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46 一緒にいること

 俺の目の前には先程から、アルティーナがモジモジしている。しかし、書類に埋もれている俺は無視をする。これ以上仕事の手を止めるわけにはいかない。


「エン。私もキアナと同じようなアクセサリーが欲しいなぁ。」


「・・・。」


「私もエンとデートしたいなぁ。」


「・・・。」


「お祖父様もエンとデートしてくるといいって言ってもらえたし。」


「ジェームズ!」


 お前ら揃いも揃って人の仕事を邪魔をするとはどういうことだ。俺は立ち上がり、ジェームズの執務室に直行する。ノックをし返事があると同時にドアを開け


「ジェームズ!俺は仕事に埋もれているんだ。なのにルギアとソルは食事を強要してくるし、キアナやアルティーナがデートに誘って来るし、ジェームズはデート如きで休みの変更を了承するというのはどういうことだ!」


 俺はジェームズに詰め寄る。


「その休みの日も仕事をしているのは誰だ?」


「俺だ。俺が俺の休みをどう使おうとも関係ないだろ。」


「それで、無理をして倒れるのは誰だ?」


「まだ、前の様に倒れていない。」


「倒れてからだと遅いだろ。息抜きも必要だ。アルティーナとデートに行ってくるといい。」


「お祖父様、エンとデートに行ってきます。」


 俺はアルティーナに抱えられ、ジェームズの執務室を後にした。アルティーナ、俺の足が地に着いていないのだが?


 そして、キアナに連れて行かれたカップルしかいない店に連れて行かれた。なんだ、これは流行りなのか?


「エン。あーん。」


 なぜか、アルティーナに肉を差し出されている。


「アルティーナ、俺は自分で食べれるが?」


「え。でも、彼氏に食べさせるのは憧れだし、彼氏に食べさせられたいし。」


「アルティーナ、俺は別に彼氏ではないぞ。」


 なんだそのショックを受けたような顔は


「私は捨てられるのね。」


 これも流行りなのか!3度目だぞ。


「アルティーナ、拾っていないから捨てると言う表現はおかしい。そして、そもそも恋人でもない。」


「そ、それは私以外に女がいると。」


 アルティーナのセリフがドロドロ恋愛ドラマのセリフになったぞ。


「だ、誰なの?キアナは食べ物を与えておけばいいのよね。フェーラプティスかしら?それともゼルトが言っていた氷の精霊かしら?」


 なぜか、浮気をしている彼氏を責める彼女のセリフに聞こえてしまう。


「アルティーナ、そもそも彼氏の定義はなんだ?」


「一緒にいること。」


 一緒いる。確かに同じところで働いてはいる。が、それは彼氏ではない!


「アルティーナ、その条件だと働いている従業員も当てはまるがいいのか?」


 ハッとしたアルティーナは


「まさか、仕入れ部門の部門長のナ「アルティーナ!なぜ、そうなるんだ?」そうですよね。彼女は結婚していますから、よかったです。」


 何が良かったんだ?本当にお前の思考回路はどうなっているんだ。

 なぜか、他の客からの非難の視線が痛い。俺が悪いのか?違うだろ!


「アルティーナ、俺はタダの見習い従業員であって、彼氏ではない。」


「キアナには耳飾り買っていたのに私には買ってくれないの?」


 話が飛んだ、大いに飛んだ。なんで、いきなり耳飾りの話になったのだ。


「なんだ?キアナもしつこかったが耳飾りに意味があるのか?」


 アルティーナは頬を染めながら


「獣人に耳飾りや尻尾飾りを贈るのは真愛の証。」


 親愛の証?まあ、それぐらいなら買ってもいいか。


「はぁ。後で、好きな物を選ぶといい。」



ジェームズ side

 アルティーナがご機嫌でエンとのデートから帰ってきた。その白い尻尾には鈴が付いた黒いリボンが着けられていた。

 話を聞くと嬉しそうにエンが買ってくれたと言ってはいるが、そんな独占欲丸出しの物をエンが選ぶとは思わない。きっと、本来の意味を知らずにアルティーナが選んだ物を買わされたんだろうな。


「くくく。」


 キアナの耳飾りもそうだ。黒の金剛石にシャラシャラと音がなる金属が付いている。

 エンにはわからないかもしれないが、音がなることで贈った恋人がどこにいるかを示す意味もあるアクセサリーだ。


「ははは。」


 本当の意味を知ったらエンはどうするかな。

 『真愛の証』は獣人にとって(つがい)ではない愛する者に贈る最上級の贈り物だということを。



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