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643話 『神なる領域』

「おい! 城の中に何十体も魔獣がいるぞ!」


 リーナは目の前にいる無数の赤い瞳を発見して鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべる。


「あれは‶地獄部隊〟の魔獣だ! 奴らが放つ‶魔獣砲〟はどの部隊の魔獣よりも強力で赤い閃光を放つ」


 ソースイウルフは軽く舌打ちをしながら迎撃のためにこちらも‶魔獣砲〟を放つ構えをとる。


「ヤバイ! ‶魔獣砲〟が飛んでくるぞ!」


 雀臨を追う龍長老の背に乗る敦がそう叫ぶ。魔獣たちは一斉に口を大きく開き、‶紅王(ベスティア・)(ピストーラ・デル)魔獣砲(・ロート・カイザー)〟を今にも発射しようとする。


「俺に任せろ!」


 颯太は龍長老の背中から飛び出し、漆黒の翼を生成させ‶魔導神装〟を発動させる。


「いくら赤かろうが俺の黒い‶魔獣砲〟には遠く及ばねぇぜ!」


 颯太の手のひらへと漆黒のオーラが集中していき、邪神力を十分に含んだ‶魔獣砲〟が完成する。そしてその漆黒の閃光を魔獣軍団に向けて勢いよく発射する。魔獣たちもそれに合わせて一斉に放つ。


「‶漆黒(ベスティア・)(ピストーラ・デル)魔獣砲(・シュヴァルツ)〟‼‼‼‼」


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 颯太の魔獣砲が凄まじい速度で直進していく。しかし今までの‶魔獣砲〟とは少し異なり、徐々に漆黒の閃光の中心となる部分が真っ白く輝きだす。


「こいつは!?」


 颯太は今までの感覚と大きく違うことに驚く。そしてその威力は今までよりもはるかに上昇しており、魔獣たちの‶魔獣砲〟とでは比べ物にならないほどであった。敢えて言うのであれば川の激流と緩流ほど威力に差があった。


 そして当然緩流である魔獣たちの‶魔獣砲〟は激流の颯太の‶魔獣砲〟に抵抗すらできずあっという間に呑み込まれ、


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 大爆発と共にオセロのような‶魔獣砲〟は‶魔龍城〟を容赦なく貫いていく。颯太の開けた風穴からは遠方の山岳がよく見える。


「ハァ……ハァ……」


 普段は息を一つ切らさないはずの颯太の呼吸が荒くなり、漆黒の翼が突然消失する。


 すぐに何かを察した雀臨が急いで颯太を背中に乗せ、城の中へと侵入する。


「どうした颯太? あまり油断するなよ!」


 リーナは突然颯太が翼を解除したのがただの凡ミスだと勘違いして注意する。


「体に異変でもあったのでしょう」


 雀臨の言葉にリーナは驚愕する。


「ああ、何か体内の邪神力がごっそりと持っていかれた感じだ!」


 颯太は手を握ったり開いたりして先ほどの感覚を思い出す。


「だが今までよりもはるかに手ごたえがあった。この力を使いこなせれば奴と対等異常に戦える!」


 颯太がそう気持ちを昂らせていたそのとき、


 ズシン……ズシン……ズシン‼‼‼‼


 最初は遠くからの落石の音かと思われていたが、その重くて鈍い音は徐々に大きくなっていき、やがて床下が大きく揺れ始めてきた。


「この足音、そしてこの邪悪なエネルギー、間違いない!」


 神力の探知に長けている颯太と雀臨は近づいてくる存在の見当がつき、険しい表情を浮かべながら身構える。


「俺の存在に勘づくその闘争本能。そうだ、俺の求めていた俺を倒す存在。どんどんと近づいて来てやがるぜ!」


 颯太を上回る邪神力の圧で天井を突き破り、上の階から姿を見せた魔龍、その名はジャグバドス。


「一つ問おう、‶龍斬り〟……お前は俺を殺せるのか?」


 颯太はその質問に目を丸くするが、すぐに落ち着きを取り戻し、不敵な笑みを浮かべる。


「愚問だな! そんなもん、俺がこの場に立っていることが答えだ!」


「いい……答えだ」


 ジャグバドスも颯太と同じような顔を見せると、早速邪神力を容赦なく放出する。


 大抵の魔獣たちはこの波動を受けて失神、最悪の場合は死亡するほどなのだが、ここにいる颯太たちはそんな‶魔獣王〟の圧にも一切動じていなかった。


「何万年ぶりだ? この感覚は!」


 ジャグバドスはそう叫ぶと鋭い鉤爪に邪神力を送り込み、颯太に斬りかかる。颯太はそれに真っ向から挑み、同様に邪神力を送り込んだ刀でその攻撃を受け止める。


 バリバリバリーーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 邪神力の衝突が漆黒の(いかずち)を生み出し、バチバチとフロア全体に放たれる。


 ‶魔獣界〟の最終決戦が今、始まろうとする。

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