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戦力差

一週間ぶりとなります。

久しぶりの戦闘シーン。

 『状況確認中……申し訳ありません。アマノリリス様はこの世界の住民として識別が不十分であったため除外の対象から外れておりました』


 「今から除外することは……」


 『不可能です。空間隔離装置は展開後に一般人を隔離空間から除外しています。この処理は一度のみ可能で再度除外することはできません』


 「失態だぞ、サリー」


 『分かっております。悲しいですが1,000サリーポイント減点です』


 真面目な返答なのか考えるもの面倒だ。

 ふらついているアマノリリスを無理やり抱き上げると足に力を込めて大きく後ろへと飛ぶ。


 「え? な、なに!?」


 「しゃべるな。舌を噛むぞ」


 途中何度か着地してさらにあいつらから逃げるように後ろへ飛ぶ。100メートルほど離れたところでアマノリリスをゆっくりと降ろす。普段なら車や人々が行きかう道路の真ん中だが、この隔離空間では誰も何も通ることはない。 


 「暁さん?」


 視力がようやく戻ったアマノリリスが辺りを見渡して現状に戸惑っている。


 「簡潔に説明するぞ。あの巨人とゾンビ達が敵だ。アマノリリスさんは本当なら安全な場所へ隔離されるはずだったがサリーがドジして巻き込まれた。以上だ」


 『ドジをしてしました。ソーリー』


 やはりこのAIについては科学課に一度問い合わせた方がいいな。


 「今の説明……ボクのこと忘れてない?」


 背後から聞こえたと同時に声がした位置へ回し蹴りを放つ。が、蹴りは空を切る。そのまま体を回して周囲を探るが声の主、おそらく黒マントの姿は見えない。


 「こっちだよ」


 再度の声に上を見ると黒マントが俺の真上を漂っていた。

 黒マントを下から見ているので足裏などが本来は見えるはずなのだが、中身は蓋でもしてあるかのように黒一色で何も見えない。


 「聞きたいことがあるんだけどいいかい? 断っても無理やり聞くから素直に答えてくれると時間の無駄がなくてお互いにいいと思うよ」


 「……俺の言葉が分かるんだな」


 「別に難しくもない言語だからね。ボクくらいになれば余裕だよ」


 「で、聞きたいことがあるんだけどいいかい?」


 「なんだ? 答えてやるぞ」


 「へぇ、素直だね」


 「この世界へ始めてきた奴へのサービスだよ」


 もちろん嘘だ。俺の今の目的はこいつらを倒すことじゃなくて時間を稼ぎ、救援が来るまでの間、こいつらをこの場に留めておくことだ。

 巨人も黒マントも俺が勝てる相手ではないことは一目見て察している。それに加えて大量のゾンビ兵士も厄介だ。一体一体は俺でも倒せるだろうが数が多すぎる。多数を相手にする術がない俺では対処しきれない。

 なので会話をして一秒でも時間を稼ぐことを優先する。


 「この空間。ボクらがこの世界へ来た時は沢山の人がいたけど今は君達二人しかいない。さっき光ったアレが原因だよね。何をしたんだい?」


 「似た世界を作ってそこに隔離させてもらった。どうやらこの世界で悪さをするつもりのようだったからな」


 「……魔法か装置か分からないけれど異世界を生成したというわけだね。そこにボクらを取り込んだ……いや、違うな。周辺を一度全て取り込み、その後対象を除外していったのかな。ボクらは取り残されたというわけだ」


 「正解だ」


 「でも一時的だよね」


 「……」


 的確に真相を突かれて沈黙をしてしまう。


 「これも正解か。うん、今日もボクは冴えているね」


 沈黙を肯定として受け取られてしまった。事実、この隔離空間は30分程度しか維持できない。大規模な装置をあらかじめ設置していればもっと長時間の維持は可能だが携帯用の発生装置である円盤型では限界がある。


 「どうして分かったか知りたいかい?」


 「頭がいいのを自慢したいみたいだな。どうぞ、言ってみてくれ」


 「煽るね。まあいいさ。分かった理由は君もこの空間にいるからだよ。ボクらをずっと閉じ込めておける空間なら君がいる必要はない。なのに君はここにいる。なぜか? それは内部に隔離した者が想定以上に暴れた場合、空間が維持できなくなるからだろう」


 黒マントの言う通りだ。30分経たなくてもこの空間の耐久度を超える攻撃が内部、外部から加わった場合、この空間は崩壊する。そうなればこいつらは現世界に解き放たれてしまう。おそらく今はまだ外の避難も完全には済んでいない。まだまだこいつらに外に出られては困る。


