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647話 『幾千の時を経た痛み』

「リーナァァ‼‼‼‼」


 ロゼの叫び声も爆炎の音に虚しくかき消される。


「おい、よく見ろ!」


 敦はジャグバドスの炎が横に逸れていく光景を見て思わず目を丸くする。

 そしてジャグバドスが炎を吐き終えると、誰かがリーナを拘束していた髭を断ち切った。


「俺を倒すチャンスを見す見す逃してこの女を助けるとはなぁ、本当に俺を倒しに来たのか?」


「あぁ? 何か勘違いしてるようだが、俺はお前を倒すためにここまで強くなったんじゃねぇぞ! 俺は守るべきものを守るためにここまで強くなったんだ!」


「何を言ってやがる? 俺を倒せなきゃ誰も守れやしねぇぜ!」


「俺はお前を倒すことを諦めたわけじゃねぇよ! 俺はお前を倒すことよりもリーナを守ることを優先したまでだ! またお前を倒すチャンスはすぐに来るだろうからな!」


「何だと?」


 ジャグバドスは颯太の言葉にはらわたが煮えくり返りそうになるのだった。地獄の釜の蓋が開くのには1秒もいらなかったようだ。


「俺は‶魔獣王・ジャグバドス〟だぞ‼‼‼‼ そんな都合よくてめぇらの思い通りになると思うなよ! 馬鹿共がァ‼‼‼‼‼」


 巨龍の怒りの雄叫びは‶魔獣界〟全体を震撼させ、近くで聞いていたリーナたちをマッハの速度で吹き飛ばす。


「お、雄叫びだけでこの威力か……」


 敦は喋るたびに口内から血液があふれ出てくることに衝撃を受ける。体中の骨が悲鳴を上げているのも感じ取れるほどだった。

 しかしリーナはポトフの大きなお腹が程よいクッションとなり、衝撃をかなり和らげることができた。


「た、助かったぞポトフ!」


「た、助けたつもりはないんデ……フゥッ!?」


 ポトフはリーナの肘が鳩尾に深くめり込んだことで気を失う。


「あ~あ、ちょっとキレただけでこのざまだ! 脆いなぁ、人間ってのは」


 ジャグバドスは残念そうな顔を浮かべながらリーナたちの方を向き、口から‶魔獣砲〟を発射する構えをとる。


「あばよ! 虫けら共!」


 ジャグバドスは最後にそう言い残してとどめを刺そうとしたのだが、


 ビリビリビリ‼‼‼‼


 強い電気が体中を駆け巡り、‶魔獣砲〟が明後日の方向に飛んでいってしまう。


「ほらやっぱり、リーナの攻撃が効いていたんだな! お前の言う虫けら共ってのはみんなで支え合い、足りない力を補うことで巨大な力に打ち勝つ‶絆〟というさらにデカい力に変えてしまうんだよ!」


「そんなもの……ただのきれいごとだ……」


「だったら今から見せてやるよ! 絆の奇跡を!」


 颯太は動きが鈍くなったジャグバドスの隙を見て刺客に回り込み、以前破壊された鱗の風穴へ飛び込んでいく。


「まさか最後の悪あがきがこんなところで役に立つなんてなぁ」


 颯太は数週間前、初めてジャグバドスと交戦した際に残りの力を振り絞って繰り出した‶覇衝旋風(はしょうせんぷう)〟によって破壊した鱗の風穴を見て得をした気分になった。


「あの時の礼はきっちりと返させてもらうぜ! ‶疾風迅雷(しっぷうじんらい)十字覇衝剣(じゅうじはしょうけん)〟‼‼‼‼‼‼」


 二刀にそれぞれ雷と疾風をまとわせた颯太は二つの刀身を十字状に交差させて目にも止まらぬ速度で突進していく。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 十字状の刀身の形に添ってジャグバドスの分厚い皮膚に大きな傷をつけ、その傷口から大量の血しぶきが上がる。


「グォォォォーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼」


 こればかりはさすがのジャグバドスも痛みに耐えきれず、思わず発狂する。さらに発狂するのと同時に傷口の血しぶきと同じ量の吐血もする。そして颯太の雷は、リーナの残留電気と合わさることで究極の放電を起こす。その電気が全身の神経隅々まで行き渡るのに時間はいらなかった。


 何年、何十何百いや……何千年ぶりの痛みだろうか、何千年ぶりの血だろうか。ジャグバドスはあまりの衝撃の多さに頭が整理できないでいた。

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