第七話 二次創作にも著作権はありますか?
前回のあらすじ:作中に商品名や人名といった固有名詞を登場させてもいいのかという問題。文字なら著作権にも商標権にもあたらないがタイトルやロゴを描く場合は引っかかる可能性があるから十分な注意が必要になる。
「ウーミーさーん。あたしの描いた本が無断転載されてたらどうすればいいの?」
「されてたのか?」
「されてないけど、もちろんされない方がいいんだけどされたら人気作家っぽいからちょっとだけあこがれる的な」
「面倒なやつだな、もし転載されてたら普通に権利侵害だから公開をやめろって言えばいいんじゃないか」
「でもあたしも原作の権利侵害してる訳じゃん
悪いことしてるのに権利主張してもいいの?」
クリーンハンズの原則か、確かにそういった原則もある。意外と鋭いな。
「おまえの言うとおり法律を尊重しないやつを法律は助けないという考え方は存在する。だが著作権法の目的は何だった?」
「文化の発展のため」
「そうだ。創作的表現はそれが他人の著作権を侵害しているかどうかに関係なくとりあえず保護される。
おまえの描いた本が無許可の翻案だろうが著作物であることに変わりは無いし、おまえの作品に対して著作権は問題なく発生する」
「ここで一つ問題だ、たとえば原作者がおまえの本を無断転載していたら?」
「そんなおそれおおい、光栄です!」
「そうじゃなくてだな、その場合おまえは原作者に著作権侵害だからやめてと言えるかということだ」
「えー普通に考えたら無理そうだけどさっき二次創作でも著作権あるって言ってたもんね、出来る!」
「出来ないんだなこれが。
原作者は二次的著作物に対してその著作者と同じ権利を持つ。だからどう使おうが自由だし許可も要らない。実際にするかは別として。
いまおまえが言った『普通に考えたら』って結構大事だぞ。法律って多くの人が妥当だと思う結論が出せるような構造になってるから」
「なるほど~」
「たとえばおまえが友だちの二次創作同人誌を自分の本で紹介したいとする。いわゆる三次創作だ。その場合友だちと原作者の両方に許可を取らなければならないから注意な、いくら二次創作の作者の了解を得てたって原作者の許可が無ければやっぱり権利侵害になる」
「でもどうせ許可出せないし聞く方が迷惑でしょ」
「一番良くて無回答だろうな」
「そういえば自分の本が無断転載されてたら結局何ができるの?」
「基本的には差し止めと損害賠償だが、個人が相手に金銭の支払いを求めるのは少し大変かもしれない」
「そうなの? だって相手が悪いんでしょ?」
「こっちにいくら損害が発生したのかを金額で示さないといけないからな、違法ダウンロード数が具体的に分かれば目安にはなるかもしれないが『ショックだったから慰謝料払え』なんて主張はおそらく通らない。
そもそも裁判とはいかないまでも裁判所を使って話し合いをするためには相手の氏名と住所がわからないと何もできないからな、ネット上の転載はそこを調べるハードルもあるだろう。話し合いで解決できるならそれが一番だ」
今回のポイント:無許可の二次創作であっても著作物である以上著作権の対象となり、保護される。
権利を侵害されたら権利者として差し止めなどを請求できるが、例外として相手が原作者の場合には請求できない。