74 ここのダンジョンの入り口!
俺はルギアに荷物のように抱えられ、ジェームズが用意した部屋に連れて来られた。弁当は渡すから勝手に食べろと言ったのだが、聞く耳を持ってくれなかった。
「で、俺になんの用だ。」
ルギアとソルにそれぞれお気に入りの弁当を渡し、ルギアに聞いた。
「おかわり。」
ソル、はぇーよ。焼き肉弁当を2つ差し出す。
「おかわり。」
ルギアお前もか。唐揚げ弁当を同じく2つ差し出す。
「エン。アマツはなぜ死を選んだ?」
弁当を食べ終わったルギアの言葉がそれだった。俺は天津じゃないから知らん。
「アマツは自分が死ぬことを知っていて受け入れたのか?」
だから、俺は天津じゃねぇ。
「俺に聞かれても困るのだが?」
「俺は知りたい。アマツが死んだ理由を。」
「天津が碑石探をしていたとき、一緒に居たんじゃないのか?」
「あの時は壁面に文字が刻まれていた。アマツは読めたようだが、俺たちにはわからなかった。」
文字が刻まれていた?俺のときのように映像では無かったということか。そうだよな、俺の為に最終ボスを変更し、映像を残すってことはダンジョンに干渉しているってことだから、ダンジョンの管理者という者がいるとしたら、そいつに許可を取らなければならない事だ。
ダンジョンマスターか。首都の地下にダンジョンが存在しているのなら、何か知っているかもしれないな。
「なぁ。ここを首都に決めたときに地下のダンジョンのダンジョンマスターに許可はもらったのか?」
「なんで、ダンジョンマスターの話になるんだ?」
ソルが聞いてきた。
「だってさ、考えればおかしな話だと思ったんだ。なんで、首都の範囲にダンジョンの入り口があるのか。入り口なんて普通は一つあれば十分だ。こんな街の大きさに収まる範囲で複数の入り口を用意する必要は無いよな。まるで、ここが首都になることをわかっていたのかと思ってしまった。そんな、ダンジョンの管理者なら街のことを知って、天津のことも知っているかも知れないと考えたのだが。」
ルギアは立ち上がり、ダンジョンに行こうとして、ソルに止められている。
「俺たちがどれだけダンジョンに潜っていると思っているんだ。ダンジョンマスターなんて、一度も会ったことはないんだぞ。行ったからといって会えるわけじゃないだろ?」
「確かに」
そう言ってルギアは再び席に着く。
「しかし、アマツが見ていた碑石は西の裏ダンジョンだった。俺たちだけじゃ行くことが出来ない。それに、何が書いてあるかも読めない。」
ルギアは頭を抱えて項垂れている。
ルギアは天津の死の真相が分からなければ先に進めないのかも知れないな。しかし、死ぬことがわかっていてルギアと籍を入れたのか?わかっていたら何か残しそうなものなんだが、敢えて残さなかったのか。天津の考えは俺には分からないな。手ががりがあるとすれば、ダンジョンマスターだろうな。
「なぁ。ダンジョンの入り口でいいから連れて行ってくれないか?」
「今からか?ジェームズに聞いてみないとわからんなぁ。」
「なんで、ジェームズが関係するんだ?今は休み時間だから俺が少し抜けても問題ないはずだ。」
「ここのダンジョンの入り口を管理しているのが、ジェームズだからだ。」
ここのダンジョンの入り口!
「もしかしてフィーディス商会にもダンジョンの入り口があるのか?」
「あるぞ。普段は新人なんかが迷いこまないように厳重に管理されているらしい。」
もしかして、あの黒髪のエルフの少女が言っていた偶然にダンジョンに迷い込むって、ここの入り口を偶然に見つけてしまった俺がいたのかもしれないってことか!
そして、ジェームズにダンジョンの入り口を開けて欲しいと頼めば、食品倉庫の地下に連れていかれ、金属の扉の前にたどり着いた。食品倉庫って一年前にウロウロしていたところじゃないか。
ジェームズが金属の扉に手を翳せばその扉が消え去り、その先に進む階段が顕れた。どういう原理かはわからないが、魔術が扉に施されていたのだろう。
その先に4人で進んで行く。なぜ、ジェームズまで付いて来るんだ?面白そうだからだって?
店はいいのか?アルティーナに任せているから大丈夫だと。
ジェームズがそれでいいなら構わないが、何もないかもしれないぞ。エンだからなぁって言わないでくれ。
ダンジョンの入り口にたどり着いた。冒険者ギルドから入った入り口は洞窟のようだったが、ここは岩に神殿のようなデザインされた支柱にレリーフが彫られた外壁の入り口になっていた。