69話 『最強冒険者とは』
土の巨神はこの一撃にすべてをかけていたのか、攻撃をし終わった後に力尽きてバラバラに崩壊していった。
強烈な一撃を受けたカタイーグルは地面にめり込んでいて魔力も感じられなくなっていた。
‶魔導神装〟を解いたレージスは魔力の消耗と歳によってかなり息切れをしていた。
「ガッハッハッハー! やっぱ歳は取りたくないもんじゃのう‼‼」
高らかに笑っているレージスのところに国王の付き人がにっこりとした顔で近づいてきた。しかし目は笑っていなかった。
「レージス学長……魔獣討伐ご苦労様でした。ですが…………城めちゃくちゃじゃないくぁぁァァァアア‼‼‼‼」
「いやー、仕方なかったじゃろ! だってあいつめっちゃ強かったけんのう」
「もっと他にも倒す方法あっただろうが! お前は昔っから後先考えずに行動しやがるからわしらがどれだけお前の後始末に追われていたか分かっているのかーーーー!」
国王の付き人は人が変わったかのように怒り狂ってレージスに説教をしていた。
小さいころから世話をしてもらっていた国王もここまで怒っている姿を見たことがなかったから驚愕していた。
「この宮殿弁償しろよな! 安心しろ! お前の財産と首だけで建て替えることができるだろう?」
「おいおい! お前とわしは60年くらいの付き合いだろ! それに老人になったわしの首がそんなに高くつくわけなかろうが!」
「それができなければお前の学校で手を打ってやろう!」
「レージス学長の斬首は私がやりましょう!」
「ちょっとルージュちゃん! 冗談言わないでよ! そんなにわしを恨んでいるの?」
「学園のためです!」
「ギャーーーーーーー! ルージュちゃんはわしよりも学園をとるのかーーー!」
レージスはそう言って泣きながらルージュと国王の付き人から逃げ回っていた。
その光景を見ていた国王と宰相はゲラゲラと笑っていた。
「レージス学長と彼、結構似ていますよね!」
「彼とは一体誰のことか?」
宰相の言葉に国王はきょとんとしていた。
「雨宮君のことですよ! あの無邪気なところとか困った人をほっとけないところとか、そっくりだと思いませんか?」
「確かにそうだな! やはりいつの時代も変わらないな! ‶最強冒険者〟と言うのは」
――マリアネス第一魔法学院の周辺の町
「ウホホー! これでもくらえ! ‶バーニングゴリナックル〟‼‼」
Aゴリが燃え上がる拳から炎の衝撃波を飛ばしてソマリに襲い掛かっていた。
ソマリも必死に氷の壁を生成してAゴリの攻撃から身を守っていた。
「どうした? 逃げ回っていたらいつまでたっても俺を倒すことはできんぞー!」
「私が何もせずただただ逃げ回っていただけだと思う?」
ソマリは不敵な笑みを浮かべていて、Aゴリが近づいてくるのを待っていた。
そしてAゴリが近づいた瞬間、足元から凍り付き始めた。
「な、何だ? これは……」
「‶フリーズトラップ〟、あなたの攻撃から逃げ回っている間に仕掛けていたの」
「こんなことが……チキショーーーー‼‼‼」
Aゴリは次第に体全身凍り付いて声が聞こえなくなった。
ソマリはもしかしたらその氷から脱出してしまうのではないかと思い、腰から剣を抜いた。
「今のうちにとどめを刺しておかないと……」
ソマリはそう言って自分の剣を凍らせた。
「‶アイスブレード〟」
ソマリがそう言って凍らせた剣を振った瞬間、その剣の剣先が氷で延長されてその長さは30メールを超えていた。
そしてその伸びた剣で凍り付いたAゴリの胴から真っ二つにしようとしたときに、
「んーーーーー、バーニング‼‼‼‼‼」
と凍り付いたAゴリが叫んで体全身を燃え滾らせて、ソマリの剣ごと氷を溶かしてしまった。
「何!?」
ソマリはAゴリが氷の牢獄から脱出することはわかっていたのだが、こんな短時間で脱出するとは思っていなかったようだ。
「おのれー! 小癪な真似をしやがって、もう許さん! 灰になるがいい! ‶魔獣砲〟‼‼」
Aゴリが怒り狂って‶魔獣砲〟を打つ構えをとった。
ソマリは先ほどよりも高い魔力を放っている‶魔獣砲〟に驚いて体が動かなかった。
「さあ! 死ねーーー‼‼‼」
ズドォーーーーーーン ‼‼‼‼
大きな地響きによってAゴリはよろめいて全く違う方向へ‶魔獣砲〟を飛ばしてしまった。ソマリもその衝撃で転倒した。
「地震!? いったいどこから?」
そう言ってソマリはきょろきょろとあたりを見渡していると、王宮がある方向から100メートルを超える土の巨神が見えた。
「レージス学長!? まさかあの人も‶幹部補佐〟と戦っていて……」
ソマリはそう言うと、何かを決心したような顔をして立ち上がった。
「チッ! カタイーグルのやろう、簡単にやられやがって‼‼ ……ん、どうした? 何かやりたそうな顔をして」
「やはりあなたたちには本気で戦わないと倒せないということがわかったわ! 今から私も全力で行くわ!」
Aゴリはソマリのその発言が癇に障ったのか地面を思いっきり殴った。
「おい! その言い方だとまるで『さっきまで手を抜いていました!』っていう風にしか聞こえないんだが?」
「うん、そうだよ! だって私本気出すの嫌いだし!」
ソマリはけろっとした顔で即答した。そしてAゴリはその態度で怒りが完全に爆発して、
「ぶっ殺す‼‼」
と魔力を最大限までに引き上げた。
「熱くなりすぎよ! こっちまで暑くなるわ!」
そう言ってソマリも魔力を上げ始めた。
「氷花よ! 誰よりも冷たく、そして美しく舞え! ‶魔導神装〟‼‼」
ソマリの体は周囲から巻き起こる吹雪によって包み隠された。




