678話 『久々の筋肉三銃士』
「勝てるわけがない……‶王の騎士団〟なんかに……」
気を落とす冒険者にめがけてゴレムリンは容赦なく炎の拳を振るう。
ズドォォォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼
灼熱の炎は大地を焦がし、建物。全焼させる。普通なら跡形もなく消し炭になるだろう。
しかしそのゴレムリンの拳は怯える冒険者には届かず、直前で誰かに手を握られて止められた。
「ギギィ……」
ゴレムリンは機械音を鳴らしながら首を横に向ける。すると2メートル以上もある大男がガッチリとゴレムリンの拳を握り締めていた。
「何を情けないことを言っているんだ! 冒険者!」
その男は円城敦と同じ制服を着ていた。おそらく彼と同じ‶マリアネス第二魔法学院〟の生徒なのだろう。
「これはチャンスと言えねぇか? こいつに勝つことができたら俺たちは敦よりも強いって証明されたも同然じゃねぇか!」
「確かに……あいつの悔しがる顔が見て取れる」
もう一人筋肉質の男が現れ、そう言いながらゴレムリンの硬い顔面に強烈な拳を打ち込む。
「ギギ……データを確認。‶マリアネス第二魔法学院〟序列3位のバージ、序列4位のマッチョッテ」
ゴレムリンはレンズのセンサーを大男たちに向け、分析を始める。するとその背後から、
「むおぉー! 序列5位のフジノスケだっているど!」
バチィィィィィィーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼
風船のような巨漢から強烈な張り手をもらい、再びゴレムリンはぶっ飛ばされる。
「ギギ……記録の更新、序列5位のフジノスケを追加。‶筋肉三銃士〟との戦闘を開始。金貨5枚の賞金首の抹殺を開始する」
岩石をも砕く張り手を受けたのにもかかわらず、ケロッと立ち上がったゴレムリンは再び分析を開始する。
「おい、金貨5枚の賞金首ってどういうことだ?」
バージは足首を回しながら臨戦態勢に入る。
「ギギ……説明を要求されたため答える。我ら‶闇ギルド〟に仇をなす危険人物には賞金が懸けられている。‶冒険者ギルド〟が我々にしているのと同じように」
ゴレムリンがそう説明すると、周囲の‶闇ギルド〟の関係者たちが一斉に3人を取り囲む。
「へへっ! 金貨5枚のガキが3人もいやがるぜぇ!」
「金貨15枚はすべて俺が頂くぜぇ!」
一人の犯罪者が狂喜しながらナイフをマッチョッテに突き付ける。
ガキィィーーーン‼‼‼
流石はマッチョッテの筋肉と言うべきであろう。‶鋼筋武装〟をした胸筋に刃は通らず、マッチョッテは巨大な右手で犯罪者の顔面を握る。
「……フゥゥゥーーーーー‼‼‼‼‼」
「ギャァァーーーーーーー‼‼‼‼‼」
ミシミシと頭蓋骨を握りつぶす音が聞こえ、犯罪者は発狂する。
「金に目がくらんだ口ほどにもない奴め!」
マッチョッテはそう言い切り、‶魔導神装〟を発動する。みるみると体を大きくするマッチョッテに怖気づく犯罪者もいれば、立ち向かおうとする愚か者もいた。
「やっちまえぇぇ‼‼‼‼」
犯罪者の叫び声と共に巨人との戦闘が繰り広げられた。
「ギギ……」
しばらく様子を見ていたゴレムリンは手のひらを広げ、巨大な火球を生成する。これはまさしく‶炎天滅却砲〟に違いない。
「敦のに比べたら小せぇし、ぬるいな」
バージは超速移動でゴレムリンの懐に潜り込み、体毛を金色に輝かせる。
「金の剛毛、‶サンダーストライク〟!」
電撃をまとった強烈な蹴りがゴレムリンの右手を打ち上げ、火球を暴発させた。
「ギギッ!?」
「これで終わりじゃないど! ‶螺旋張り手〟‼‼‼‼」
バチィィィーーーーン‼‼‼‼‼
‶龍斬り〟の‶波動旋風〟に少し似た、風の衝撃波をまとった張り手を再び顔面に打ち込まれ、ゴレムリンはゴロゴロと転がり続ける。
「さっきお前に勝てたら敦にも勝てると言ったが、撤回する。お前の猿真似ごときじゃあ敦の足元にも及びやしねぇ!」
バージは腕の剛毛を赤い炎で染め上げ、啖呵を切る。ゴレムリンはゆっくりと立ち上がり、対象者をただ見つめる。
「敵の動きを学習……完了。これよりハードモードに移行する」
ゴレムリンはそう言い全身を炎で包み込み、バージに急接近する。