 「君の役目はボクらの妨害と救援が来るまでの時間稼ぎだよね」


 「その通りだよ。壱式・甲(いちしき・きのえ)展開」


 いつ戦闘が始まってもおかしくないと壱式を展開して身構える。

 

 「アマノリリスさんは俺の傍から離れないで」


 「は、はい」


 アマノリリスが俺の服の裾を掴んでくる。不安からの行動なのだろうがこれでは動きにくい。


 「服から手は放してくれ。すまないけど」

 

 「ごめんなさい!」

 

 「その赤髪の女の子がここにいるのは想定外のようだね。さすがのボクもその理由については分からないや。大して興味もないからいいけどね」


 悠々と宙を漂いこちらを見下ろしている黒マントに俺は能力を発動して拳を放つ。

 不意を付いた一撃は黒マントの顔がある場所を強打した。無人の街に打撃音が響く。

 俺の最初の一撃を防御することは不可能だと自信を持って言える。初撃が最大火力。だからこそ敵の一人を確実に倒すために遠慮などせずに全力で打ち込んだ。


 しかし、黒マントは宙に浮いたままだ。動きは止めているがそこから少しも動いていなかった。


 効いていないわけがない。が、効いているようには見えない。俺の中を巡る疑問は黒マントの言葉が解決した。


 「いやはや、危なかったよ。防御魔法が無ければやられていたかもね」


 防御魔法!? いつの間に?

 呪文を口にした様子はそぶりもなかった。無詠唱での発動にしても何らかの動作はあったはずだ。


 「今の攻撃は君だよね。一体何をしたんだい? 打撃のように感じたけれど……魔法じゃなくて超能力かな。打撃を飛ばすといった」


 俺が混乱している間に黒マントは俺の能力を看破していた。

 

 頭も能力もあちらが上だと実感する。

 どうする……このまま戦いを続けて救援が来るまで時間を稼ぐことができるのか。


 悩み続ける俺の視線に何かが飛び込んでくるのが見えた。四角い箱が向こうからどんどん近づいてくる。


 自販機!?


 近くに居るアマノリリスの腰を抱えて横に倒れるように避ける。自販機は避けた俺の左腕を僅かにかすって後方のビルへと激突。自販機は衝撃でくの字に折れ曲がっている。


 自販機を投げてきたのは遠くにいる巨人だ。300キロ近くある自販機を軽々とあの勢いで投げてきた腕力は見た目の巨大さ以上に危険な存在だと再認識する。 


 「おいおい、ボクに当たったらどうするつもりだい?」


 「お前なら平気だろうが!! いつも硬い防御魔法で身を守っているんだからよ!」 


 「ま、そうだけどね」


 通信魔法でも使っているのか巨人の声が黒マントから聞こえてきた。


 「防御魔法を常に展開しているのか」


 先ほど俺の攻撃が通じなかった訳が分かった。分かったが同時に俺では黒マントも倒せないことも分かってしまった。壱式・甲(いちしき・きのえ)が通じないなら弐式・乙(にしき・きのと)をと考えるがまだ発熱する問題は解決していない。長時間使い続けて高温状態が続くと弐式・乙のセーフティ機能が稼働してしばらく使えなくなる。

 この状況で壱式、弐式が使えなくなるのは避けたい。


 「バルラ、話は終わったのか? オレもそいつと遊ばせろ」 


 「……サープス、君が遊ぶと壊れてしまうだろ。まあいいさ、聞きたいことはだいたい聞けたし。君が遊んでいる間にボクはこの空間を壊しておこう」


 バルラと呼ばれた黒マントがさらに高度を上げていく。周辺の雑居ビルよりも高い場所へと到達するとバルラの周辺に黒い槍が無数に出現した。


 「痛みを与えろ、<ダークランス>」


 バルラは黒い槍が上空へと放つ。数秒後、上空で黒い槍と隔離空間の壁がぶつかり激突音が響いた。


 「結構硬いね。苦労しそうだよ、まったく」


 呆れたようにつぶやくバルラの周辺に先ほど以上の黒い槍が出現する。

 

 「やらせるかっ!」


 これ以上の空間への攻撃を阻止しようと能力を発動する。が、足元が激しく揺れて狙いがズレてしまい、見当はずれの場所を打撃した。


 「おまえはオレと遊ぶんだよ!」

 

 足元の揺れの正体はこちらへ向かってくるサープスと呼ばれた巨人だ。巨人の一歩一歩が地響きとなり、周辺の建物を激しく揺らす。一歩が大きいため100メートルほどあった距離はあっという間に縮まり、見上げる目の前に巨人が現れる。

サープス。そのままサイクロプスですね。

黒マントについてはのちのち。


サリーとの会話は清涼剤となっていただければ。

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