42 エンの役に立つの!(挿絵あり)
「ちびっこいいパンチだったな。」
そんな、笑顔の全然効いていない顔で言われることではない。
「ちびっこではない。エンだ。それと俺は孤児なので親はいない。人族なので、獣人でもない。」
「エンか。しかし、人族?おかしいな。」
ソルは首をひねり出した。誰がなんと言おうとも、俺は人族だ!
「エン。食べ終わったのなら、冒険者ギルドに行くぞ。」
と、ゼルトが声をかける。
「なぜだ?」
「魔石が欲しいと言っていただろ?あと、ジェームズが牙と毛が欲しいと言っていたからな。取りに行くのだ。」
おお、サーベルマンモスの魔石か、どれぐらいになるか楽しみだな。
「じゃ、一緒に行くか。」
なぜにソルも一緒に行くんだ?行く必要があるのか?
「なんだ?俺がいてはだめなのか?しかし、俺はここの支部のギルドマスターだぞ。」
おかしな言葉が聞こえた気がした。ギルドマスターと
「なぁ、さっき。首都に戻ろうかなんて軽々しく言っていなかったか?無理じゃないか?」
「ああ、首都担当のヤツと代わればいいのだろ?」
どっかで聞いたセリフだ。
「今、首都のギルマスはルギアだぞ。」
「なんだと!あいつトロス担当だったじゃないか!ずるい、ずるいぞ!絶対に首都には戻るからな!こうなったら、ノリスに押し付けるか。」
そう言って、ソルは駆けて出ていった。押し付けられるノリスが誰かは知らんがご愁傷さまです。
「オッサン、ギルドマスターってそんなに簡単に移動が出来るものなのか?」
「わからんが、普通は無理だろうな。じゃ、行こうか。」
俺は立ち上がり、ゼルトに続き店を出ようとしたところで、肩に荷重が・・・。
「重い。」
「レディーに重いは禁句。」
「レディーは人の肩に掴まって浮遊はしない。」
今度は首ではなく肩に掴まって来たのは、ヴィーネだ。ここで立ち止まると邪魔になるので、仕方がなくそのまま進みだす。
「ヴィーネは精霊なのでいいの。」
「お礼も言ったし、アイスも食べたし、もう帰れ。」
「ヴィーネは用済みになったから捨てられるのね。」
誤解を生みそうなセリフを吐かないでほしい。
「ヴィーネが俺にくっついているだけで、拾っていないから、捨てることにはならない。」
「うー。ヴィーネはエンの役にたったの。」
「元々の原因はヴィーネがやったことをヴィーネに解決してもらっただけで、役にたったわけではない。」
な、なんか肩の辺りが寒い。
「ヴィーネはエンの役に立つの!それで、アイス食べるの!」
肩が痛い痛い。凍傷になっていないか?
「わ、わかった。あの、ヴィーネを捕まえていたヤツいただろう。そいつらが、この国に立ち入らないようにすればいい。」
「わかった。ヴィーネはエンの役にたって、アイスをもらうの。」
そう言って、ヴィーネは空中に浮き上がり、空に舞い上がって行った。やばかった。まじで凍りつかされるかと思った。これで、当分の間は現れないだろう。
「エン。まさかコートドラン商会をこの国から追い出せるのか?」
「さあ?ヴィーネがどれぐらい理解してやってくれるのかわからんし、ヴィーネ次第じゃないのか?」
「エン。ありがとう。」
「オッサン。だから、ヴィーネ次第だ。俺は知らないから礼はいらない。」
俺は、ゼルトと共に冒険者ギルドに来たが、なぜか取り囲まれてしまった。
「坊主、ありがとうな。助かったよ。」
「こんな小さな子がね。」
「本当に駄目かと思っていたんだ。ありがとう。」
「流石、ルギアさんの子供だな。」
どうやら、西側にいた人たちやその人から話を聞いた人たちに囲まれてしまっているようだ。が、最後のヤツなぜルギアと血縁関係が決定しているんだ!
「おう、来たか。上にあがってこい。」
ソルが階段の途中におり、上に来るように言ってきた。ノリスという人との話し合いはどうなったのだろう。
ソルに続いて二階に上がっていき、一室に通されたが、これもどこぞかで見た部屋の状態と一緒になっていた。なんだ、この散乱している書類は!素材の取引よりも先にこれを片付けろ。書類は苦手だ?わざわざギルドマスターが素材の取引をせずに、そんな暇があるならこれを一枚でも片付けろ。
取り敢えず重要度で分けろ、今直ぐだ。今直ぐ動く!
「おお、この部屋ってこんなに広かったのだな。」
一体何年分の書類が溜まっていたんだ。床に埋め尽くされた書類を3段階の重要度に仕分けしたあとに日付順に並べ替えたが、一番古い日付が八年前ってどういうことだ?
「ノリス。これで引き継いでも問題ないよな。」
ソルが言い放った先にいたのは、この片付けを手伝ってくれたソルより一回り大きな三角の耳に太い尻尾を持つ金髪蒼目の狐獣人だった。
「全然問題あります。これは仕分けをしただけで、書類を処理したわけではありません。この書類の山に目を通して、サインをしてから首都なりどこへでも行ってもらってかまいません。」
酷い言われようだが、ソルの下に付いていると色々あったのかもしれない。
「う。文字を見ていると眠くなるのだ。だから、無理だ。」
「仕事ですのでしてください。そして、今回の報酬ですが」
ノリスと言われた人物が俺に話を振ってきた。