98話 『ザクロの奇妙な能力』
「キキ!? 蒼い炎がまたさらに大きくなったぞ!」
ザクロは徐々に膨れ上がっていく蒼い炎に少し恐怖心を抱いていた。
そして巨大な蒼い炎の渦がなくなって敦の姿が露わになった。
しかし敦の姿は以前とほとんど変わっていなかった。
「キーキッキッキー! 驚かせやがって! 前と全く変わってねえじゃねえかよ!」
「本当にそう思うか?」
けらけらと笑っているザクロに対して敦はそう言って超速移動をした。
「なんて速度だ!? 見えない!」
今までよりも格段に速度を上げた敦にザクロは驚愕した。
「パワーアップした俺の蹴りを受けてみろ! ‶蒼炎天暴流脚〟‼‼」
敦は右足に蒼い炎をまとわせてザクロに回し蹴りをした。
ザクロは咄嗟に左腕で敦の蹴りを受け止めようとしたのだが、敦の炎の蹴りの火力が高すぎて遠くまで吹っ飛ばされてしまった。そしてザクロの腕は焼け焦げていた。
「どうだ? 俺の蹴りは……今度は俺のパンチも受けてみるか? ‶蒼炎天爆裂拳〟‼‼」
敦は再び超速移動をしてザクロの背後に回り込んでそう囁くと、拳に蒼い炎をまとわせてザクロの鳩尾を思いっきり殴った。
ボガーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼
敦のパンチはザクロの鳩尾に直撃した瞬間、大爆発を起こしてザクロはそのまま宮殿の方まで吹っ飛ばされてしまった。
宮殿の方まで吹っ飛ばされたザクロの腹部はまだ蒼い炎が燃えていた。
ザクロが島の中で倒れていると、兵士たちが槍を突き付けて、
「動くな! 観念しろ!」
とあたかも自分たちの手柄のように言い立てた。
敦はザクロの能力を知っているため、
「おい! さっさと離れろ! 馬鹿が!」
と叫んだのだが兵士たちの耳には届かなかった。
ザクロはニヤッと笑って1人の兵士の首元にかみついて血を吸い始めた。
すると血を吸うたびにザクロの傷はみるみると治っていって魔力も回復していった。
「キーキッキッキー! 残念、またふりだしからだな!」
ザクロは血を吸われて気を失った兵士を投げ飛ばしてそう言った。
「くそ! だがまあいいや。てめえを消し炭にしてしまえば再生することはできねえだろ!」
「やってみろよ! できるもんならな! ‶魔獣砲〟‼‼‼」
ザクロはそう言って敦に向けて青白い閃光を発射した。
「フッ! こんなもの簡単によけられるぜ!」
敦はそう言って目をつぶりながら首を傾けかっこつけながら躱したのだが、背後から同じ魔力の‶魔獣砲〟が飛んできた。
ズドーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
敦は背後から来た‶魔獣砲〟に直撃して少しひるんでしまった。
敦が後ろを振り向くと、そこにはもう一人のザクロがいた。
「これは一体どういうことだ!?」
敦がザクロが2人いることに驚愕しているたら、
「闇よ! その力で我を複製し給へ! ‶ドッペルゲンガー〟‼‼‼」
とザクロが詠唱すると、敦の周りにザクロが何体も生成された。
「こいつは‶ドッペルゲンガー〟と言ってな、俺の分身を何体も複製させる魔法なんだ! だがこの分身たちは実態を持っていなくてな、攻撃することができなければ、攻撃を受けることもない。」
「だがなぜ俺はさっきてめえの分身の攻撃をくらたんだ?」
「それは俺が一瞬で分身と立ち位置を入れ替わることができるからだ! だからてめえがかっこつけてよけた‶魔獣砲〟は見た目だけで中身が何もねえ分身の出した魔獣砲だったのさ!」
それを聞いた敦は
「こいつはかなり厄介な能力だな!」
と拳を握り締めて、そこから蒼い炎を燃え滾らせた。