70話 『激情するジェンダーウロス』
そして吹雪がやむと、ソマリの服装はミニスカートの巫女さんみたいな着物に変わっていた。
長い振袖に両手に扇子を持っていて、その美しさは魔獣ですら見とれて凍り付きそうになるくらいであった。
「ウホホ……う、美しい……。て! ちがーう‼‼‼ 姿が変わったところでこの俺を倒せると思っているのか?」
Aゴリは一瞬鼻の下を伸ばしていたのだが、すぐに我に返って戦闘態勢に入った。
「もちろん! あなたに負ける要素が見当たらないくらいですよ!」
「じゃあすぐにでも俺に負ける要素を見つけてやるよ! ‶バーニングナックル〟‼‼」
Aゴリはそう言うと、右腕に炎をまとって、その状態でソマリに襲い掛かった。
しかしソマリは逃げるそぶりも見せずに、回し蹴りをしてその攻撃を防いだ。
するとソマリの左足から吹雪が吹き始めてAゴリの炎の拳はソマリの吹雪に押し負けて、かき消され、ソマリが起こした吹雪はAゴリの右腕を巻き込んで周囲を凍らせた。
「ぬおぉぉぉおお‼‼ 何じゃこりゃぁぁ‼‼」
Aゴリは凍らされた右腕を見て驚き叫んでいた。
そう、Aゴリの右腕はただ動きを封じる程度の凍らせ方ではなく、芯の部分までしっかりと凍らされてしまったのである。
そして次第にAゴリの右腕はひび割れを始めてその右腕は粉砕した。
ソマリはその隙を逃さず、
「‶ブリザードスラッシュ〟」
と言って扇子でAゴリに向けて仰ぎ始めた。
そしたら仰いだ場所から吹雪の斬撃が飛んでその斬撃がAゴリに直撃するとAゴリの全身が凍り付き始めた。
「ウォォォオオ‼‼‼‼ まだまだこんなところで終わってたまるかーーーー‼‼‼ バーーーーーーーーニング‼‼‼」
Aゴリは自分の体を熱く燃え滾らせてソマリの吹雪を相殺した。
しかしAゴリは凍り付いた体を溶かすのに集中していたためソマリの行動に気づけないでいた。
ソマリはその隙を逃さず、自身の魔力を一気に上げて扇子を閉じ、その扇子を凍らせて一本の槍にした。
「これで終わりよ‼‼ ‶フリーズランス〟‼‼‼」
ソマリはそう言って氷の槍をAゴリに投げつけた。
その槍はAゴリの腹部に突き刺さって、突き刺さった部分から凍り始めた。
「何だ? これは! 俺の炎でも溶けないぞ‼‼」
Aゴリは頑張ってその氷を解かそうとしているのだが、その氷の槍はAゴリの体内から凍らせていて、最初は腹部を凍らせていたのだがどんどん広がっていき、次第にAゴリの体は動かなくなっていった。
「嘘だろ、おい‼‼ まさかこんなので終わってしまうのか? 畜生畜生畜生畜生畜生、チキショーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼」
そして最終的にAゴリはそう叫びながら体全身凍り付いた。
そしてAゴリの魔力も感じることもなくAゴリの体は粉々に粉砕された。
「ふー、まさかこの私が苦戦するなんて、ほかにもまだまだ危険な魔力を感じるんだけど、とりあえずいったん体を休めよう!」
ソマリはそう言うと、氷の壁を周囲に貼ってその中でスヤスヤと眠り始めた。
――マリアネス第一魔法学院中庭
「ハァ……ハァ……なんて強さなの?」
ロゼはボロボロの姿で立っていた。その正面には無傷のジェンダーウロスが立っていた。
「ロゼ……すまない……私たちがこんなにも無力だったなんて」
エリーサはそう言ってロゼに謝罪していた。エリーサの横にはキャシーやミーアもいた。
数時間前、ロゼは‶魔導神装〟をして、その後に‶マーメイドソング・革命〟を使用してエリーサたちの魔力を上げたのだが、元々から実力差があったため魔力が上がったところでその実力差は全く縮まらず、ジェンダーウロスの‶魔獣砲〟を受けて一撃で戦闘不能になってしまった。
その後もロゼが必死に抵抗するのだが、やはり危険度24の魔獣はけた違いに強く、歯が立たなかった。
「ウフフフフー! ロゼちゃんはよく頑張った方だよー‼‼ 先にあの三人を味見したいところだけど……でもロゼちゃんを早く味わいたーい‼‼」
ジェンダーウロスはそう言って興奮しながらロゼに近づいてきた。
「や、やめろ‼‼ 来るなーーー‼‼‼」
ロゼは叫びながら‶アクアランチャー〟をジェンダーウロスに連続でくらわせているのだが、ジェンダーウロスには全く効いておらずどんどん近づいてきた。
「僕の愛人になるって言ったら今ここで殺さずに済むんだよ! さあ、ロゼちゃん‼ 誓いのキッスを!」
ジェンダーウロスはそう言ってロゼを抱きかかえ、唇を尖らせてロゼと接吻をしようとしていた。
「や……め……て……」
ロゼが小さく呟いて涙が地面に落ちた瞬間、
ズキューーーーーーン‼‼‼‼‼‼
と光の弾丸がジェンダーウロスの左肩を打ち抜いていた。
「ウォォォ‼‼‼ いてぇぇぇ‼‼‼」
ジェンダーウロスはそう叫んで自分の左肩を抑えながらもがいていた。それによってロゼは振り落とされてロゼが落下しようとしたところを1人の男が光の速度で救出した。
「てめえ! 誰だ!?」
ジェンダーウロスは左肩を抑えながら怒り狂った表情で言った。
「俺はこの子たちの……担任だ‼‼‼」
フリックがロゼを下ろしてポケットに手を突っ込んでそう言った。いつもは狐目で目が開いているのかどうか分からないのだが、今はハッキリと目を開いていて、その表情は震え上がるほどの恐ろしさを放っていた。
ロゼもこんな表情のフリックは見たことがなかったのでかなりおびえている。
「担任が俺に一体何の用だ?」
「てめえ、よくもうちの生徒をこんな目に合わせたなあ? 俺はお前だけは絶対に許さねえ‼‼」
フリックはそう言うと凄まじい魔力を放出した。その魔力で大地が振動し始めた。
「せ、先生の魔力で地面が揺れている!?」
キャシーがフリックの異常な魔力の高さに驚いていた。