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11.サフィの実力

本日は2話投稿します。

2話目はいつも通りに18時に投稿します。

 どういう状況だ!?襲われてるのは三人の冒険者で、襲いかかってるのが数十匹のゴブリン。普通逆じゃね?ツッコミを入れてる場合じゃないな、このままだと俺たちの方にもゴブリンが突っ込んでくる。


「ノワール止まってくれ!お前ら助けは必要か?」

「助けてください!!倒した魔物のドロップ品は全て譲りますので!」


 モンスタートレインかと疑ったが違ったようだ。モンスタートレインとは、魔物を引き連れて他の人に(なす)り付ける行為で冒険者界隈ではタブー行為の一つとされ、故意にやったと視なされれば処罰の対象になる。

 また冒険者には魔物の優先順位が存在し最初に見つけた人が倒す権利を持ち、横取りは禁止とまではいかないが暗黙の了解として知れ渡っている。今回の様に助けたにも関わらず、先に見つけたのは自分たちだから報酬を寄越せと言われる可能性がある。自ら危険な目に飛び込む人はいないため、助けられる側は彼みたいに明確な救助要請と魔物の優先権を放棄することを先に述べると、助ける側(おれたち)はすぐに助けに行ける。とは言えゴブリンを倒しても全くお金にならないけどな…。


「俺は降りて戦う。ノワールは彼らの援護で、サフィはゴブリンの攪乱を頼む」

『承知した』

『りょうかい!』

「助けに入るが、ドラゴンと黒狼は俺の従魔だから攻撃はしないでくれ」

「わかりました!」


 見たところ男性二人は前衛タイプなのか剣と急所を守る防具を付けており、女性の方は杖とローブといった出で立ちから後衛か支援タイプだろう。事情は助けてから聞くとしよう。

 剣を取り出し切りつけていく。サフィはゴブリンの背後に回り爪で引き裂き、ノワールは正面に対峙しているがこちらも爪で引き裂き倒している。数分で倒し終わり誰も怪我はなさそうだ。


「二人ともお疲れ様。騒ぎを聞きつけてやってくる魔物がいるかもしれないから気を緩めないようにな。それでお前らはどうして多くのゴブリンに襲われてたんだ?」


 意思疎通で警戒を頼んでおき、俺は彼らから情報を聞き出すことにした。


「危ない所をありがとうございました。僕の名前はアッシュ、僕たち”月下の星”ってパーティーを組んでいて、僕がリーダーです。普段はゴブリン相手でも難なく倒せるのですが、5体のゴブリンは予想外ですぐに逃げ出したのですが……逃げた先にゴブリンがいて、また逃げたらゴブリンがといった感じであの有様です…」

「災難いや運がなかったと言うべきか。つまりはダンジョンに異変が起きているわけでは無いんだな?」

「ええそうです」


 ならこのまま攻略しても問題はないな。魔物は片付き長居は無用なので二人にも声をかけておく。


「そうか…なら俺たちはこのまま攻略を進めるけど、帰りは大丈夫か?」

「大丈夫です。道中お気をつけてください」

「あぁそっちもな!」


 その後は何事もなく最初の関門である10階層に到着した。到着と言っても9階層の階段を下りた先に、デカい扉があるのみだけどな。


『ボスモンスターはゴブリンキングだから一人で倒してもいいか?最近は二人に任せることが多くて、体が鈍ってるから勘を取り戻したくてな』

『ならば主の雄姿を(しか)と目に焼き付けるのじゃ』

『かっこいいご主人様が見れるね!』

「ハードルを上げないでくれ…」


 予想以上の期待に苦笑いがもれる。気持ちを落ち着かせて扉を開け……待ち構えていたのは情報通りのゴブリンキングだ。2mを軽く超える巨体、子どもの背丈くらいはありそうな剣を持っており、こちらを敵と認識したのか咆哮を響かせる。ボス部屋は更地で、戦いに支障をきたす障害もなく1vs1(サシ)で戦える。


 俺は一気に間合いをつめ肉薄する。Cランクともなればこれくらいでは動じず、むしろ返り討ちと言わんばかりに剣を振り下ろしてくる。だが振り下ろすだけの単調な攻撃なので、躱しつつ剣で胴体を切り裂くが、分厚い脂肪に阻まれ反撃される。


 腕力と体格差は明らかに相手が上なので、剣で受け止めるのは分が悪い。動きを見切りながら躱して反撃の隙を見つける。薙ぎはらい、袈裟斬り、水平切り、攻撃をひたすら避け続けていると、当たらなくイライラしているのか、剣の振りが大雑把になってきた。この好機(チャンス)を見逃さず、上段からの攻撃を躱して一息に心臓を突き刺し断末魔の悲鳴を轟かせ霧散する。


