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Aランク職員ベルカ・ミネンの異世界譚 -1-

というわけでWDWCの一章の断章です。


主人公が寝ている間にヴァラリアでの戦いの一部になります。

 「我こそは魔王軍最強の騎士! グラバルト! 小娘、名を名乗るがいい!」


 まさか異世界で名乗り合いをするとは思いませんでした。ですが、私はこういうの大好きですよ。騎士同士の戦い久しぶりです。


 「我が名はベルカ・ミネン! 示現流が使い手。一の太刀にて断ち切らせていただきます」


 私が上段に構えるとグラバルトと名乗った白銀の鎧を纏った騎士は中段に構えました。ここからは先を取るか後を取るか、間合いの読み合いです。いい殺気を相手が当ててくれるので私の気分は高揚していきます。グラバルトの背後にいる魔王軍の軍団も特に手を出してくる様子はありませんし、瓦解していると思っていた魔王軍もそれなりに統率を回復させているみたいですね。

 沈黙の中で読み合いを続けていると遠くの方から大きな爆発音が聞こえてきました。中央平原で戦っている緑郎君の魔法攻撃でしょう。不意な轟音に私の意識がわずかに反れたのを見逃さずにグラバルトが大剣を突き出してきました。

 私がワザと見せた隙から狙ってくるのは胴体ですね。グラバルトの持つ大剣で胴体を突かれれば急所を外したとしても大怪我になり、勝負が決まってしまいます。回避をしても横に切り付けてくるでしょう。

 なら行動は一つ。最大の力と最速の動きで攻撃です。


 「キェェェェェェェッ!!」


 声と共に斬りつけた刃でグラバルトは大剣ごと体が真っ二つになりました。音速を超える斬撃により発生した余波でグラバルトの後ろにいた魔王軍の一部が吹き飛び、発生した真空の刃で切り刻まれていきます。

 少し間、何が起こったのか分かっていない様子の残った魔王軍でしたが、軽く風が吹き始めるとそれを合図にしたかのように我先にと逃げだしていきました。


 『ベルカ様、追撃を』

 

 「分かってますよ、ミナモ」


 インカムから聞こえてきた私のパーソナルAIであるミナモに答えると同時に魔王軍を追いかける。


 「ミナモ、状況報告をお願いします」


 『緑郎様の広範囲攻撃魔法により魔王軍残党はほぼ壊滅しました。残存している敵生体については他の方々が対応に当たっています』


 「ではこちらの奇襲部隊を倒せば終わりになりそうですね」


 私が今いるのは山沿いの峠道。昔は使っていたらしいですが、別の使いやすい道が整備されてからは誰も使わなくなった道だそうです。それだけにこの道を使えば私達がベース基地としている街に奇襲もかけられる。それほど頭が回る者が魔王軍にいるのかと疑惑の声を上げる人もいましたが……備えておいて良かったです。

 時より私の方を振り返る魔王軍が怯えた表情を浮かべています。ここまで怯えられるのは少々ショックですが、仕方ないかもしれません。

 魔王軍最強の騎士でしたっけ? その人を一蹴してしまったわけですからね。

 せめてがむしゃらに向かってきてくれればいいのですけど、逃げようとする者を切るのは気が進みません。

 とはいえ仕事は仕事ですのでやることはやります。

 

 「なるべく一瞬で終わらせてあげますね」


 大刀を上段に構えて直して再度突撃の用意をする。呼吸を深く、体の奥の奥まで酸素を送り込み、力と同時に一気に吐き出す。一足、二足と敵集団へと近づいていき、まずは手前にいた太ったゴブリンを盾と鎧ごと両断。素早く腕を上げて周囲の骸骨兵士達も同様に脳天から両断。

 一呼吸で47打。

 やはり気が引けているのかいつも通りの調子が出てませんね。普段なら60以上は打ち込めるのに。

 そんなことを思いつつ一呼吸一呼吸続けて敵集団の半数程度を切り捨てた頃に私の頭上目掛けて何かが投げられてきました。

 爆弾かもしれないと足元の岩を切り取ると投てき物に向かって投げつけてます。運が悪くても岩とぶつかった時点の空中で爆発、運がよければ離れたところで爆発してくれるはずでしたが、結果はどちらでもなく岩が空中で静止しました。

 周囲の敵を一蹴しつつ上への警戒していると岩の陰から現れた大きな爪が私に向かって振り下ろされました。

 爪を回避するために後ろに飛びのくと爪を振り下ろしてきた相手の正体が見えてきました。


 「ドラゴン……ですか」


 赤い鱗を身にまとった推定20メートルほどのドラゴンが私の目の前に降り立ちました。ドラゴンはかなりの体重のようで着地と同時に地面が揺れて崖の一部が崩れます。それに魔王軍の一部が巻き込まれて下へ落ちてきました。なんと災難な。本来はこのような狭い峠でドラゴンを召喚する予定はなかったのでしょう。

