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女神救援襲来

はじめまして、この話は異世界の話ではなく、異世界転移、転生された元の世界の話です。

皆様が楽しんで読んでいただければ幸いです。

基本的に週一で投稿できればと考えています。

 青信号の横断歩道を歩いていると中型トラックが俺を目掛けて突っ込んできた。幸いにも周囲に人はおらず巻き込まれる可能性があるのは俺だけだった。


 「サリー、状況確認」

 

 仕事先から俺専用に割り振られているパーソナルAI、サリーにインカムを通して命令すると無機質な女性の声が返ってくる。


 『異世界転生用トラップです』

 

 「だろうな」


 俺、暁乾斗(あかつきけんと)は突っ込んでくるトラックの運転席が無人であることを確認しながら、足に力を籠める。私服の下に着ている筋力強化スーツのおかげで数倍に強化された脚力でトラックを飛び越えるほどのジャンプをする。



 空中で空の色と同じ青髪をなびかせた俺の眼下を走り抜けるとトラックはどこにもぶつかることなく跡形もなく消え去った。約5メートルの跳躍を終えて着地した俺は周囲を警戒しつつ、再度サリーに呼びかける。


 「サリー、周囲の探索を開始」


 『すでに行っています。右後方3メートル、自販機の影に容疑者と思わしき人物を発見』


 「優秀だ」


 『褒められたので100サリーポイント加算です』


 「そのポイントは貯まると何かいいことあるのか? 景品がもらえるとか」


 『私の気分がよくなります』


 あくまでも無機質無感情なサリーの返答に冗談で言っているのか本気で言っているのか分からなくなりながら俺はサリーが見つけた容疑者がいる自販機へと足を向けた。


 自販機の影が俺の接近に気付いた瞬間、俺の足元が輝き始めて幾何学模様の魔法円が現れた。


 『異世界転移用トラップです』


 「見れば分かる」


 俺は慌てず懐から手に収まる程度の大きさをした楕円形の機械を取り出すと中央に一つだけ飛び出していたボタンを強く押し込んだ。

 ボタンを押した楕円形の機械から耳をつんざくような大きな音が鳴り響き、音に消し飛ばされるように俺の足元の魔法円が消えていった。


 今しがた俺の身に襲い掛かった異世界転生、転移の事象は珍しいことではない。


 20世紀初頭に初めて観測されから21世紀の現在にかけてこの世界の人間を他の世界、異世界へ連れ去る事件が発生し続けている。世界中で発生している異世界転生、転移の被害者数は年間80万人に達している。この数はもっとも多い時期の100分の1と言われていて様々な対策がされて減少した件数なのだが、まだその被害は多い。


 『異世界転移用トラップ妨害装置。正常に動作しました』


 「動作したのはいいが、この音はどうにかするように科学課に言っておいてくれ」


 異世界転移用トラップ妨害装置の性能は確かなようだが、高価であるため一般に普及しているとはいいがたい。安価で作れるように改良を進めていると聞いているが何年先になるのか。


 『Will do、サポートセンターに問い合わせておきます』


 サリーが了解しましたを意味する『Will do』という返事ともに対応してくれる。


 「主任宛てに直接メールで送ってくれ」


 『では、今後、科学課への文句はそのようにいたします』


 「文句じゃなくて真っ当な改善要求だ」

 

 サリーとの問答を続けながら俺は自販機の影にいる容疑者へのすぐ後ろへと迫る。容疑者は黒い修道服を着ていた。頭巾は被っておらず、赤色の長髪が体のラインに沿って流れていた。華奢な体つきからおそらく女であることは想像できた。赤い長髪の女は手と上半身を慌ただしく動かして混乱しているようだった。

 

 「転生用も転移用もダメだった!? どうして? 本には簡単だって書いてあったのに、書いてあった通りにしたのに」


 混乱する声が聞こえてきた。俺に理解できるということは日本語を話していることになる。

 異世界転生に異世界転移。

 これらを繰り出してきた相手なのだから異世界の住人だろう。だとすれば彼女は言葉を覚えてからこちらに来たのか、それとも魔法などのおかげだろうか。どちらにせよ、話かけるのに翻訳機を使わないで済みそうだ。


 「ちょっと話を聞かせてもらうか?」


 相手を逃がさないように肩を強めに掴む。女は体全体が少し浮き上がるほどビクッと驚いた後、ゆっくりと俺の方に顔を向けた。涙目になっていた瞳は大きく髪の色と同様に赤みを帯びていた。顔立ちは整っていて美人、年頃は俺と同年代の17、8くらい。身長は俺より低いが同年代の女性にすれば高いほうだろう。


 「あ、あの私、別に怪しい女神じゃ……」


 「サリー、女神だそうだ。出身異世界はわかるか?」


 『魔力パターン等、その他波長をサーチ中。……検索ではヒットしません』


 「未知の異世界の女神か。厄介だな」


 「その実は私、あなたに助け」


 「とりあえず現行犯逮捕だ」


 何か言いかける女神を無視して俺は腰のサイドバックから取り出した銀色の手錠を自称女神の両手にかけた。


 「え?」


 自称女神は自分の手首にかかった金属の冷たい二つの輪っかを呆然と見つめて固まった。

自称女神の服装について追記しました。

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