 ふぅーと息を吐き肩の力を抜く。ゴブリンキングを倒した所には、魔石がドロップしていたのでアイテムボックスにしまっておく。何とか一人で倒せたが余裕のある戦いではなく、相手の自滅による所が大きいためもっと強くならないといけないな…。


『お疲れ様じゃな』

『ご主人様かっこよかったよ!』

『ありがとう。まだまだ鍛練が足りないと痛感させられたよ…』

『主はテイマーぞ?Cランクを単独討伐はすごいことじゃ。そう卑屈になるでない』

『そうか……そうだな。ありがとう』


 ボスを倒したことによって下に降りる階段と、その横の地面には幾何学的な魔方陣が輝いていた。転移ポイントを使う予定はないのでさらに下へと目指す。


 11階層からはがらりと雰囲気が変わり森林になる。オークは図体がデカイので見つけやすいが、ウルフは木々で見えないこともあるので警戒は怠らない。


 Y字路や十字路などいくつもの別れ道に出くわすが、地図のおかけで悩むことはなく11階層にはセーフティエリアがあったので休憩をとることにした。

 その後は昨日と同様に順調に進めてはいるが魔物との遭遇率が高くなり、14階層のセーフティエリアで今日の攻略を終えることにした。


『今日はここで休むか』

『妾の出番がなく退屈じゃたな』

『私はちょっと疲れたかな…』


 ノワールはずっと動き続けてるから、もし疲れてなかったらどんだけ体力があるんだよってツッコミたくなる。

 この場所にも冒険者はいなかったので、再び人の姿になって昨夜同様、俺とサフィで見張りをすることになった。


「この調子なら明日にはダンジョン制覇出来そうだな」

「早く宿屋に帰って風呂に入りたいぞ」

「私はふかふかのベッドで寝たい」

「これでもけっこう快適なダンジョン攻略をしてるんだけどな…」


 クロキスダンジョンの近くに宿屋があれば10階層で戻ってもよかったが、ないものは仕方ない。





 見張りの時間が終わり、最終日予定となる攻略を行う。

 15階層あたりから冒険者を見かける様になったが、特にトラブルもなく互いに警戒するだけで、干渉することはなかった。ただドラゴンをみて戦闘態勢に入る者が何人かいたとだけ追記しておく。


 ウルフはともかく、オークの魔石はそこそこの値段になるので、見つけ次第倒して魔石を回収していく。オーク相手は機動性の優れたサフィが活躍し、ようやく妾のターンだと叫び、嬉々として倒しまくっていた。心なしか誇らしげに胸を張っているように見えるのはきっと気のせいだろう。




 ようやく20階層のボス部屋に辿り着いた。10階層の扉よりも見るからに重厚な造りになっている。


『主よ、今度は妾が倒すぞ』

『別にいいけど、どうしたんだ?』

『なにノワールばかり主に良いとこを見せておるから、妾もすごい所を見せてやるのじゃ』


 まぁほとんどノワールのおかけでこんなにも早く最終階層までこれたからな。俺たちは見張りくらいしかやることなかったしな…。


『ならサフィの勇姿を見させてもらうよ』

『頑張ってサフィちゃん!』

『一撃で屠ってやるぞ』


 うん?聞き間違えじゃなければ一撃と聞こえたが……仮にも相手はオークキングだ、一体どうやって倒すつもりだ?……見ればわかるか。


 そう思い扉を開けると、待ってましたと言わんばかりに咆哮をあげるオークキング。しかしサフィは動じず、飛行したまま動こうとせず痺れを切らしたのはむこうが先だった。巨体に似合わむ走りでこちらに接近するが、サフィはまだ動こうとしない。

 大丈夫かと声をかけようとした時ようやく動いたかと思えば口からブレスを吐いた!…マジ!?そんなこと出来るの?!

 さすがのオークキングも予想外だったのか、避ける暇もなく自らブレスに突っ込む形となり無惨にもその体は霧散した。正に瞬殺、一撃であった…。


「やばくない?なんちゅう威力だよ…。もしかして【覚醒】の恩恵か?」

『どうじゃ?すごいじゃろ!』


 思わず口に出してしまうほど驚いた。すごいとかそんな話じゃなく俺の従魔たちの成長ぶりはどこかおかしい。


『これでクロキスダンジョン制覇ぞ!』

『サフィちゃんすごいね!ご主人様制覇おめでとう!』

『あぁ…そうだな。あははは…』


 制覇したのは嬉しいが、俺の顔はひきつっている。散々出番がないと言っていたサフィが、最後に度肝を抜きその存在感をアピールした。あれぇー?もしかして俺の活躍が薄れてませんか?1vs1(サシ)で頑張ったんだけどな。

 こうして俺たちはダンジョンを初制覇したのだった。

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