670話 『その名は』
ジャグバドスは吹き荒れる‶魔獣界〟を眺めて違和感に気付く。
「この規格外の邪神力に‶創造神〟……なるほど、ここは‶魔獣界〟に似せて創られたお前の世界なんだな?」
颯太はその言葉に一瞬驚いた顔を見せるが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「まさかこんなにも早く見破るとはさすが‶魔獣王〟だな。お前の言う通り、この世界は俺の邪神力で創り出した世界……‶写界〟だ」
颯太はパチンと指を鳴らすと上空に風穴が発生し、その中から巨大な神の手が出現する。
「この世界は俺が創ったから俺の思うままに操作できるんだ」
「ほう、つまりお前はこの世界の神とでも言いてぇのか?」
颯太が創り出した‶写界〟をインターネットのサーバーに例えると、颯太はそのサーバーを開発したサーバー管理者となる。サーバー管理者は管理者権限でサーバーを自由自在にいじることができるため、サーバーの利用者はサーバー管理者に絶対に逆らうことができない。
その絶対的な関係がこの‶写界〟の中で成立しているのだ。
その話を遠くから聞いていた雀臨は驚いた顔を浮かべる。
「ま、まさか創造神様にでもなったというのですか?」
「それって、颯太もついに‶魔導神装〟で神の壁を超えたってことですか?」
リーナは再び颯太の方へ注目するのだが、その違和感に気付く。
(おかしい……神の壁を超えた‶魔導神装〟は普通、発動者の背後に巨大な化身がいるはずなんだけど何故あいつの後ろには誰もいないんだ?)
これまでにも神の壁を超えた‶魔導神装〟……言うなれば‶魔導神装〟の第2段階ともいえる変身は、必ず神を具現化させた化身を生成させるはずだ。リーナ、ロゼ、静香、敦、ディアーラなども全員背後にはそれぞれの属性を象徴する神が存在していた。
そんなリーナの心を読み取った雀臨は恐る恐る口を開く。
「いえ、恐らく彼の化身は……」
雀臨の話の続きを聞いたリーナは衝撃を受け、もう一度颯太を見つめる。
場面は戦場へと戻り、ジャグバドスはいたるところから颯太の邪神力を感じ取り、一つの仮説を立てる。
「もしかしててめぇの化身とやらはこの世界そのものなんじゃねぇのか? 俺達はその化身の体内、もしくは化身が創り出したものの中に入ってるってことだろ、違うか?」
颯太はジャグバドスの考察に一言も返事をすることはなかった。そして一言ぼそりと呟く。
「俺が持つ神の力の名、それは……‶創造神・ブラフマー〟」
「なん……だと!?」
1万と数千年生きてきた中でもほんの数回しか聞いたことがないその名前に驚きを隠せないでいた。どこで聞いた名かはもう覚えていない。
だがその名は世界の仕組みをひっくり返す、そんな禁忌とも言える名だということだけは脳に刻まれている。
「その名を聞けて良かった。やはり俺の目に狂いはなかった。お前こそが俺の待ち望んでいた宿敵だったんだ。何千年も待った甲斐があった!」
ジャグバドスは邪神力のオーラを最大まで解き放ち、より動きが速く、破壊力も段違いに向上させる。




