92話 『万国世界会議』
颯太はレオメタルとの戦いが終わってやっと平穏な学校生活を送ることができるようになった。
魔獣軍はあの事件以降、全くマリアネス王国はおろか、人間界に全く進行することがなくなった。
おそらくそれは‶幹部補佐〟の魔獣や‶第三幹部〟のレオメタルといった強大な戦力を失ったことが大きな要因であろう。
そんな中、この人間界の各国では魔獣界の魔獣対策として世界会議を行うことにした。
当然その会議を主催したのはマリアネス王国だ。
世界会議は4年に1回、聖霊界に一番近い場所とされている空中宮殿・ヴァルハラで行われる。
だが今回は異例で前回の世界会議から2年もたたないうちに行われることとなったのだ。
しかしマリアネス王国には世界会議を緊急で開く権限を持っている。
実はマリアネス王国は46年前、各国の絶えない戦争をたった一か国で沈めたのである。
マリアネス王国はその功績を称えられて世界の中心国になった。
そのため現在は冒険者ギルドの本部やその他の企業の本社など様々な組織の本部が建てられている。
この世界会議は出席義務は特になく、例年は100カ国近くある国々の半分の国が出席するのだが、今回は緊急で行われた会議であるため、3分の1の国々しか出席しなかった。
「やはり今回は緊急招集ということもあってかあまり人が集まらなかったな!」
マリアネス王国の国王がそう言うと、
「ほかの国々は今この世界が危険であることを理解していなのだろう! ギルダよ! そんな奴らはほっといて我々だけで始めようではないか!」
とマリアネス王国の隣国であるユダ王国の国王が言った。
「そうか、では致し方ないな! これより第12回万国世界会議を始める! 議長はこの私、マリアネス王国国王、ギルダ・マリアネスが行う!」
マリアネス国王がそう言うと、各国の王達はぱちぱちと拍手していた。
「突然だがみんな、なぜこの会議が開かれたかは分かっているのだろうか?」
「ああ、あれだろ? 例の魔獣襲来事件」
ギルダの質問にレーフェル王国の国王が即答した。
「その通りだ! 先月、私の国に大多数の魔獣が魔獣界から出現したんだ!」
ギルダの言葉に魔獣襲来事件を知らなかったマリアネス国王から離れたところの国々の国王が驚愕してざわめき始めた。
「問題点は被害の大きさではない! 魔獣界の魔獣がこの世界にやって来ているという所だ!」
ギルダはバンッと机をたたいて各国の王達に警告した。
「魔獣界の魔獣は1000年前から聖霊界と悪魔界によって封印され続けているはずなのだ。その魔獣たちが出現しているということは聖霊界か悪魔界のどちらかが何か問題が起きているのかもしれない」
ギルダの話に各国の王達はゴクリと息を飲んだ。
「そして現に奴らの進行によってマリアネス王国は壊滅的被害を受けた。奴らは想像以上に強かった。とくに‶第三幹部〟の実力は別格で、‶王の騎士団〟でも太刀打ちできなかった」
「‶王の騎士団〟でも太刀打ちできないやつがいるのか!」
‶王の騎士団〟は各国でも知られているほど有名で彼らの実力は世界中から認められている。
「雨宮くんがいなければマリアネス王国は奴らに支配されていただろう!」
「雨宮くんとはあの‶プラチナランク冒険者〟の彼かい?」
「彼は冒険者の中でもずばぬけて強かったなー!」
「彼は1年前に私の国でドラゴンが出現してそのドラゴンを一刀両断したんだよ! 我々も彼がいなったらどうなっていたことやら」
とユダ王国の国王が言った。レーフェル王国の国王もウンウンと彼に賛同していた。
そして何故か世界会議は魔獣襲来事件の題から雨宮颯太のことに話がそれていた。