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117 米が食いたいんだ

 俺の言葉にルギアは目を見開いて俺を見てきた。多分もう一度アリスの予言が記してあった場所に行きたいのだろう。例え読めなくても、天津が死んだ真実を知ってしまった今その場に立って何かを知りたいのかもしれない。

 いや、何も話してくれなかった天津本人に文句でも言えばスッキリするんだろうけどな。モヤモヤと何かが残り続けているのだろう。


 そう言えば天津の墓ってあるのだろうか。聞いたことがなかったな。


「ダンジョンマスターに交渉次第で、なんとかなるかもしれない。まぁ、会える可能性もないけどな」


「行く」


 即答だった。やっぱり行きたかったんだよな。するとソルも立ち上がり、イソイソと準備を始めた。おい、今から行くとは言っていないぞ。


「おい、ソル。今から出発したら着いたら夕方だろ」


「魚が美味かったから食いに行こう!」


 それか!結局美味しい物が食べたいだけじゃないか!今日はダンジョン産のお米が手に入ったからそれを食べたいから行かないと言おうと思えばルギアに荷物の様に抱えられいた。


「ちょっと待て、今日はジェームスに遠出すると言っていないから駄目だ。それから俺は荷物じゃない!」


「今から言いに行けばいい。」


 ソル・・・俺は米が食いたいんだ。




 結局、ジェームスから好きにすればいいと言われ、俺は今、空を飛んでいる。もちろん騎獣に乗ってだ。

 ギルドの大柄の女性(?)は二人が数日ギルドを離れることに難色を示していたが、結局認めた。もう少し粘れよ。


 そして、騎獣に乗せられ王都を飛び立った。ソルが鼻歌を歌って尻尾がブンブン振られているが、なにげにバシバシ当たって痛い。そんなに書類と格闘するのが嫌だったのか。


 チラリとルギアに目線を向けると、神妙な雰囲気が醸し出されていた。色々複雑な心境なんだろう。


「はぁ」


 思わずため息が出てしまった。


「エン、どうした?」


 ソルにため息が聞こえてしまったらしい。


「なんでもない」


「言いたいことがあるなら言え。じゃないとわからないぞ」


 ソルが後ろを振り向いて言ってきた。言いたいことか・・・


「尻尾が当たって痛い」


「あ。うん・・・それは悪い」


 といいつつ尻尾が当たるのは変わりない。これはエルトに着くまでバシバシされるのだろうか。




 夕方にエルトの漁村にたどり着いた。夕日がえぐられ湾状になった海にオレンジの道をつけて沈んでいく。

 今思ったが、ここに泊まるところなんて無かったと思うのだが、どうするつもりなのだろう。


「おや、英雄様ではありませんか」


 声が聞こえた方を見れば、何時ぞやかのアホー鳥を持っていた老人が立っていた。


「ああ、ご老人。悪いが代表者に取り次いでもらえないか?」


 ソルが老人に向かって言うと、老人は快く受けてくれた。流石英雄様の名前は伊達じゃないな。


「今日はどうされましたかな?」


「ああ、エンがダンジョンマスターに話があると言っていてな」


「そうですか。英雄様がその様に言われるのなら、マスター様も快く答えてくれるでしょう」


 ん?


「あれから1月以上経つがどうなった?」


「英雄様の助言のおかげで、生贄で居なくなった者達が戻って来まして、里は活気づいております」


 爺さんはにこやかに話している。さっきマスター様って言っていたが、アホー鳥が未だに爺さんのところにいるのだろうか。


「なぁ、爺さん。あほ・・・ダンジョンマスターはどこにいるんだ?直ぐに会えるのか?」


 俺が爺さんに聞いてみると、爺さんは俺の方を見て、ニコニコとしながら


「ええ、あちらに」


 そう言って、爺さんはとある一点を指差す。家・・・小屋のような家の屋根の上に九官鳥の姿が見えた。


「英雄様が来られたのに気が付かれたのでしょう」


 気がついた?爺さんと会ったのはついさっきだ。早くないか?もしかして、一ヶ月で湾の底から漁村一帯までダンジョンを広げられたのか?


 翼を広げ九官鳥がこちらに飛んできた。やはり『アホー』と聞こえる。


『やぁ。1月ぶりかな?』


 俺の肩に止まったアホー鳥から知性が感じられる声が聞こえてきた。今度は普通に話しかけてきた。


「ああ、1ヶ月ぶりだ」


『僕に聞きたいことがあるんだって?』


 やはり、ダンジョンは漁村の入り口までは広がっていたのだろう。俺たちの会話は筒抜けだったようだ。


「そうなんだが、落ち着いて話せるところはあるか?」


『こっち』


 そう言ってアホー鳥は片方の翼を前方に広げた。指したところは先程アホー鳥が止まっていた掘っ建て小屋だった。


 その掘っ建て小屋に入れば8帖程の土間の中央に囲炉裏がある間取りだった。ここは皆同じ感じなのだろう。


 そして、囲炉裏の側にはここの代表者と名乗った女性とその女性と同じ皮膚が青い鱗に覆われた男性が座っていた。



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