95話 『正義の軍隊ペガサスナイツ』
ザクロが放った‶魔獣砲〟の音を聞き、多くの兵士が駆けつけてきた。
「おい! お前、大丈夫か!? すぐにこいつを手当てしろ‼‼」
全身大やけどを負った兵士に隊長と思われる人物が駆け寄ってきて他の兵士に救護室に運ぶように命令した。
「雑魚が何人かかってきても結果は同じだよ! 命を粗末にするようなことしちゃあだめだよ!」
ザクロがそう言い駆けつけてきた兵士を挑発すると、隊長と思われる兵士は、
「貴様こそ自分の力を過信していたら痛い目にあうぞ!」
と言い立ち上がり、魔力を一気に上げた。
「我らレーフェル王国、‶ペガサスナイツ〟は貴様を絶対に許さない! ‶ペガサスナイツ〟の名の下に貴様を捕らえる‼‼」
兵士たちは隊長の命令により、全員ペガサスに乗って空中に次々と飛び出していった。
兵士たちが乗っているペガサスは‶天馬〟とも呼ばれており、この世界に住む生物の中で唯一この空中宮殿・ヴァルハラのある硬度2万メートルの高さまで飛行することができる聖獣である。
そして兵士たちは編隊を組み、ザクロの周りを取り囲んだ。
それから兵士たちはそれぞれ詠唱を始めて様々な属性の攻撃魔法を唱えた。
しかしザクロはひらりとその兵士たちの攻撃をかわして兵士たちが乗っているペガサスに向けて黒いオーラをまとった弓矢を連射した。
ズバババーーーーーーン‼‼‼‼‼
黒い弓矢を撃たれたペガサスたちは暴れまわって兵士たちを振り落とした。
しかし隊長のペガサスは優秀で、ザクロの弓矢攻撃をかわし続けて、
「水圧よ! その力で相手に大きな風穴を開けさせ給へ‼‼ ‶アクアレーザー〟‼‼‼」
とかなり高圧な水鉄砲を発射した。
ザクロはその攻撃をかわせず、肩を打ち抜かれてしまった。
「ハハハハハ! どうだ! 私の魔法は! 早すぎて良ききれなかっただろう? これが部下たちの分だ!」
隊長はそう言って高らかに笑っていたのだが、ザクロは悔しがっている表情や怒っている表情すらなかった。
「気が済んだか? タイチョーさん?」
ザクロはそう言って超速移動をして隊長の背後に回り込んでペガサスに騎乗している彼を力強く蹴り飛ばした。
「グアァァァァァァァ‼‼‼‼」
蹴り飛ばされた隊長は声を張り上げながら数十メートル吹っ飛ばされた。
ザクロはそれだけじゃ終わらなく、再び超速移動をして吹っ飛ばされる隊長の移動直線上に回り込んで飛んでくる隊長を蹴り返した。
隊長はそのままザクロに蹴り飛ばされ続けてまるでピンボールのようにはじかれていた。
そしてザクロは最後は飛んできた隊長の顔面を思いっきり蹴り、そのまま上空2万メートルの高さから蹴り落した。
しかしザクロはまだ終わらず弓矢を取り出して、
「これでフィナーレだ! 闇よ! その力で愚民共に絶望の雨を降らせ給へ! ‶ブラッドレイン〟‼‼‼‼」
ザクロはそう言って黒いオーラをまとった弓矢を放って、その一本の黒い矢が数百本に分散してその数百本の黒い矢が勢いよく墜落している隊長に襲いかかった。
「ギャハハハハハー! いいぜ、いいぜ! 最高だな! おい! この魔法は‶血の雨〟とも呼ばれていて、この矢たちが雨のように降ってくるんじゃなくて、その矢に刺さった愚民どもから噴き出てくる血しぶきが雨のように降り注ぐということから由来してんだぜ!
ザクロはそう言って高らかに笑っていたのだが、突如、ザクロの視界に勢いよく飛んでくる炎の塊が入ってきた。
「何だ? あれは……」
ザクロが首をかしげていると、その炎の塊は黒い矢の雨と衝突して黒い矢たちを全て焼き払った。
そしてその炎は消えて中から人影が見えた。
「てめえは確か……」
炎から姿を現したのはなんと円城敦だった。
彼は自分の炎の能力を巧みに使って炎をジェット代わりにして飛んできたのだ。
敦は墜落していく隊長の服をつかんで救助した。
そこへ隊長が乗っていたペガサスがやってきて隊長を背中に乗せて安全な場所へ避難させた。
「俺の名は円城敦! マリアネス王国の‶王の騎士団〟だ!」
敦はそう言って魔力を一気に上げた。