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07話 『決闘の決着と魔獣界』

 会場全体に砂ぼこりが舞いがって、2人の安否が確認できない状態になっていた。


「なんてすごい技なんだろ~、これなら確実にリーナ様が勝ったね~」


 ミーアが嬉しそうに言うと、キャシーもうんうんと頷いていた。


「じゃが本当にあやつはやられたのかのう?」


 そう呟くレージス学長にエリーサは反論した。


「何を言っているんですかレージス学長! あれほどの攻撃を受けて、立ってられると思いますか?」


「よーく感じてみんかい! まだあやつの魔力は感じられるじゃろうが!」


 レージス学長に言われて、エリーサも颯太の魔力を感じ取ってみると、実際彼の魔力は全く下がっていなかった。


 砂ぼこりが消えると、さっきまで颯太が立っていた場所に巨大なクレーターができていて、その真ん中には、颯太が仰向けに倒れていた。クレーターの外でリーナが立っている。

 魔力を感知することができない一般人はリーナが勝ったと思い込んで大喜びする者もいた。

 リーナは倒れている颯太を見て、


(今のうちにあいつの首をこのレイピアで串刺しにすれば……)


 そう思っていたら、颯太が飛び起きた。


「フー……今のはさすがに効いたぜ」


「あなた……かなりタフだね。私の渾身の一撃を受けても尚、平然としていられるなんて……」


 リーナは全力を尽くしたため、かなり疲労している。

 その姿を見た颯太は、


「なんだぁ? 今のがお前の全力か? だったら今度はこっちから行くぜ!」


と言ってリーナの方へ歩いた。リーナは颯太の化け物じみたタフさに震えおののいて、しりもちをついた。


「安心しな! お前が降参って言えば、俺は何もしねーぞ!」


 リーナは完全に戦意喪失している。彼女にとって今の颯太は過去に出会った凶悪な魔獣のように見えていた。しかし颯太はどんどんとリーナのもとへ歩み寄る。


「早く言わないと……」


「くっ、来るなーー‼ 〝シュラーフェン〟‼‼‼」


 リーナはそう言うと指から謎の発光体を飛ばした。そしてその発光体は颯太の頭を通過した。


(この魔法は相手を眠らせることができるけど、この魔法で眠る奴なんて、1パーセントもいないんだよな……)


 リーナはダメもとでこの魔法を使用したのである。しかし……


 ――バタッ‼‼


 颯太はその場で爆睡してしまった。

 実はこの男……催眠魔法にめっぽう弱いのである。


「そっ、そこまで‼ ただ今の勝負……勝者、リーナ・マリアネス第三王女‼‼‼」


 観客から歓声が沸き上がった。リーナはほっとして再びしりもちをついた。エリーサは狂喜していた。


「ガッハッハッー! よか試合かと思ったばってん、こりゃあ傑作じゃ! やはりわしらの想像を超える結末じゃったのー」


 レージス学長が大爆笑をしていたが、すぐにやめてルージュに言った。


「おい、何か嫌な魔力を感じるばい」


「そのようですね」


 大決闘場のステージの奥で空間上に亀裂が走った。そこからパキパキと異空間が見え始めた。その中から巨大な手が飛び出て、異空間の亀裂をこじ開けた。


 ――バキバキバキバキ‼‼‼


 空間上に大きな穴ができて巨大な魔獣が露わになった。

 全長6メートルを超える巨大な魔獣は、牛の顔と下半身をしていて、上半身は屈強な人間の体をしている。

 巨大な魔獣はトゲのついた棍棒を手に持っており、両刃の斧を背負っている。

 そして巨大な魔獣は辺りを見渡すと、突然雄叫びを上げた。


 ――MOOOOOOOOOOOOOOOOOOOU‼‼‼‼‼‼‼


 リーナは吹き飛ばされないように、下半身に力を入れて踏ん張りながら、耳を塞いでいた。

 巨大な魔獣はリーナの存在に気づいたのか、雄叫びをやめた。

 観客たちはその隙に逃げ始めた。全員が一斉に動き出したのでパニック状態になっている。

 レージス学長はそのことにすぐに対応して、


「教職員のみんなはあやつらを誘導し、避難させるんじゃ‼‼ 急がなんたい‼‼」


 教職員たちはレージス学長の指示に従い、観客たちを避難させ始めた。

 レージス学長は巨大な魔獣を見て、心当たりがあるような顔をした。


(こやつ……まさか……)


 巨大な魔獣はリーナを見て問いかけた。


「おい、この国で一番強い奴は誰だ?」


「し、知らないわよ。て、ていうかなんで人間の言葉を話せるの?」


 リーナは後ずさりをしながら、震えた声で問い返した。


「モーホッホッホッー! 俺は魔獣だけしかいない世界、〝魔獣界〟からこの国を滅ぼすためにやってきた、〝ミノタウロス〟っていうんだ! 夜露死苦!」


 ミノタウロスはリーナの質問には答えなかった。


「ま、魔獣界……だと!?」


 リーナはミノタウロスの言葉に驚愕していた。

 魔獣界とは人間が住む人間界とは別に魔獣たちが住む世界で、人間によって長い間封印させられていたが、近年人間界に魔獣界の魔獣が出現するようになった。

 そしてミノタウロスはリーナの隣で爆睡している颯太を見て、激怒した。


「俺の前でスヤスヤとおねんねとはいい度胸じゃねーか‼‼‼」


 そういうとミノタウロスは棍棒を振り上げて、


 ――バッガァ――――ン‼‼‼‼‼‼‼


と地面をえぐりながら、まるでゴルフのスウィングのように颯太を殴り飛ばした。

 颯太は放物線を描いてステージの壁にめり込んだ。


 ミノタウロスはリーナの方へ振り返ると邪悪な魔力を放ちながら言った。


「次はお前の番だな~‼ モーホッホッホーー‼‼‼」


魔獣界

人間が住む人間界とは別に魔獣たちが住む世界。

この世界は長い間封印させられていたが、近年人間界に魔獣界の魔獣が出現するようになった。

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