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645話 『魔獣王の弱点』

 龍の大暴れが静まり、‶魔龍城〟近辺の大森林は目も当てられないほどまでに壊滅しており、多くの木々やそこに住む魔獣が龍鱗で粉々にすりつぶされていた。


 そんな光景を見て颯太もそんな姿になっているのではないかと恐ろしい未来の光景が頭をよぎる。そんなロゼを察した敦は、


「大丈夫だ。あいつはそんな簡単に死んだりなんかしねぇよ」


「……だといいんだけど」


 しかし敦がいくら落ち着かせようとしたところでこの有様を見てしまえば落ち着いていられるわけがない。


「あ、あいつのことだ! どうせ何とかうまく逃げてそこの瓦礫からひょっこり顔を出したりするんじゃねぇのか?」


 敦は慌てて瓦礫の山を指してジャグバドスから注意を逸らさせる。するとたまたま敦が指した瓦礫の山から、ガラガラと物が崩れる音が聞こえる。


「「……」」


 2人は瓦礫の山の異変に気が付き、前のめりになって注目する。


 ガラ……ガラガラ……ドスン‼‼‼‼


 岩石をどかして真っ黒な髪がひょっこりと外へ飛び出る、そしてキョロキョロとあたりを見渡すと、埋まっていた全身をゆっくりと掘り起こしていく。


「あぶねぇあぶねぇ、危うくすり身になってしまうところだったぜ!」


「あ……出てきた」


 敦は突然颯太が出てきて脊髄反射で言葉を発した。


「「颯太!?」」


「いつ逃げやがった!?」


 瓦礫の中から姿を現した颯太にリーナやロゼだけではなくジャグバドスまでもが驚いていた。


「最初に潰される直前にやけくそになって鱗に刀を打ち付けたら、思ったよりも簡単に切れるもんでね、2~3枚ほど斬り落として逃げ出してやったぜ!」


 颯太は伸脚をしながら説明する。


「あとそんでもってお前の弱点もなんとなくわかって来たぜ!」


「弱点だと!?」


 これには颯太の仲間たちも驚きだった。‶魔獣王〟とも呼ばれるような怪物に弱点なんてものがあるのか。彼女たちの頭には無数のはてなが浮かんでいるだろう。


「お前は何万年もこの姿で戦ってなかったそうだから知らねぇと思うが、お前は巨龍に変身した際にそのバカみてぇに硬ぇ鱗の強度が激減するんだよ!」


「っ!?」


 これには‶魔獣軍〟に所属するソースイウルフも驚きが隠せなかった。


「だったらその証拠を見せてやるよ! ‶疾風・大鎌鼬〟‼‼‼‼」


 颯太の斬撃が高速で放たれ、ジャグバドスがよける間もなく直撃する。


 すると人型の龍の状態であればびくともしなかったはずの鱗に傷が入り、欠片が地面に落下してくる。しかし欠片と言っても数メートルもある鱗の一部が落下してきたはずなのに、いたって大きな衝撃は感じなかった。


 颯太はその落ちた龍鱗の一部を片手で持ち上げ、手首だけの力で高く投げる。


「俺自身が強くなったのもあるかもしれねぇが一番大きな理由としてはこの龍鱗は前の形態時の龍鱗と質量が変わらねぇってことだ」


「ぼ、僕颯太どんが何を言ってるのか分からないデフ」


「み、右に同じだ」


 ポトフはチンプンカンプンで目を回しており、トムも熟考はしてみたが理解はできないでいた。敦に関しては考える素振りすら見せていなかった。


「そうか、変身して巨大になった龍鱗の質量が変わらないってことは、龍鱗の硬さを示す密度が極端に小さくなってしまうから結果的に強度がガタ落ちするってことなのね」


 流石学年一位の頭脳を持つロゼ。彼女は颯太の言いたいことを瞬時に理解した。


「なるほど、つまり今のジャグバドスなら生身の体に攻撃を入れやすくなるってことか!」


 リーナもようやく理解し颯太の代わりに説明する。


「だから今こそが攻撃の最大のチャンスだ! お前ら、俺に力を貸してやくれねぇか?」


 突然の颯太の頼みに驚いたのはリーナだけではなかった。そしてその言葉はリーナが颯太の口から一番聞きたかった言葉だった。


 リーナはこぼれそうになる涙を拭って槍を取り出す。


「ああ、任せろ!」


 彼女に続いて敦たちも一斉に戦闘の構えをとる。

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