72話 『ジェンダーウロスの妄想』
ジェンダーウロスは再びロゼの顔を見て体の傷を癒そうとしたのだが、フリックがさらに激し光を放って目がくらんでロゼの顔を見ることができなかった。
「チキショー! 邪魔をするなーーーーー‼‼」
「何度だって邪魔をしてやるさ!
‶輝く乱れ星〟‼‼‼」
フリックは上空に飛び上がって、上空に光弾を無数に生成してジェンダーウロスに向けて光弾の雨を降らせた。
光弾1つ1つには貫通能力が高く、ジェンダーウロスの体を次々と貫いていった。
「グアァァァァァ‼‼‼ か、体がァァァ‼‼‼‼」
ジェンダーウロスは体を打ち抜かれすぎてかなり体力を消耗していた。
「これで終わりだな、変態魔獣‼‼」
「フフフフフ! 何勝手に勝負をつけようとしているんだよ! 俺がいつ降参って言ったぁ?」
ジェンダーウロスがそうフリックを挑発すると、突然目をつぶった。
「‶LOVE妄想〟‼‼‼」
ジェンダーウロスは頭の中でロゼを妄想してそれによって興奮し、魔力と体の傷が完全回復した。
「ハーハッハッハー! どうだ? 俺の妄想力は! 頭の中で完璧にロゼちゃんを形成させたぞ! ロゼちゃんは俺の頭の中で完全支配されているのだ!」
「クソきもいんですけど!」
それを聞いたロゼはドン引きし 、ジェンダーウロスをごみを見るような目で見ていた。
確かに人間はだれかに自分のことで妄想されていたら、屈辱的で喜ぶ者はいないであろう。
「やはり貴様は脳みそまで完全に破壊しなきゃいけないようだな!」
「やれるもんならやってみろ! 俺はたとえ脳細胞だけになってもロゼちゃんを妄想して生き延びてやる!」
もうすでにロゼはこの魔獣のことを魔獣とも見ていなかった。強いて言うのであれば、魔獣以下の未知なる存在としか見ていないようだ。
「もう俺の恋は止まらねえぇぇぇ‼‼ 俺の恋を邪魔するものを全て呑み込め‼‼ ‶DEATHストーム〟‼‼‼」
ジェンダーウロスは気がくるい、自分の剣に最大限の魔力を伝えてその剣を思いっきり振った。
するとジェンダーウロスの周りから黒色の竜巻が起きて、建物や木々を吸い込んでいった。その風力は颯太の起こす旋風に並ぶほどのものだった。
フリックは黄金の剣を地面に突き刺して、ロゼとリーナ様護衛隊の3人を抱えて吸い込まれないよにしていた。
(クソッ! あの竜巻、物体を呑み込むたびにどんどん巨大化して吸引力も上がってやがる……早いとこ消さないと学校ごと全部呑み込まれてしまう!)
しばらく考え事をしていたフリックは何か決心したよな顔をし、安全な場所でロゼたちを下ろして、
「君たちは何かにしがみついて吹き飛ばされないようにしていてくれ!」
と言って竜巻に突っ込んでいった。
それを聞いたロゼたちは巨木にしがみついて黒色の竜巻に吸い込まれないようにした。
「ハァーン! フリック様……かっこいい」
キャシーは竜巻に突っ込むフリック見とれて手を放しそうになっていた。
「正気に戻れ! キャシー‼‼」
エリーサは慌ててキャシーの手を握って離れないようにした。
「ハーハッハッハー‼‼ 来たな、フリック‼‼ てめえもあの建物のように木端微塵にしてやるぜ!」
「これ以上町を破壊されたら困る、‶王の騎士団〟として、いや、教師としてあいつらは俺が守る‼‼‼」
フリックはそう言うと、地面に刺していた黄金の剣を抜き最大限に輝かせた。
「ほーざーけぇーーーー‼‼
‶DEATHストーム・MAX〟‼‼‼」
ジェンダーウロスが作った黒い竜巻は大きさと吸引力が倍になってフリックに襲い掛かった。
「破片すら残してたまるか!
‶裁きの聖十字剣〟‼‼‼」
フリックは光輝く黄金の剣を振りかざし、十字型の光の巨大斬撃を飛ばした。その十字型の斬撃は激しい光を放ちながら、暗黒の竜巻に直進して行った。そして……
ズッバァーーーーーーン‼‼‼‼
光の巨大斬撃は黒色の竜巻を中のジェンダーウロスごと切り裂いた。
そしてジェンダーウロスはきれいに4等分にされていた。
「まだだ! 俺は……俺はロゼちゃんがいる限り何度でもよみがえる‼‼」
ジェンダーウロスはそう言うと、切り裂かれた部分から再生を始めていた。
それを見ていたフリックは次の手を既に準備しており、手のひらをジェンダーウロスに向けて金色の閃光を生成した。
「言ったはずだろう? 俺はお前を欠片すら残さないとな! ‶壊滅及ぼす光砲〟‼‼‼‼」
「そんな……この俺が……まさか男なんかにやられるなんて‼‼ グアァァァァァァァ‼‼‼‼‼‼」
ズドォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼
フリックは金色の巨大レーザーを発射させてジェンダーウロスを消滅させた。