７９話 『鋼鉄VS重力』
「桐原静香……聞いたことがあるぞ！ おぬしは‶ゴールドランク冒険者〟の‶重量級の桐原〟であるな？」
「その名前で呼ばないで～！ 私の乙女心が傷ついちゃう～‼」
静香はレオメタルに周囲の人たちに聞こえるくらいの声で自分の二つ名を呼ばれたから、恥ずかしくて半泣きになっていた。
「メッタッタッター‼‼ すまなかったのである！ まさか自分の二つ名を嫌うものがいたのであるか！ だが安心しろ！ 今ここで殺せば誰もおぬしのことそう呼ばないのである！」
「殺されてたまるか～！ 私まだまだやりたいことたくさんあるもん！」
静香はレオメタルの脅迫を得意の天然発言で対抗した。
「メータッタッター！ おもしれー女であるな！ 殺しがいがあるのである！」
レオメタルはそう言うと、口から青白い閃光を発射した。
青白い閃光は凄まじい速度で静香に接近してきた。
しかし静香は剣先を青白い閃光に突き刺して魔力を込めた。
「私はあらゆる攻撃の重力を変えられる！ ‶重力方向転換・上〟‼‼」
静香は刀をそのまま思いっきり振り上げると、青白い閃光にかかっている重力が下から上に変更され、青白い閃光は空の彼方へと消えていった。
「あの子……なかなかやるわね！」
ソマリがそう感心しているのもつかの間、レオメタルは次の攻撃の準備をしていた。
「メッタッタッター！ いいぜいいぜ！ もっと俺を楽しませるのである！ ‶獅子・山起こし〟!!!」
レオメタルは今度は両手の人差し指を地面に突き刺し、静香の足元から鋼の柱を生成させた。静香はその鋼の柱に突き上げられ血反吐を吐いた。
「グハッ！？」
静香は腹部を勢いよく突かれ、空中で悶絶していた。
しかしレオメタルはその隙を逃さず、
「行くのである！ ‶獅子・砲丸投げ〟!!!」
と鋼の砲丸を銃弾のごとく静香の方へぶん投げた。
静香は身の危険を察知し、‶重力操作〟で空中浮遊を
して、砲丸の直撃だけは何とか免れた。
レオメタルがもう一個の砲丸を生成させて再び静香にぶん投げようとしたら、
「‶氷の龍舞〟!!!!!」
とソマリが扇子を仰ぎ、と氷の龍が躍り出た。氷の龍はレオメタルの砲丸を持っている右腕に巻きつき、瞬間で凍らせた。
さらに身動きがとれないように足元もしっかりと氷漬けにした。
「今よ！ 勝負をつけなさい！」
ソマリがレオメタルの方に指して静香に言った。
「うん！ これで終わらせる！ ‶超喰羅靡斬〟!!!!」
静香は最初に使った‶喰羅靡斬〟よりも倍以上の大きさの斬撃を飛ばした。
「ぐっ！？ なんて重い斬撃であるか！」
レオメタルは両足と右腕を凍らせているため、左手だけで受け止めなければならなかった。
「こんなもの！ ウォォォォ!!!!!」
ズッドーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!
レオメタルは左手で斬撃を掴みながら、口から‶魔獣砲〟を発射して相殺させた。
しかし、レオメタルの左腕はその爆発に巻き込まれて粉砕してしまった。
「わ、私の渾身の一撃を受けて腕1本失うだけなんて……」
「王格の魔獣の実力は伊達じゃないというわけね！」
「メッタッタッター！ なかなかやるではないか！ おかげで2パーセントほどダメージを負ってしまったのである！」
「2パーセント？ ふん！ 強がっているんじゃないわよ！」
「強がっているか！ メッタッター！ 面白いことを言うのであるな！ これを見ても同じことが言えるのであるか？」
レオメタルはソマリにそう言うと、一瞬で左腕を再生させた。
だいたい超速再生をする生物は超速再生を行うと魔力がごっそりと消耗するはずなのだが、レオメタルは1ミリ足りとも魔力を消費していなかった。
「う、嘘でしょ！？」
「ば、バケモノめ！」
静香とソマリの目にはレオメタルが打つ手のない怪物のように映った。
