93話『裏社会世界会議』
――名もなき島
この島には不吉なオーラがうようよと漂っていて謎の魔法結界が張られており、島の外からこの島を視認することはできない。
「ボス! 取引相手たちが全員この島に到着しました」
仮面を被った幹部の男はボスと呼ばれている鉄仮面の男の部屋に入ってきて報告をした。
実はこの幹部の男は以前、颯太がトロンを倒した後にやってきた仮面の男と同一人物である。
「そうか、もう全員到着したのか。ならば少し早いけど始めるか。世界征服の会を!」
ボスと呼ばれている鉄仮面の男はそう言ってふっふっふと機械交じりの音声で声を出して笑っていた。
ボスが大会議室に足を運ぶと、その部屋にはたくさんの取引相手が座っていた。
大手企業から巨大ギルド、さらには裏社会で名を上げている組織まで様々な取引相手たちが出席していた。
「みんな揃ったな! では始めようか、世界征服の会を!」
鉄仮面の男が機械で自分の音声を変えてそう言った。
「それで? 今日はいったい何の議題なんだ?」
ボスと反対側の席に座っている屈強な中年男性はボスに質問してきた。
この男は犯罪者養成ギルド‶クリミナルアカデミー〟の校長である。
この‶クリミナルアカデミー〟の卒業生は歴史に名を残すほどの大事件を引き起こしたり、国際指名手配されるなどの大犯罪者になっている。
「今回の議題か……今回の議題はレーフェル王国の侵略を誰にしてもらうかだ!」
ボスの言葉に取引相手たちはざわめき始めた。
「でもなぜレーフェル王国を狙うのか?」
一人の男がそう聞くと、
「まあ、あそこの国は世界一の国土を持っているからな! あの国を占領すると我々の世界侵略計画が大きく進む!」
とボスはコーヒーを飲みながら答えた。
「だったらいつも通り魔獣軍がすればいいのではないか?」
‶クリミナルアカデミー〟の校長がそう聞いたが、
「いや、魔獣軍はレオメタルの敗北によって戦力を少し減らしてしまったから人間界侵略から少しだけ身を引くことにしたらしい」
とボスは腕を組んでそう言った。
すると‶クリミナルアカデミー〟の校長の隣に座っている男が手を挙げた。
「どうした? ‶魔人ラボ〟社長」
「この件は私に任せてもらえないでしょうか?」
「それはもしかしてあれが完成したのか!?」
「ええ! それを実験したかったのですが、なかなか実験をする機会がなくて……しかしレーフェル王国でこの実験をすれば成功しようが失敗しようが国は破壊されて一石二鳥です!」
‶魔人ラボ〟の社長の言葉を聞いてボスは機械交じりの音声で高らかに笑っていた。
「ならばこの件はお前ら‶魔人ラボ〟に一任しようではないか! 実験が成功することを願っているぞ!」
ボスはそう言うと、‶魔人ラボ〟の社長は、
「はい!」
と言ってお辞儀した。
「では実際に私の研究成果を皆さんに見てもらいましょう!」
‶魔人ラボ〟の社長はそう言ってモニターを出して‶空中宮殿・ヴァルハラ〟の映像を映し出した。
すると凄まじい速度で‶空中宮殿・ヴァルハラ〟へ接近している者がいた。