77話 『レオメタル降臨』
「リーナ! 早く乗れ!」
タイショーウルフを空高く吹っ飛ばした颯太は唖然としているリーナにヘルメットを投げ渡してバイクの後部座席をバンバン叩いて急かした。
リーナがバイクの後部座席に乗ると颯太はアクセルを思いっきり回してバイクはマフラーから耳を塞ぎたくなるくらいの雑音を鳴らしながら発進した。
しばらく経つと、空高く吹っ飛ばされたタイショーウルフがやっと落ちてきた。
「ねぇ、あの魔獣、まだ生きているでしょ? トドメを刺さなくて良かったの?」
遠くからタイショーウルフが落下していくのを見たリーナは不安そうに颯太に話しかけた。
「まあ本来なら確実に仕留めないといけないんだがな! だが俺らがそんなことして道草を食っているあいだにマリアネス王国は大変なことになってしまっているかもしれないだろ! どちらを優先すべきか考えるまでもないだろ!」
颯太は最後にタイショーウルフの方を見て、その後アクセルをさらに回して加速させる。
――マリアネス王国・中央広場
ここに国中の人々が避難して来ていた。
大体の魔獣は魔力によって出現場所を変えることができるので、‶中央広場〟は唯一の安全地帯である。
王国軍は魔獣界の魔獣の出現場所を操作し、出待ちして出現した所を総攻撃して討伐するという作戦だった。
しかし‶幹部補佐〟の魔獣はその実力が違い過ぎて、王国軍の包囲網を簡単に突き破ってきたり、運のいい魔獣は包囲網をすり抜けたりとその作戦は全く上手くいっていなかった。
そのため安全地帯である中央広場に進行してくることも度々あった。
中央広場に集まっている人達はそこすら安全ではないと思い、不安に駆られていた。
「もうこの国は終わりだー!」
中にはあまりの恐怖に泣き叫ぶ国民もいた。
しかしこれまでの恐怖は本の前座に過ぎなくて、本当の恐怖はむしろここからだったのだ。
中央広場の中央の空間に謎の亀裂が生じ始めた。
空間の亀裂はみるみるうちに広がっていき、そこから高濃度の魔力が流れ出していた。
そして徐々に空間は割れ始めて高い魔力が放出され、広場に集まる半数の国民がその巨大な魔力のプレッシャーによって気を失っていく。
中央広場は大混乱に陥り、王国軍の兵士も突然の事態に対応しきれない状態になっていた。
空間の亀裂の中から10メートルを超える二足歩行する銀色のライオンがその隙間から恐れおののく国民共を睨みつける。
パリィィィーーーーーーン‼‼‼‼‼‼
ガラスが割れるように空間の亀裂が広がり、そのライオンは亀裂の中から勢いよく飛び出す。そして着地と同時に中央広場の中心に設置されている巨大噴水を踏み潰して雄叫びを上げる。
王国軍はすぐさま巨大噴水を包囲しようとしたのだが、銀のライオンの圧倒される雄叫びによって吹き飛ばされていく。
「き、きさま! どうやってこの広場に現れた!?」
王国軍の軍隊長はライオンの雄叫びにも屈しず、槍を構えて声を震わせながら質問した。
「んー、どっやって……この広場の空間を破壊して現れただけなんだが……確かに空間に何か細工されていたけどぶっ壊しちゃった! てへぺろ!」
ライオンの魔獣はあまりにも軽いノリで衝撃なことを言ったため、人々の恐怖がさらに高める。
「この化け物め! 人々を恐れさせるようなことを平気で言いやがって! この軍隊長である私が成敗してくれる!」
軍隊長は自分の槍に魔力を注ぎ込んで突進していく。
しかしライオンの魔獣は命を懸けた軍隊長の一撃をデコピンで返り討ちにする。そのデコピンは凄まじい衝撃波を放っており、軍隊長の槍は木端微塵に打ち砕かれ、そのまま吹き飛ばされる。
「グホォォ‼‼‼‼」
学生時代、マリアネス第一魔法学院校内ランキングトップ10に入るほどの実力者であった軍隊長は、指ではじかれるだけで簡単にノックアウトされた。
「俺の名はレオメタル! この事件の首謀者である!」
レオメタルはそう言うと挨拶代わりに‶魔獣砲〟を祝砲の如く発射する。




