94話 『天空の訪問者』
――空中宮殿・ヴァルハラ
この宮殿は上空約2万メートル地点の雲海の上に浮いている島に建てられていて、その宮殿の高さはこの人間界のどの建造物よりも高く、700メートルを超えている。
この上空に存在する宮殿に行く手段はマリアネス王国の魔道具開発ギルドの開発した‶エアロワイバーン〟という飛行機でしかたどり着くことができないはずなのだが、この宮殿に人間が生身の状態で接近していた。
その人間は深緑色の軍服を着ていて背中には黒い羽をはやしていた。
その人間がヴァルハラの門に近づいてきたので門の兵士がそれに気づいた。
「おい! 貴様! 何者だ!」
2人の兵士が槍と剣を構えて質問したら、
「俺かあ? 俺はこの宮殿の破壊をつかさどるものだあ!」
と宮殿に近づいてきている人間が言うと、黒いオーラをまとった弓矢を放った。
ズドーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼
黒い弓矢は門に直撃して大きな風穴を開けて貫通した。
その光景を見ていた2人の兵士は敵だと察して増援を呼んでペガサスと呼ばれる羽の生えた白馬に乗って、
「よくもこの宮殿に手を出してくれたな! 貴様をこの私が成敗してくれる! 火炎よ! その力で相手を焼き貫き給へ! ‶フレイムランス〟‼‼‼‼」
兵士はそう言って火属性魔法の詠唱をして炎の槍を飛ばした。
「私はこの魔法でどんな魔獣だって倒してきた。貴様なんて一瞬で消し炭になってしまうぞ!」
「どうせこの世界にいる喋ることのできねえ低能魔獣のことを言っているんだろ?」
兵士の言葉にその人間はため息を浮きながら返すと、その攻撃を敢えて受けた。
ボガーーーーーーン‼‼‼‼‼
今の攻撃は火属性の中級魔法なので奇才者ほどではないが、かなり威力のある魔法である。
しかしその人間は消し炭になるどころか火傷一つせず、涼しい顔をして煙の中から出てきた。
「な、何だと!?」
「お、かなり動揺してんなあ! いいぜ今すぐにでも俺の実力教えてやるよ!」
その黒い羽をはやした男があっけにとられている兵士にそう言うと、一気に魔力を上げ始めた。
すると、兵士のポケットの中に入っていた‶危険レベルチェッカー〟が突然振動を始めた。
「な、こんな時に魔獣!?」
兵士がそう言って‶危険レベルチェッカー〟を取り出すとその機械が示していたのはなんと目の前にいる黒い羽をはやしたその男だった。
魔獣名: 不明
特徴 : 魔人
全長 : 不明
危険度: 19
‶危険レベルチェッカー〟には魔獣名と全長だけが不明表示されていて特徴には‶魔人〟と言うきたことのない単語が載っていた。
「貴様、いったい何者だ!? なぜこの機会が貴様に反応した?」
「しゃーねえな! お前どうせすぐ死ぬんだから教えておいてやるか! その機械が反応したのは俺の体の中に魔獣が入っているからだ! そしてそいつらのことを‶魔人〟ていうんだよ!」
その男はそう言うと、魔力を上げて、手のひらに魔力を集めた。
そうすると、その男の手のひらが青白く光り始めた。
「俺の名前はザクロ! あの世に行っても忘れるんじゃねえぞ! ‶魔獣砲〟‼‼‼‼」
ザクロはそう言って手のひらから青白い閃光を発射した。
「何!? 魔獣でもない奴がなぜ‶魔獣砲〟を!? う、うわぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼‼」
ズドーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
兵士と彼の乗っていたペガサスはその青白い閃光に呑み込まれて青白い閃光は宮殿の巨大な門を突き破った。
そして兵士とペガサスは大きな穴のできた門の前で全身大やけどを負って気絶していた。
「なぜ魔獣砲を撃てるかって? そりゃあ俺は魔獣だからな!」
ザクロは気絶している兵士に向かってそう言いどや顔をした。