお楽しみでしたの?」
「いやいや寝言ですから!あーもう早く起きてくれよ」
更なる誤解を生む嵌めになってしまい、まるで獣を見るかのような瞳のルミアさん。他人事のように笑ってるが誤解の一端を担っているんだぞ、少しは主人を助けくれてもよくないか?
「うーんなんじゃ朝から騒々しい…静かに出来んのか?」
「とっくに朝陽は昇ってる!てか何でここにいるんだよ?あとルミアさんに部屋を教えたのはサフィか?」
「質問攻めじゃな。何でって妾だけ一人で寝るのは寂しかったからで、部屋を教えたのはまずかったか?早めに来て主の寝顔を見せてあげようと思ったのじゃが」
なんちゅう余計なことをしてくれた!一人が寂しいって子どもですか?昨日は乙女がなんだとか言ってたくせに……かわいいことを言ってくれる。心なしか密着具合が増してるのは気のせいか……こらこら張り合わんでいいから、いつになったら起きれるんだよ。
「はぁ全く私に見せつけるために言ったのですか?」
「なかなか鋭いではないか。ノワールがおったのは嬉しい誤算じゃたがな」
「私もここで寝泊まりしようかしら?どう思いますかクレト君?」
そこで俺に振るのはやめてほしい。素直に嬉しい反面、ただでさえ肩身が狭い思いをしてるのが、ますます居心地が悪くなって――いや悪くはならないか。
「ベッドが2つしかないのですが…」
「あら私だけ仲間外れにするのですか?私がクレト君と一緒に寝ればいいのではなくって?」
「独占禁止だよ!仲良くローテーションで、今夜はルミアちゃんに譲ってあげるよ」
「ノワールさんありがとう。サフィさんもよろしいですか?」
「よいぞ」
みなさん俺のこと見えてますかー勝手に決めないでもらえますかね。いえ反対ではないですよ?たまには一人で寝たいなぁなんて……え?ダメですか、はいわかりました。
「それじゃあ二人共そろそろクレト君から離れてくれますか?私たちはこれからデートなので」
気のせいかデートって言葉だけ二人に言い聞かせるように強調していたような――
「今度は私ともデートしようね?」
「妾も忘れるでないぞ?」
返事変わりに頭を撫でてあげることにした。一頻り撫でられて満足してくれたのか、ようやく解放してもらえた。決して寝起きだけのせいでない体の凝りを、ぐーと伸ばして体も目覚めさせ出かける準備に取りかかる。
ルミアさんを待たせているので、手短にすませて十数分で完了させた。
「そうだ二人にはお金を渡しておくよ。これくらいあれば買い食いはできると思うけど、あまり無駄遣いはしないようにな」
「は~い!」
「ちゃんとノワールの面倒みてやってくれな」
「任せておくのじゃ。夜までには帰る」
サフィが同伴なら大丈夫だろうが少しばかり不安を覚える。
「ではクレト君行きましょうか?」
「じゃあ行ってくるから二人も気をつけてな」
「主たちも楽しんでくるのじゃ」
「ルミアちゃんご主人様を頼んだよ~」
逆じゃね!?俺が頼まれる立場だよね、どうして誰も否定してくれないのかな。
デートだと舞い上がっていたけど、王都のこと詳しくないからどこに行けばいいんだ?もしかして詰んでないか俺…。
「どうしました?さぁ行きましょう、私が王都の名所を案内してあげますよ!」
すまなかったノワールよ、俺が間違っていた。頼れる彼女で良かったが、次回からは下調べを怠らないようにしようと心の中で誓いを立てデートへと出かけた。
おかしい…本当はデート回が終わるはずだったのに何故か長くなってしまった。
次回こそデートは終わり次なるダンジョン攻略に進む……はずです。
誤字報告してくださった方、ありがとうございます!