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89話 『大事なもの』

 レオメタルの棍棒は鋼の山を思いっきりたたいた後、バラバラに粉砕してしまった。

 リーナはこの光景を見て絶望していた。

 あんな攻撃を受けたらだれだって平気なはずがなかったからだ。


「そ、颯太……? 生きているの?」


 リーナは颯太の安否を確認したくてレオメタルのいるん方へ歩いて行こうとしていたらソマリがリーナの足をつかんで引き止めた。


「あそこは危険よ! あなたは後ろの人たちを守るように頼まれたはずじゃないの?」


「でもこのままだと颯太があいつにやられちゃうよ!」


 颯太の魔力がかすかに感じた。しかしそれはレオメタルもわかっているため颯太がやられるのも時間の問題のようである。

 レオメタルは陥没した穴に向かって‶魔獣砲の準備をしていた。


「まだか! ‶龍斬り〟‼‼ 早くしないと特大の‶魔獣砲〟をぶちかますぞ‼‼」


 レオメタルがそう言っても颯太の返事は帰ってこなかった。


「仕方がないな! 残念だがお前との戦いは俺の勝ちだ! 結構楽しかったぜ‼」


 レオメタルがそう言った瞬間、急に地面が激しく揺れ始めた。

 すると地面がモグラが通った後のように盛り上がり始めた。

 それがレオメタルの背後に来ると地面の揺れが急に止まって、地面の中から黒いオーラをまとった男が飛び出した。


「さっきのお返しだ! ‶疾風・大鎌鼬〟‼‼‼」


 颯太は黒風の巨大斬撃をライフルのように速く飛ばした。


 ズッバーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼

 レオメタルは振り向く間もなく、背中を斬られて背中の鋼が大きくえぐれてしまった。


「ガハッ!? ど、どうしてまだ動ける?」


「ハァハァ……ハァ……言っただろう? 冒険者の辞書に限界っていう文字はねえ! てな」


 颯太は額からかなり出血していた。

 颯太はレオメタルの攻撃を受ける瞬間に‶鋼筋武装〟をして攻撃を軽減していたのだった。

 そして幸いにも颯太は棍棒のトゲとトゲの間の部分で殴られていたためその程度の傷で済んだのだ。


「ならまだまだ戦えるのか? その異性が張ったりでなければいいけどな! ‶無限・獅子刀牙羅刺(ししとうがらし)〟‼‼‼‼」


 レオメタルはまた腕を32本にして下半身もライオンの4本足にして雄叫びを上げた。

 しかしレオメタルがその姿になった瞬間体の所々にひびが入り始めた。


「!? 何であるか、これは!」


「簡単な話だろう? お前もう限界なんだよ! あれだけの大技を使えばな!」


「フム……ならばなおさら決着を早めないといけないな! これでもくらえ!」


 レオメタルはそう言って32本の大剣を思いっきり連続で振って斬撃を機関銃のように飛ばした。


「これ以上この国をめちゃくちゃにするんじゃねえ! ‶黒鴉旋風(からすせんぷう)‼‼‼‼」


 颯太は斬撃を含んだ黒い巨大旋風を巻き起こして斬撃の機関銃を相殺させた。そして超速移動でレオメタルの肩の方へ回り込み、レオメタルの頬に重い蹴りを入れた。

 レオメタルの鋼の頬はめり込み、レオメタルはそれに気づいたのか大剣の(つか)で肩にいる颯太を潰そうとしたのだが、颯太は潰される瞬間に再び超速移動でかわした。それによってレオメタルはもう止まらず、自分の肩を思いっきり叩き、鋼の肩に大きなへこみが出来上がった。


「へへへっ! バーカ‼‼‼」


「ガキみてえなことしやがって! こんなの1秒もあれば俺は再生させれるんだよ‼‼」


 颯太は自身のほっぺたをのばし、舌を出して挑発を繰り返していたのだが、レオメタルは怒りをこらえて自分の頬と肩のへこみを修復させていた。しかしそんな隙を颯太は許すはずがなかった。


「1秒もあれば十分だぜ! くらえ! ‶漆黒(ベスティア・)(ピストーラ・デル・)魔獣砲(シュヴァルツ)〟‼‼‼‼」


 レオメタルが再生に意識を集中させている隙に颯太は左手から黒い閃光を発射させた。


 ズドーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 黒い閃光はレオメタルに直撃して腕や胸部を深く溶かした。

 しかし肝心の核までは届かず、レオメタルはすぐに体を再生させた。


「おいおい! 再生させるのに時間かけすぎだぞ! うっかりとどめを刺してしまいそうだったぜ!」


「ハッタリ言ってんじゃねえ! どうせトドメなんか刺せなかったくせに! お前の動きが鈍くなっているのなんて最初っからわかっていたんだよ!」


 レオメタルはそういうと32本の大剣を同時に地面に突き刺した。


「無力なままに死ね! ‶獅子大鋼流動〟‼‼‼」


 レオメタルは突き刺した32本の大剣を一斉に液体金属へと変えて、颯太の周りにまとわりつかせた。

 颯太もかわそうとしていたのだが、足に限界が来ていたのか、足が動かず簡単につかまってしまった。

 颯太は下半身が鋼で固められてしまい移動ができなくなってしまった。


「さてと今度こそ確実に仕留めてやる! こいつを最大火力でぶち込んでやる!」


 レオメタルは32本の手を合わせてワインレッドの閃光を生成させた。


(どうする! またあの‶魔獣砲〟か! 俺の‶魔獣砲〟じゃあ完全に押し負けてしまうし、かといって‶疾風・大鎌鼬〟じゃあたとえ勝ったとしてもあいつの核までは行きつかず、あいつに再生させられておしまいだ! しかもあの液体金属のせいで当然逃げることもできやしねえし……)


