97話 『魔獣化の脅威』
「くそ! なんてうるさい音なんだ!」
敦は物理的な攻撃などは‶鋼筋肉武装〟で攻撃を防いだり、軽減したりすることができたのだが、音波による攻撃は耳を塞いでも全く意味がなく、敦は鼓膜が破れそうになっていた。
ザクロは敦がひるんでいる隙に超速移動をして急接近し、回し蹴りで敦を水平線の彼方まで思いっきり蹴り飛ばした。
「グァァァァァァァ‼‼‼‼‼」
敦は吹っ飛ばされている時に足から炎を噴射させて勢いを押し殺したのだが、もう勢いを押し殺していたころにはザクロがすでに背後に回り込んでいて、鋭い爪によって連続で切り裂かれた。
「キーキッキッキー! どうだあ? 俺様の実力はよお」
ザクロがそう言っていた時に敦のポケットに入っていた‶危険レベルチェッカー〟が振動していた。
何だろうと思った敦はその機械を起動させると、
魔獣名: ブラッドバット
特徴 : 高音域の音を発して相手をひるませて攻撃をする。
発達した耳は超音波を感知することができて刺客では確認できない獲物の行動もわかる。
体が傷ついたり魔力が減ってしまっても人間や魔獣の血を吸うことによって傷や魔力を回復することができる。
全長 : 不明
危険度: 24
という内容が記載されていた。
「おい、てめえの危険度確か19じゃなかったか?」
敦はザクロの危険度が19から24に上がっていたことに驚いていた。
「俺は‶魔獣化〟をしたんだ。魔獣化って言うのは体内に眠っている魔獣をたたき起こして魔獣の力を解放させることだ! さらにこの‶魔獣化〟はてめえの持っている機械の危険度を変えることができるんだよ!」
ザクロがそう言うと、敦は再び‶危険レベルチェッカー〟の画面を見つめた。
「危険度24かあ……‶魔導神装〟したら倒せねえ敵ではないんだが、
こいつのあのうるさい叫び声ををどうにかしないと‶魔導神装〟をしても戦況は変わらねえぞ」
敦がぶつぶつと独り言を言っている間にもザクロはまた高いヘルツの鳴き声を出そうとしていた。
「KIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIINNNNNNNNNNNN‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
「グアッ! また来たか!?」
敦は再びザクロの鳴き声を聞いてしまって耳を塞いでひるんでしまった。
ザクロはその隙を狙って強力な‶魔獣砲〟を発射した。
ズドーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼
敦は咄嗟に火球を飛ばして魔獣砲を相殺させて攻撃が回避していたのだが、その時あることに気づいたのだ。
「さっきよりもうるさく感じなかった!?」
決してザクロがさっきよりも鳴き声を抑えていたわけではない。これは敦がその音に順応し始めたからである。
ザクロが再び高音の鳴き声を発しても敦をひるませる時間が短くなっていて敦に攻撃しようとしても今度は炎の拳で殴られて反撃された。
「キキ!? 一体どういうことだ!?」
「これはうれしい誤算だったようだな! 俺がそのうるさい音にこんなにも早く順応することができたとはな! これで思う存分あれを使うことができるぜ!」
敦はそう言って魔力を一気に上げ始めた。
「蒼炎よ、熱く燃えろ! ‶魔導神装〟‼‼‼」
敦の体は蒼い炎に包まれて激しく燃えた。
ザクロはその暑さに耐えきれなくなって少し距離をとった。
「データにないぞ!? この魔力は……アシュラBコングと戦っていたときよりも魔力が上がっているだと!?」
「当然だろ! 俺はあいつとの戦いで自分の課題や弱いところをたくさん知ってしまった。それをほったらかしにしているわけねえだろうが!」
敦はそう言ってまたさらに蒼い炎を大きくさせた。