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83 この世界が白き神の世界だからだ

「俺は直ぐにここを立つからな。」


「エン。その事だが、出発は明日にするぞ。」


 アルティーナとキアナの後ろからゼルトが声を掛けてきた。


「なんでだ?」


「いつもは外壁のある街しか回らないから、すっかり忘れていたんだが、春になると魔物も動き出す。小さい町や村では魔物の被害が出やすいんだ。それ用の商品を用意しておかなければならないから、準備に時間がかかるんだ。」


 そうだった。薬も魔物避けの香も用意しなければならなかった。


「俺も一緒に準備するから、何が必要か教えてくれ。」


「ああ、わかった。その前にフェーラプティスを豹獣人の嬢ちゃんのところに連れていけ、それから倉庫にくればいい。」


 ああ、付添の人の紹介はしとかないといけないよな。

 そのまま付いて来そうだったアルティーナには猫用のささみジャーキーを渡し、キアナにはチョコレートを渡し、ヴィーネにはガリガリなアイスを渡して置いてきた。

 フェーラプティスを連れて宿舎の食堂がある棟にやってきた。ここは家族で住むことができる宿舎なので俺でも出入りが可能なところだ。その2階に行き一つの扉の前で立ち止まり、ノックをするが返事がない。寝ているのだろうか。仕方がなくそのまま部屋に入り、フェーラプティスに向かっていう。


「そこで寝ている豹獣人の少女のことをお願いしたい。酷い傷だったので出血が多かったと思うから、栄養のあるものを食べさせてくれるか?」


「エンさん、私には何もないのですか?」


 フェーラプティスにまでねだられてしまった。なんで、毎回誰かに食べ物をあげているんだ?

 しかし、今回はフェーラプティスに豹獣人の少女の面倒を見てもらわなければならないので、仕方がなく。前から欲しがっていた紅茶の茶葉を渡す。


「嬉しいです。」


「そうか。じゃ、頼んだぞ。」


 部屋を出ていこうとすると、名を呼ばれて足止めをされてしまった。


「エンさま。」


 どうやら、豹獣人の少女を起こしてしまったらしい。


「起こして悪かったな。俺は仕事で行かなけれならないから、君の事はここにいるフェーラプティスに頼んでいる。何かあればフェーラプティスに言うといい。そう言えば名前はなんて言うんだ?」


「ミリア。」


 少女は小さな声で名を告げた。


「そうかミリア。ゆっくり休め。」


 それだけ言って部屋の外にでる。しかし、本当にここに連れてきてよかったのだろうか?

 そんな事を考えながら、倉庫にたどり着くと、倉庫の中にはゼルトとルギアがいた。二人は何かを話しているようだが、邪魔しちゃ悪いのか?


「エン。入り口に突っ立っていないでこっちに来い。」


 ゼルトが俺に気が付き手招きをしてきた。しかし、なんでルギアがいるんだ?さっきまで一緒だったソルがいるならわかるんだが。


「エン。商品を用意する前にルギアの話を聞いてやってくれ。」


 ルギアの話?もしかして、またうまい物を食わせろって言うやつか。


「なんだ?また、食い物の話か?」


「食い物・・・うまい物は食いたいが、そうじゃなくて。ソルが帰って来て今日の話を聞いたんだが、エンには種族の事を言っていなかったと思ってな。アマツもそうだったが、この世界に黒豹族という種族は存在しない。」


 ルギアがおかしな事を言い出したぞ。黒豹族がいないって言うなら、俺の目の前のルギアはなんだ?ソルは雪豹族と言っていたが、黒豹と雪豹の血が入っているわけじゃないのか?


「はぁ。アマツもそうだっよな。この話をしたときに意味がわからないという顔をされた。エン。そもそもこの世界に黒を持つ生き物は異物とされているんだ。」


「あ゛?なんだ?それは?俺もルギアも異物だって言うのか?」


「そうだ。元々、黒を持つ種族は存在しない。なぜなら、この世界が白き神の世界だからだ。だが、時々黒を持たない種族の中に黒を持つ者が生まれることがあるんだ。それが、雪豹族の族長の息子であった俺だ。その黒を持つものは己の力に耐えきれず死ぬか、力を持て余し暴走するかどちらかだと言われていたので、子供の時に捨てられる運命なんだ。」


「捨てられるだと?黒い色を持つだけでか?」


 俺が今まで受けた黒を否定するものは酷いものだった。だが、子供を捨てるなんて酷すぎないか?いや、俺も捨てられていた。


「ああそうだ。まぁ、確かに黒を持つ種族も存在するが、元々は別の色を持っていたと言われている。なぜ、黒の種族になったかわかるか?」


「そんなもの分かるはずないだろ。」


「食ったと言われている。」


「は?」


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