 颯太はいろいろ試行錯誤したのだが、この状況を打開する策が全く思い浮かばなかった。

 頭を抱えて思い悩んでいると、大昔に師匠が言っていた言葉を思い出した。




「――颯太よ。お前は自分の持てる技だけでは勝てない敵と一人で戦わなくならなけばならない場合に陥ったときどうする?」


「そりゃーもちろん、全力で戦う! そして後の人に任せる!」


「バカかよ! 自分が死んだら元も子もねえじゃねえかよ! 俺だったら真っ先に逃げて次勝てるように修行をするぜ!」


 敦は颯太の答えに笑いながら否定した。


「じゃが敦、お前も逃げられない状態だったら結局颯太の考えよりもひどい結果になってしまうぞ! いいか、お前ら……もしそういう敵と出会ったらな……」




「おい! さっきから何ごちゃごちゃ言ってんだ?もうそろそろ俺の‶魔獣砲〟は完成するぞ!」


 レオメタルは考え事をしている颯太にいら立ち、魔力をさらに上げた。


「今の俺の黒い‶魔獣砲〟じゃあ熱量が足りない……‶疾風・大鎌鼬〟じゃあ切れ味が足りない……もし自分の持てる技だけでは勝てない敵がいたら……」


「終わりだあ‼‼ ‶紅王(ベスティア・)(ピストーラ・デル・)魔獣砲(ロート・カイザー)〟‼‼‼‼‼‼」


 レオメタルが最大限までに溜めたワインレッドの閃光を発射した時、颯太の目が開いた。


「頭を柔らかくしろ!」


 颯太はそう言って左手に黒い閃光を生成させて、右手からは黒い旋風を黒刀にまとわせた。


「‶魔獣砲〟じゃあ熱量が足りない、‶疾風・大鎌鼬〟じゃあ切れ味が足りない、だったら足りない者同士で合わせればいいじゃないか‼‼‼」


 颯太はそう言うと、左手の黒い閃光を右手で握っている黒刀に移して黒刀が濃色(こきいろ)(濃い紫色)に輝き始めた。

 そして黒刀にまとわれていた黒い旋風も濃色の旋風へと変色して巨大化した。


「覚悟しな、レオメタル! こいつは初めて使う技だからどれくらい威力があるのか想像もつかないんだ!」


「メッタッタッター! 俺の‶魔獣砲〟が初めて使う技なんかに負けるわけないだろう!」


 レオメタルはそういって笑っていたのだが、颯太の黒刀から漂う濃色のオーラが強くなり始めて焦り始めた。


「いくぜ! 俺の最新で最強の技! ‶紫電一閃(しでんいっせん)魔旋風列斬(ませんぷうれつざん)〟‼‼‼‼‼‼‼」


 颯太は濃色のオーラと旋風をまとった黒刀を横に振って濃色の光の斬撃を飛ばした。

 濃色の光の斬撃は凄まじい速度でワインレッドの閃光と衝突し、そのときに鼓膜が破れるほどの大きな爆発音と失明してしまうほどの激しい光に包まれた。

 濃色の光の斬撃は旋風の力で回転していてチェーンソーのようにワインレッドの閃光を切り裂いていた。


「ぐぬぬぬ! やるじゃねえか! だがまだできたばかりの技! 所詮はこの程度のようだな! はあっ‼‼‼‼」


 レオメタルはそう言って閃光の出力を高めた。

 そうしてレオメタルの閃光が颯太の光の斬撃を押し込んだ。


「俺はこの国にやってきて……学校に行くことで仲間の大切さを学んだんだ! 今まで冒険者だけしかしてこなかった頃は自分より早く死んでいく仲間を正直邪魔だと思っていた。だが今は仲間に助けられることや仲間に気づかされることがあるってことを知った。そんな仲間を……そんな仲間をこんなところで失ってたまるかよーーーー‼‼‼‼‼」


 颯太はそう叫んで左手から濃色の閃光を、右手からは濃色の旋風を発射して押し負けていた光の斬撃を押し返した。


「俺は……お前らみんなが好きなんだあああああ‼‼‼‼‼」


 颯太の声は国中に響いた。

 リーナ、ロゼ、敦、ソマリ、静香、トム、ポトフ、エリーサ、ミーア、キャシー、フリック、レージスと国民たちはみんなはっきりとその声が聞こえた。


「ぐおお!? 威力がどんどん増していく!? まさか、こんなことがああ‼‼‼‼」


 濃色の光の斬撃は濃色の閃光と濃色の旋風を吸収牛どんどん巨大化していった。

 レオメタルはその斬撃には颯太の思いだけじゃなく、国民全体の思いが込められていると感じた。


 パリーーーン‼‼‼


 レオメタルのワインレッドの閃光は颯太の斬撃に完全に押し負けてガラスのように割れた。

 そして光の斬撃はすさまじい速度でレオメタルに直進していった。


(そうか……これが人を信じるということであるのか!)


 ズッバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 レオメタルの体は核ごと横に真っ二つにぶった切られた。

 そしてレオメタルの上半身はゆっくりと地面に落下していった。

 そのときのレオメタルの表情は少し微笑んでいるように見えた。

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