プロローグ
プロローグは三人称視点となり、割と短めです。
本日は18時と21時にも更新しますので、読んでいただけると嬉しいです。
人類は神から祝福をされる。それは10歳の洗礼式で職業と、それに適した3つのスキルを授かることによって。例えば剣士職を授かったならば剣術、筋力強化、動体視力向上がもたらされる。ただし同じ職業でもランクと、個人の能力によってスキルは異なってくる。つまり人類皆平等ではないのだ。
職業はF~Sランクに分類される。ランクが低いといじめや馬鹿にされることがよく起こった。でも神はただ残酷に差別をしたのではなかった。例えFランクでも【覚醒】することによってSランクに昇格できる可能性があるのだ。ずばり努力で人生は変えられると――。
だがそんな簡単な話などなく【覚醒】には条件があった。例えばCからBランクへの【覚醒】は、1つ条件を満たすだけでいい。要するに覚醒条件の数だけランクが上がり覚醒条件の数こそが、その人の才能であり素質だ。では最大でいくつ条件があるのか―――6つだ。いや6つもあると言うべきか。そしてこの覚醒条件を見つける事こそが、神が人類に与えし試練だ。
なぜなら覚醒条件は満たされた時にしか分からない。曰く15歳の誕生日を迎えた時に達成、曰くスキルを一定数使用で達成、曰くある特定の魔物を討伐した時に達成、曰くダンジョンを制覇して達成などなど千差万別で難易度も大幅に違っていた。
正に職業のランクこそが重要視される世界だ。そんな世界でとある少年は己のランクが上がらず辛く苦しい日々を送っていた。当初はFランクの職業を授りこの先の人生が不安になったが、彼には覚醒条件が6つ存在した。つまり【覚醒】すればSランクになれる才能が彼にはあったのだ。しかし洗礼式から五年の月日が流れ彼は成人を迎えた。でもあと1つ、残りたった1つが満たされないでいた。
彼は15歳から冒険者として活動を始めた。冒険者という存在は覚醒条件が達成されやすい事で有名だった。なぜなら冒険者として仕事をする際は、スキルを使うし様々な場所を訪れたりする。つまりは色々行うことにより、己の覚醒条件が満たされる確率が高くなるのだ。彼はパーティーメンバーに恵まれダンジョンをも制覇したが一向に【覚醒】しなかった。めげずに頑張って条件を探し求めた。己を鍛えたり、情報収集を行ったり、さらには人脈を築いたりもしてあらゆる可能性を試した。それでも【覚醒】には至らなかった。
パーティーを結成して一年程経過したある日、メンバー内で【覚醒】出来ていないのが彼一人だけになり彼だけが取り残された。
そして彼はパーティーから追放された。だってそうだろう、約一年も一緒に探し求めたのに見つからなかったのだ。ならもう諦めるしかないと……満場一致で決定された。だけど彼はそれを受け入れられなかった。長いことパーティーを組んでいたのだから、例えスキルが弱くてもこれから先も何とかやっていけると。そしていつか【覚醒】できるとも。
だがそう思っていたのは彼だけだった。リーダーはこっそりと新しいメンバーを見つけていた。彼にはない【覚醒】したメンバーを。そこで彼は思い知らされた。今までの努力は何だったのかと。
正にこの時こそが、彼と彼を追放したパーティーの人生の転換点であったと言える。
なぜなら彼は追放された後に【覚醒】を遂げた。何とも皮肉な話だ。しかもずっと探し続けてようやく【覚醒】を果たしたのに、彼の周りに人はいなかったのだから。
たが決して彼の物語は終わったわけではない。否、追放された時に始まったと言い直すべきだろう。
果たして彼の最後の覚醒条件は一体何だったのか?そして彼を追放したパーティーの運命はどうなったのか?
ちょっとばかり彼らの物語を見てみようではないか――。
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