15 食べすぎると太る
いきなり目の前にお札が出されてきた。1万G札だ。初めて見た。
しかし、前から思っていたことだが、絶対にこの国の元を作ったやつ日本人だよな。どうみても、この1万Gのお札に描かれているのは、『ガクモンノススメ』を書いた人物だよな。よくここまで、コピー出来たな。ギラン共和国銀行券。
そして、お札の先をたどるとジェームズが差し出していた。
「これは何だ?ジェームズ。」
「俺にも売ってくれ10個。」
もしかしてガン見していたのは気になっていたからか!ジェームズに10粒渡し1万Gを受けとる。罪悪感が半端ない。
ジェームズは気になったったのか受けとると直ぐに包み紙を剥ぎ、口の中に入れてしまった。あ、また噛むと歯にくっつくといい忘れた。
ジェームズはいきなり口をモゴモゴしながら立ち上がり、キアナの方を見て頷いた。キアナもそれに答えるようにモゴモゴしながら頷く。
なに、二人で無言で意思疎通をしているんだ。
食べ終わったジェームズが
「もしかして、これはその白い砂糖で出来ているのか?」
「ん?砂糖以外も入っているが、そうだな。」
何だったかな?牛乳と砂糖とバターだったか?グルグル先生で検索すれば出てくるだろうけど、詳しくは知らんな。
「レシピを売ることはできるか?」
「は?」
「白い砂糖と一緒に売り出すというのも一つの手だと思わんか?」
うん?砂糖とキャラメルのレシピを売るのか?しかし、俺がキャラメルを作れるかっていったら作れない。
「作り方を売ることはできるが、俺に再現しろと言われたらできないぞ。」
「それで、かまわん。新しい契約書を作ってくるから、レシピを書き出してくれ。」
と言われ、紙とペンを渡された。今、書くのか?そして、二人は部屋を出ていった。
はぁ。そんなにキャラメルが旨かったのか?
グルグル先生で検索する。この国の言葉で書き写すが、バターって単語わかんねー。油っていつも何を使っているんだ?そもそも牛が存在するかも知らん。孤児院のミルクはヤギのミルクだったしなぁ。
書き終わったぐらいにジェームズが戻ってきて、契約書を渡された。だから、読めないんだって。先程のキアナも戻って来ており、契約書と引き換えに1万Gを渡された。何だこれは?ああ、10粒欲しいと。これを読むから1つ足せって?ああ、わかりましたよ。
契約内容は使用料と売り上げの2割を一月毎に支払うという内容だった。そして、レシピを渡してみると。二人の顔が愕然としていた。
「これ、こんなにも砂糖を使っていたのですか。」
キアナが前のめりになって聞いてきた。
「これだけ甘いからな。だから、食べすぎると太るぞ。」
3粒目を食べようとしたキアナがビクリとなって、勢いよく振り向く。何かを言いかけようとしたが、ジェームズの言葉に遮られた。
「こんなにも作業行程が多いのか?もう少し簡単には出来ないのか?」
何故ジェームズがそう言っているかは理解ができる。白い砂糖がないということは、水飴も練乳もないだろうから、一から作らなければならないのだ。
「行程を省いた物は存在するが、水分が多く日持ちがしない。家族に作るのであればそれでもいいが、商品としては冷す魔道具でもなけば成り立たないんじゃないのか?」
ジェームズが持っているレシピを取り上げ別のレシピを渡した。普通のクッキーのレシピだ。ここに置いてある全粒粉クッキーよりは美味しいはずだ。
「ここに置いてあるクッキーを作っているヤツに作ってもらうといい。」
「これも太るの?」
キアナが聞いてきた。妹もカロリーがどうとか煩かったな。
「何でも食べすぎると太るのは変わらんだろ。」
「さっきの甘い物を食べた時、太るって言った。」
「食べすぎると太ると言ったんだ。めんどうくさいな。好きなものを食べて満足するなら、太ってもいいっていうヤツもいれば、甘いものはご褒美だといって我慢するヤツもいる。どうあろうかなんて、その人次第だ。」
キアナは頬を膨らませる。何が問題なんだ。
俺はジェームズの方に向き
「レシピの件は保留でいい。それを作れるヤツがいないと意味がないからな。それ以外の契約は契約書通りでいい。今日は、これで失礼させてもらう。」
俺は立ち上がると、ドアの方へ向かう。
「待ちたまえ、今日泊まる所も決まっていないのだろ。こちらで用意しよう。」
「いやいい。少し町をプラプラしたいたら、適当に探す。明日の4刻ぐらいにフィーディス商会にくればいいのか?」
「それで、かまわない。」
ジェームズの言葉を聞いた俺は部屋を出ていき、フィーディス商会を後にした。そして、俺はそのまま街の外へ向かって行った。