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この世界の異世界住人

主人公の自宅は広い!

 家に着く頃には周囲はもう暗くなって街灯と俺の家の明りのみが周囲を照らしていた。


 俺の家は街から少し離れた山の麓にある二階建ての日本家屋だ。両親が家族全員に加えてお客が来ても寝泊まりできるようにと考えて建てたため小さな民宿くらいには部屋数がある。夜なので見えないが庭には家庭菜園があり、家で食べる野菜の半分くらいはここで収穫できる。


 家の自慢といえば家庭菜園もそうだが風呂だ。父さんが一番気合を入れて作った檜造りの風呂。温泉の源泉かけ流しで家族全員で入れるくらいには広い。家族全員で入ったのは俺が小さな子供の頃に一度くらいでそれ以降は兄さんや姉さんが恥ずかしがって一緒には入らなくなった。父さんは寂しがっていたが思春期の子供としては当然だろう。


 「大きな家ですね」


 「大きいといえば大きいが、女神様は元の世界だともっと大きい……例えば神殿とかに住んでいたんじゃないのか」


 「いえいえ、私を祭る神殿とかは確かにありましたけど住むところではありませんでしたし。世界各地を行ったり来たりしていたので特定の場所を住居にはしてませんでした」


 「女神といえばでかい神殿のでかい椅子に座って信者に向かって偉そうにしているイメージがあったんだが……違うんだな」


 「それって暁さんのお婆さんの話ですか?」


 「俺が知る女神といえば婆さんしかいないからな。確かに一つの例を全体に当てはめるのはダメだな。すまなかった、勝手なイメージで語っていた」


 「いいんです、いいんです。私の知ってる他の神達の中にそういう風にしている神がいますから。間違ってないと思いますよ」


 「そうか? ならいいんだが」


 可能なら神殿でふんぞりかえっているような神様には会いたくないと思いながら家の敷地に足を踏み入れた時、暗い道路の先から重たい足音が聞こえてきた。段々と近づいてくる足音に警戒感を強めていると街灯の明りの下に足音の主が姿を現した。


 リザードマンだ。


 リザードマンの姿を見た途端、アマノリリスが怯えた顔をして俺の背後に隠れる。

 俺達の姿を見つけた相手は特徴ある大きな目を細めて鋭い牙が覗く口をゆっくりと開けていった。


 「あら、暁さん、こんばんわ。今帰り? お仕事大変ね」

 

 「こんばんわ。トニムさん」


 リザードマン、いや、彼女の場合はリザードウーマンだ。俺はご近所に住む親しき隣人として挨拶を交わす。


 「あら、暁さん、こんばんわ。今帰り? お仕事大変ね」


 リザードウーマンのトニムさんは全身に布を服のように巻き付けていた。彼女の種族的に服は不要なのだが、裸で歩き回られると他の種族が困るため妥協案として布を体に巻き付けるようにしてもらっている。これはこの世界に住むリザードマン、ウーマン全体に対する取り決めだ。

 このような取り決めは彼女らだけではない。他のスライム族やケンタウロス族などそれぞれの種族に対して多かれ少なかれ取り決めが存在する。どの種族もこの世界で生きていくためと受け入れてくれている。


 「いえ、まだまだ下っ端ですので楽している方ですよ」


 「そんなこと言って暁さんは出世頭だって噂よ」


 「誰がそんな噂をしているんですか」


 「主婦同士の井戸端話よ。誰が言い出したかなんて忘れちゃったわ。あら、そちらの子は……まさか暁さんのイイ子?」


 俺の後ろに隠れていたアマノリリスを見つけるとトニムさんは大きな目をギョロギョロと動かして凝視してきた。


 「違います。仕事関係の人です」


 「そうなのつまらないわねって……暁さんには小野路(おのみち)食堂の子がいたわね。うふふ、私ったらうっかり」


 「そうです。俺には千華ちゃんがいますので」


 今後変な誤解が発生しないようにきっぱりと宣言しておく。


 「アツアツね。それじゃ私は失礼するわ。浮気しちゃダメよ」


 「しません」


 尻尾を機嫌よさげに振りながらトニムさんが通り過ぎていく。

 トニムさんの姿が遠くなってからようやくアマノリリスが俺の背中から離れた。まだ若干怯えているようだ。人間以外の種族なら支社でもいたはずなので今更怯えるようなことはないはずだ。


 「暁さん、今のは……」


 「ご近所のトニムさんだ。ここに住むなら何回か顔を合わせることになるだろうから覚えておいてくれ」


 「リザードマンでしたよね」


 「女性だからリザードウーマンだ。呼び間違えると尻尾で叩かれるぞ。支社にもいなかったか」


 「い、いえ、いなかったと思います」


 「そうか? 結構見かけるんだがな。ともかく元の世界じゃ人間しかいなかったかもしれないが、ここではこれが普通なんだ。慣れてくれ」


 「……はい、わかりました」


 若干抵抗があるようだが慣れてもらうしかない。

 改めて敷地内に足を踏み入れると家の玄関を開けた。


 「ただいま帰りました」


 「ベストタイミングな帰宅です、乾斗君」


 家の奥の台所から機嫌の良さそうな男性の声と共に食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。


最後に新キャラ登場です。彼のことは次の話になりますね。


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