 召喚した方法は分かりませんがこのドラゴンが街中に突然出現したら街への被害は大きかったと予想します。私達的にはここで召喚させたことは大正解ですね。


 「ミナモ、ドラゴンの種類など分かりますか?」


 『外見からの情報のみとなりますが、火龍、火を吐くドラゴンかと推測されます』


 ドラゴンは多種多様な異世界がある中でも共通して強い種族です。鋼鉄よりも硬い鱗に巨体。それだけでなくドラゴンの多くは特異な能力を持っている個体が多いです。

 火や水を吐くのは当たり前で視線だけで相手を石にしたり、吠えるだけで聞いた相手の魂を吸い取るといった強敵が多いです。私も何度かドラゴン討伐をしたことがありますがどれも大変でした。

 ミナモの予想では目の前のドラゴンは火龍。炎を吐くだけといってもどの程度の炎を吐くかで警戒度は違ってきます。鉄を容易に溶かす温度の炎なのか、人を灰すら残さず燃やし尽くす炎なのか、どれにしても正面から戦うのは危険ですね。

 ドラゴンの背後では魔王軍が続々と撤退をしていきます。ドラゴンが殿とは贅沢ですね。このままドラゴンとにらみ合っていては魔王軍に逃げられてしまいます。私の役目は魔王軍の殲滅。ここで滅ぼしておかないといずれ再起して街を襲うかもしれない。そうしないためには全滅、殲滅するしかありません。

 焦る私に対してドラゴンはその場をじっと動かず私の出方を待っているようです。私の動きに合わせてカウンターでもするつもりなんでしょう。ドラゴンは戦闘力だけでなく非常に頭も良いため、ただの力押しでは勝てません。力も知力もドラゴンより勝って初めて勝ちを得られる。それほどの強敵なんです。ドラゴンは。


 『ベルカ様、魔王軍の残存部隊との距離がだいぶ離されています。まだ追いつける距離ですが、分散されると厄介です』


 「分かってますよ」


 峠道は一本道ですが、麓に降りれば森が広がっていてそこで散り散りに逃げられれば取り漏らす可能性があります。なのでこの峠にいる間に決着をつけたいのですが、目の前のドラゴンは容易に退いてくれそうにありません。

 時間もなく相手の手数が分からないとなると取れる手段は一つです。そう、私にとっては常に一つ。

 最大の力と最速の動きで攻撃です。


 「我が一の太刀にて断ち切らせていただきます」


 自分自身への言霊による身体強化と戒めを行い精神を研ぎ澄まします。私の言霊は本物の言霊使いの方に比べたら自己暗示程度でしかありませんがこれで十分です。私がやれると思い込めればそれでいいのです。

 自分のもっとも自然体な構えとして上段を選択し、ドラゴンから注がれる縦長の瞳孔の視線を体全身で受け止めます。相手は私の指先一つの動作から私の攻撃に対して対応してくるでしょう。

 先の先はドラゴンに取られます。これは確定です。私が前に出ようとした瞬間に身を焼く炎をドラゴンは吐き出すでしょう。狭い峠道に逃げ場はなく隠れる場もなく、唯一は崖から飛び降りることですがそうなれば相手に無防備をさらすことになります。第一にそれでは逃げた魔王軍に追いつけません。

 ならばと私は前に出ます。

 私の重心がわずかに前へと移動したのを感知したドラゴンは口を広げ、その喉の奥から燃え盛る炎を峠道いっぱいに吐き出してきました。前へ前へと走り出した私の眼前に炎が迫ります。顔の産毛が高熱を感じた瞬間、私は渾身の一刀を振り下ろします。

 発生した斬撃が空を走り、ドラゴンの炎を真っ二つに引き裂き、私とドラゴンへの道を切り開きました。ドラゴンの目が驚いたように泳いでいるのが見えました。いけませんね、ドラゴンたるものこれくらいで怯んでいては。

 振り下ろした一刀を持ち上げると同時に再び私は走り出してドラゴンの喉元へと辿り着きました。ドラゴンと目が合います。何か言いたそうでしたが猿叫と共に振り下ろした一刀でドラゴンの首が斬り落としましたのでもう聞けません。


 『ベルカ様、お見事です』


 「褒めるのは残りを綺麗に片付けてからにしてください」


 ドラゴンの返り血を浴びながら魔王軍の追撃を再開です。鎧と髪が血で汚れているので終わったら水浴びをしましょう。この姿のまま街に戻っては皆を怯えさせてしまうかもしれませんから。

書いてみたら思ったより長かったので二分割です。

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