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662話 『ダイハードの邪神力』

 ――これはジャグバドスの‶龍牙斬衝(りゅうがざんしょう)〟をまともに受けた直後の颯太の精神世界。


「……クソッ! 体が痛ぇ……それにここは一体何処だ?」


 颯太は異様な光に包まれたこの世界を見渡し何かを察する。


「……なるほど、どこかで見覚えがあるなと思えばあの時の」


 颯太はそう言いながらある出来事を思い浮かべる。


 その出来事とは昨年、‶魔人ラボ〟のトップであるラディーゴとの最終決戦の直前、ジルジオンと人格の主導権を賭けた戦いをした時の別世界に似ている。


「確かこういう人の無い世界を‶無界〟って言うんだったっけ?」


 颯太はしばらくこの世界を見て回っていると、突如小さな光を発見する。


 その光のシルエットはどことなくとある大樹によく似ていた。


 その大樹の形をした発光体は一本の蔓を伸ばし、颯太のところへと近づける。


「……こいつを握れって言うのか?」


 颯太はその大樹の蔓に手を伸ばそうとした瞬間、


『久しぶりだなぁ! 颯太!』


 何処からか懐かしくも憎たらしい声が聞こえ颯太の視線が反対方向に向く。その瞬間、颯太に近づいていた大樹の発光体は欠片も残さず消滅していく。


「……どうしてだ? どうしてお前がここにいる!? ジルジオン!」


 颯太は懐かしい姿を見て感慨深い気持ちになる。そんな颯太を見てジルジオンはやれやれと言った感じで軽くため息をつく。


『さぁな? だがてめぇが俺を必要としていたから俺が呼び戻されたのかもしれねぇな!』


「会えてうれしいぜ、ジルジオン……ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!」


 颯太はもう少し感動していたかった気持ちをこらえて、ジルジオンとは反対方向の場所を指す。


「なぁ、お前あの光る物体について何か知ってるのか?」


『……何言ってんだてめぇ? そこに何か変なもんでもあったのか?』


「へっ?」


 ジルジオンの呆れた返答に颯太は思わずマヌケな声を漏らす。そして後ろを振り返ってみると、そこにいたはずの大樹の発光体の姿がなかった。


「いや、確かにお前に声かけられるまでそこにいたはずなんだけど……」


 颯太は首をかしげていると、ジルジオンは何かを思い出したのか、ポンと手のひらを叩く。


『恐らくそいつは‶世界の意思〟だろ』


「‶世界の意思〟だって?」


 颯太は初めて聞く言葉に再び首をかしげる。


『こいつは俺達ダイハード一族(いちぞく)に伝わる話なんだが、ダイハード家が持つ邪神力は創造神の力が宿っていると言われているんだ。どうやらその力があれば‶世界の意思〟と精神をつなげて意思疎通することができるらしい』


「意思……疎通……」


 ジルジオンは呆然とする颯太の胸に指を当て邪神力を送り込む。するとジルジオンの邪神力に反応して颯太の邪神力が無意識に放出される。


『その証拠にその邪神力は‶ダイハードの邪神力〟と呼ばれ、白いオーラを放つんだ』


「白いオーラ……っ!?」


 颯太は最近の異変を察して驚愕する。


『そうだ! てめぇは間違いなく、その力を持っている。だからあとはその力で‶世界の意思〟に触れるんだ!』


 ジルジオンにそう言われた颯太は決心したのか、大きく首を縦に振り、胡坐をかいて座禅の体勢に入る。


「ジルジオン、少し頼みたいことがある」


『何だ? 言ってみろ』


「さっき俺が‶世界の意思〟を見ることができたのは、俺が俺の世界に入り込んでいたからだと思う。だから俺はもう一度俺の世界へと入るから、その間お前にジャグバドスの相手をしてほしい」


 ジルジオンは一番聞きたくなかった頼みを聞いてしまい、深くため息をつく。


『う~わ、一番聞きたくなかったことを言いやがったな』


「頼むよ! 精神統一してる間は戦うことができねぇじゃねぇか! だからこの体は今だけお前に預けるしかできねぇだろ!」


『何言ってやがる? 別に俺はやりたくないとは言ってねぇだろうが?』


「えっ?」


『俺は元々ジャグバドスを俺の意思で倒すつもりだった! それをてめぇが頼むからまるでてめぇの意思に従ってるようじゃねぇか!?』


 ジルジオンの文句があまりにも可愛らしかったのか、颯太は思わず吹き出す。


「プッ! 何じゃそりゃ? 面倒くせぇやつ!」


『うるせぇ! さっさと話してこい!』


 ジルジオンはそう言い残し、この世界を去っていく。


「頼んだぜ、ジルジオン!」




 ――現在


 ジャグバドスの鬼火をひたすら斬り裂いていくジルジオンは颯太の声が聞こえ、思わず苛立ってしまう。


「俺に頼み事してくんじゃねぇよ! 俺の意思で戦ってんだっつってんだろうが!」


 ジルジオンはすべての鬼火を斬り裂くと、鋭利な形をしたカルスト台地の上に立ち、黒刀を地面に突き刺す。


 そして全身から邪神力を解放させ、次第に彼の髪はみるみると真っ白に侵食されていく。同時に彼の左半身にも右同様の模様が浮かび上がってくる。さらに背中から等身サイズの翼と頭部から太い角が生えてくる。


 その姿を一言で表すとすれば‶悪魔〟だ。


「俺の名はジルジオン・デモラル・ダイハード! そしてこの姿は‶漆黒の第三形態〟だ!」


「ほう、これが(ジャグボロス)を打ち倒した姿か!? 面白い、それが俺にどれだけ通用するのか楽しみだな!」


 ジャグバドスは高笑いしながら落雷を撃ち続ける。


「ならすぐにでも見せてやるよ! ‶ダイハードの邪神力〟をよぉ!」


 ジルジオンはそう叫ぶと‶黒刀・滅龍丸〟を抜き、翼を広げて飛び出す。


「‶ダイハードの邪神力〟だと?」


 そのたった一言を聞き、ジャグバドスの目つきが豹変する。

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