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女神、気絶、連行

主人公とAIサリーの会話はコミカルに進めていければと思ってます。


 「ええぇーー!!」


 「罪状は対異世界法第二章七十六条、現世界の住人に対する拉致未遂罪」


 「私、捕まるんですか!?」


 「捕まったんだよ。細かい取り調べは支社で行う。一緒に来てもらうぞ。拒否権はない」


 「お願い、見逃して! 私は自分の世界を救わないといけないの! 捕まっている時間はないの!」


 自称女神が俺の手を両手で握りしめると涙目に加え上目遣いで訴えてきた。


 「色仕掛けは無駄だ。罪は罪だからな。おまえにも事情はあるんだろうが、それは取調べで話せ」


 「そんな……」


 自称女神は願いを却下されたことにショックを受けたようで顔を伏せた。


 「じゃあ、ごめんなさい。力づくになるけど逃げさせてもらうね。<我が名に連なる熱き力よ。今、その力を解き放て>」 


 覚悟を決めた顔を上げると自称女神は呪文を口にした。

 警戒し自称女神から距離を取って衝撃に備える。呪文と共に赤い光が自称女神から放たれ、彼女の望んだ力がこの場に現れる……はずだった。


 「……あれ?」


 状況に変化はなく、俺と自称女神の間を微かな風が流れた。


 「ど、どうして!? 私は魔法でこの鎖を焼き切ろうと……」


 「サリー、封印具の動作に問題は?」


 『未知の魔力パターンでしたが、類似魔力パターンの封印式を応用しました。結果、問題なく動作しています。私自身の応用力の高さに50サリーポイント進呈です』


 「封印具? 封印したの? 私の女神の力を? あなたは一体、何者?」


 「よく分からない相手を転生させたり、転移させようとしていたわけか。手あたり次第だな。とりあえず、自己紹介くらいはしてやる。俺はあかつき 乾斗けんと。世界異世界対策機関、通称WDWCの職員だ」


 『正確に申しますと日本東京支社戦闘課の職員となります』


 急にサリーが自称女神にも聞こえるようにとインカムの音声機能をスピーカーに切り替えて声を発した。俺の説明への補足なのだろうが、急に耳元から聞こえる音量が大きくなったので驚く。


 「サリー、驚くからやる時は一声かけてからにしろ」


 『申し訳ございません。次回よりそのようにいたします』


 「今の声は……精霊でもいるの?」


 『精霊ではありません。私の名前はサリー。乾斗様のパーソナルAIとして従事しております』


 「えーあい?」

 

 自称女神はAIを知らないらしい。魔法が発達した異世界の場合、機械化学は発達しにくいらしいので知らないのも無理はないが。


 「機械の精霊とでも認識しておけ。ほら、行くぞ」


 「ちょ、ちょっと、私は本当に自分の世界を救わないといけないの」


 「サリー、車の手配だ」


 自称女神の言葉は無視する。何を言われても俺がやることに変更ない。それに下手に会話をすると催眠や魅了の術をかけられる可能性がある。手錠の封印具は機能しているようだが、未知の異世界自称女神だ。どんな異能を持っているかわからないので警戒しすぎて悪いことはない。


 『既に手配済みです。後、10秒ほどで到着します。8、7、6』


 「律儀にカウントしなくてもいい。車が見えた」


 AIによる自動運転の車が目の前に止まり、後部ドアが開いた。やや縦長の車両の後部座席は6人ほど乗れるスペースがあり、座席が向かい合うように並べられていた。


 「乗れ」


 「話を聞いて。あなたに私の世界を救ってほしいの。今なら……え~っと特殊スキル? 能力? もつけてあげるから。男の子はこういう好きだって本に書いてあったわ」


 「力づくで押し込むぞ」


 無視を続けて手錠の鎖部分を掴んで車に乗るように指示するが、自称女神は抵抗するように一歩後ろに下がった。


 「捕まるわけにはいかないの! こうしている間も私の世界が大変な目に合っているの、本当よ。だから、お願い。あなたの力が必要なの」


 自称女神の言葉は本心から言っているようで嘘や誇張はないように感じた。自称女神の世界が何が原因なのかは知らないが大変なのは本当なのだろう。


 「サリー、封印具の」


 俺の声に期待するかのように自称女神が笑顔を浮かべた。


 「スタンスイッチ起動」


 『Will do』


 封印具から電気ショックが発生すると自称女神は『ぴぎゃっ』と珍しい叫び声を上げた。体を数秒痙攣させた後、力が抜けて前に倒れてきた。俺は地面にぶつかる前に抱え込むと気絶した自称女神をそのまま車の中へ押し込んだ。


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