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674話 『写界の拡散』

――現実の‶魔獣界〟では、はじけ飛んだ光が世界中にばらまかれ、各地で大爆発を起こす。それはまるで無数の隕石が降り注がれるように。


その光の弾丸は、ケモビト族の集落にも落下していた。


「ま、マズイですよ! これは!」


ウサギ耳の少女は眩しい光を放ちながら接近してくる弾丸に慌てふためいていた。しかしそのとき……


「‶野生神爪(ワイルド・ブースト)〟」


彼女の背後から犬のケモビト族が空を蹴って飛び出す。その掛け声と共に激しい炎が毛並みにまとわれる。


「‶紅蓮パッド〟‼‼‼‼」


犬のケモビト族は、炎に包まれた肉球を光の弾丸に打ち込み、木端微塵に消滅させる。


「族長‼‼‼‼」


ウサギ耳の少女だけではなく、大勢のケモビト族が‶族長〟と呼ばれる彼の復活を喜ぶ。


「‶雀臨〟様には感謝しないとだな。ガルーダに貫かれたこの体も完璧に再生できたから」


変身を解除して地面に降りると、光の発生源を眺め、ぼそりと一言呟く。


「これが‶魔獣界〟の命運をかけた戦いか……」




光の弾丸はケモビト族の集落だけではなく、‶龍の里〟にまで落下していた。しかしその弾丸は、突如生成された氷の壁によって防がれ、里の壊滅は免れた。


「頼んだぞ! ‶龍斬り〟の少年よ」


氷壁を生成した龍長老は、遠くに流れ落ちる光の雨を見てそう言う。





「……チッ! 間に合わなかったか」


‶魔獣湖〟にたどり着いたソースイウルフは光の着弾によって干上がった湖の姿を見てため息をつく。しかしそこには、‶魔獣軍〟の幹部やスラッシュバイツ達の姿は一切見当たらなかった。





‶魔龍城〟手前にも光の弾丸は落下しており、巨大なクレータが出来上がっていた。その中心部には一つの灯火が小さく燃えていた。やがてその火に神力が送り込まれみるみると燃え広がっていく。その中からゆっくりとリーナが立ち上がり、燃え広がった火を全て吸収してジャクリンが姿を現す。


「‶雀臨〟様ありがとう! あなたの‶自然の衣(ナチュラルクローズ)〟のおかげであの爆発に巻き込まれないですんだぞ!」


リーナは自分の体が炎と一体化したことに感動を覚えていた。


どうやら‶写界〟の爆発と同時に雀臨がリーナごと‶自然の衣〟を発動し、爆風を受け流したようだ。


「あとは颯太が無事に帰ってくれればいいんだが……って何だあれは!?」


リーナの声に反応して雀臨も空を見上げる。すると彼女たちの頭上を巨大な光弾が通り過ぎていき、‶魔龍城〟に突っ込んで行く。


ズドォォォォォーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


各地の爆発とは比較にならないほどの大規模な爆発が広がる。その爆発によって強固な‶魔龍城〟は跡形もなく消し飛び、城があったところは底が見えないレベルまで陥没していた。しかしその奈落の中からはかすかに紅の光がうっすらと映っていた。


その奈落をずっと下に降りると、紅の光が徐々に強くなっていく。その光のところまで潜り続けると、マグマが流れているマントル地点までたどり着く。


そのマグマ溜まりに巨大な岩石が落下し、激しい地揺れが始まる。岩石の上には2人の男が倒れていた。


一人は龍人の姿をしたジャグバドス。そしてもう一人は‶魔導神装〟が消え去った雨宮颯太。


グツグツと沸き立つマグマ、じりじりと熔かされる岩石。そんな地獄のような場所で2人は同時に目を覚まし立ち上がる。


「おい、ジャグバドス……お前」


颯太はバラバラと崩れ落ちるジャグバドスの鱗を見て驚く。先ほどの衝突によって、体全体を覆っていた最硬度の龍鱗は全て剥がれ落ちた。


「鱗は落ち、お互い魔力が底を尽きた。そんな生身の俺たちがこのマグマに触れでもしたら……」


「言わなくても分かる。骨すら残らねぇだろうよ」


颯太は熔け続ける岩石を見て当たり前のことを言う。魔力が少しでも残っていれば、‶武装魔法〟を使ってマグマから身を守ることができたのかもしれないが、それを使う魔力が一切ない。


「この岩石が完全に熔けてしまったら俺たちは共倒れ。それにここは地下3千キロメートルもある。登って戻ることは不可能だろうよ」


颯太はただ黙ってジャグバドスの話を聞くだけだった。


「どうする? 放っといてもどうせ俺たちは死ぬ。それでも戦って決着をつけるか?」


「……何言ってんだお前? 当たり前だろ! ここまで戦い続けて、もう引き下がれねぇよなぁ!」


「その言葉……待ってたぜぇ!」


ジャグバドスと颯太は剣を取り、同時に斬撃を放つ。


ガキィィィィーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼


甲高い金属音が地下の世界に鳴り響く。

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