74話 『敦と颯太の炎の約束』
12本の腕から放たれた‶魔獣砲〟は周辺の建物を次々と破壊しいった。
「やめろ‼‼ これ以上この町を破壊するな‼‼」
敦がそう叫んでもアシュラBコングの耳には届かず、暴走し続けた。
「ヤーーーメーーーローーー‼‼‼‼」
敦ははらわたが煮えくり返って蒼い炎を爆発させてアシュラBコングに突進していった。
しかしアシュラBコングは敦がそう来るとわかっていたのか、‶魔獣砲〟を乱射するのをやめて、
「ウホホホホホホー‼‼‼ 残念だったな‼‼ ‶魔拳修羅〟‼‼‼」
と右の3本の腕から黒色のオーラを漂わせて向かってくる敦を思いっきり殴り飛ばした。
「グアァァァァァ‼‼‼」
敦は瞬間的に‶鋼筋武装〟をして。攻撃を軽減しようとしていたのだが、アシュラBコングの攻撃はあまりにも凄まじく、立ち並ぶ建物を突き抜けながら勢いよくぶっ飛ばされた。
それを逃がすまいとアシュラBコングも超速移動して追いかけた。
数キロメートル離れたところまで飛ばされた敦は速度が減速したところで上手に受け身をとって、急接近してくるアシュラBコングに向かって行った。
「何をする気だ? 小僧」
「この速度同士で激突すると威力も想像つかねえ威力になる。そしてそれは流石のお前にもかわせないよな?」
敦はそう言って自分の拳を握り締めて蒼い炎を出して、
「‶蒼炎天爆裂拳〟‼‼‼」
とアシュラBコングの鳩尾に重い一撃を入れた。
「ゴホォォ!?」
アシュラBコングは急所を思いっきり殴られて悶絶しながら反対方向に飛ばされた。
「ハァ……ハァ……へへっ! ざまあみろ‼‼」
「ゲホ……ゲホ……てめえ、骨も残らないと思え!」
嘔吐しながら怒っていたアシュラBコングは12本すべての腕を黒色に染めて敦に殴り掛かった。
「死ね‼ ‶魔拳滅多打ち修羅殴り〟‼‼‼‼」
アシュラBコングはそう言うと目にもとまらぬ速度で連打をしてきた。
(ははっ! こんなにプライドをズタボロにされたのはいつぶりのことだろうか……)
――俺はガキの頃から誰にも負けたことはなかった。
‶大和村〟の中では師匠以外の大人には負けたこともないくらいの実力者だった。
だがしかしあいつが現れて俺は現実を見ることになった。
――10年前、雨宮颯太は魔獣の森の中で迷子になっていたところを師匠に拾われた。
そしてあいつはその前の記憶がなく師匠の家に引き取られることになり、師匠の弟子になったのだ。
そして俺は自分が兄弟子だということを教え込むために、
「おい、おまえ‼ 俺と勝負しろ‼‼」
と決闘を申し込み、決闘をした。
そして生まれてからずっと修行してきた俺が記憶喪失で魔法もろくに使えない奴に完膚なきまでに敗北をしてしまった。
初めてだった。敗北したのは……しかも同年代に。
そして俺はより一層修行に励んだ。あいつに勝つために。
だがあいつも師匠の下で修業をしてどんどん強くなって差は開く一方で俺は結局あいつに勝つことができなかった。
そして数年たった日、あいつは急に
「俺は最強の冒険者になる‼‼」
と言い出して村を出ていったのだ。
もうその時点で俺とあいつの間には大きな実力差があった。
屈辱的だった。よそからやってきたやつに負けて、実力差をつけられて、別の世界へ行ってしまうことが。
そして旅立つ雨宮颯太に、
「俺はいつか必ずお前に勝ってやる‼‼ 俺はお前に勝つまで誰にも負けねえ‼‼ だからお前……絶対に死ぬんじゃねえぞ‼‼」
と約束をした。
そしてあれから1週間もかからずにあいつは冒険者としてどんどん功績を上げていった。
それを知った俺はここで修業してもいつまでたってもあいつに追いつかないと思い、13歳の頃に魔法学院に入学するために上京した。
――現在
(だが現に俺はコカリスクに敗北してしまった……あいつとの約束は果たせなかった。そして今回も俺はあいつに負けるのか……)
敦は颯太との約束を果たせなかったことを悔やみ、その場に立ち尽くしていると、アシュラBコングの攻撃をくらいそうになっていた。
しかし敦は以前コカリスクに殺されそうになった時に颯太が言ったことを思い出した。
「いいのか? お前、このまま死んでしまうと永遠の敗北者になるぞ! 今はまだ助けられてもいい、いつか俺を倒せればお前の勝ちになるじゃねえか! だから、生きろよ‼‼‼」
敦はその言葉を思い出し、何かを決心したような本気の目で相手を見つめる。
「俺はいつか雨宮颯太を倒す男だ‼‼ だから俺はこんなところで死ぬわけにはいかねえんだよ‼‼‼‼ ‶蒼炎天爆裂乱舞〟‼‼‼‼」
敦は両手に蒼い炎をまとってアシュラBコングの連打に立ち向かった。
そして敦はアシュラBコングの12本の連打に対して自分も連打で対抗した。
「まさか俺の12本の腕から繰り出される連打に張り合うだと!? そんなことありえるかーーーー‼‼‼‼」
アシュラBコングは予想外のことに焦りを感じて連打の速度がまた上がった。
「くっ! 連打数が一気に上がった!? だが負けるわけにはいかねえんだーーーーー‼‼‼」
敦もそう言ってパンチの連打数を上げた。颯太に勝つという明確な目標が彼の力をどんどん引き上げた。
「ウオォォォォォォォ‼‼‼」
「お、押され……このままだと……ブォヘッ!?」
アシュラBコングは敦の猛攻を抑えきれずに敦のパンチが1発命中してしまった。
そこからは一方的に敦にボコボコに殴られまくった。
「グヘッ! グホッ! ガハッ! も、もうやめ……」
「これで最後だーーーー!!!!!」
ズドーーーーーーーーン!!!!!
敦の渾身の一撃がアシュラBコングの腹部に直撃し、燃え盛る蒼炎の拳が鋼のような腹筋を焼き付ける。
そしてその巨体に人が通れるほどの大きな風穴が出来た。