640話 『最凶を超える魔獣の王』
「……ついに来たか、‶龍斬り〟」
‶魔獣王・ジャグバドス〟は玉座から颯太の魔力が接近していることに気付き、不敵な笑みを浮かべる。
「いよいよですね、バドスさん! 俺達が全世界を支配する時が!」
ガルーダは意気揚々と人間界の地図にナイフを突き刺す。
「だが本当にいいのかバドス? あんた一人に‶魔龍城〟を任せて」
「何だ御鬼? バドスさん一人じゃあ城を守ることなんてできねぇとでも言いてぇのか?」
御鬼の不安気な一言にアシュラSコングが高圧的に返す。
「違ぇよ! 俺が言いたいのはバドスさんに任せてしまったら、この城を壊しかねないってことだよ」
「……なるほど、それもそうか」
アシュラSコングもジャグバドスの異次元の強さを知っているため、いつもなら言い争いをする御鬼の言うことについ納得してしまった。
「まぁ心配するな! 最悪この城なんかどうなったってかまわないさ! なんせ‶人間界〟を手に入れたらそこに新しい城を築けばいいだけさ!」
「そいつは名案ですね魔獣王様!」
ジャグバドスの隣に立っていたハヌマーンはそう言うと高らかに笑う。
「なんたって我らの王‶魔獣王・ジャグバドス〟最凶の魔龍・ジャグボロスの弟龍にしてそれを超える強さを持つ存在なのですから!」
ハヌマーンは‶危険レベルチェッカー〟に類似した投影機を起動させて玉座の上のスクリーンに映し出す。
魔獣名:魔獣王・ジャグバドス
説明 :‶王格の魔獣〟
‶魔獣軍〟の頂点に立ち、‶魔獣王〟と呼ばれている。古の時代に全ての魔獣を力でねじ伏せて‶魔獣軍〟を立ち上げた。吠えれば雷鳴をとどろかせ、息を吹けば暴風を起こし、怒れば世界を業火に包み込むような災害を具現化させた存在だと人間から恐れられている。
全長 :10~11メートル(龍形態時・1800メートル)
戦力 :750万
危険度:44
「せ、戦力750万!?」
「危険度44!?」
幹部たちと同じように‶魔獣王〟のデータを‶危険レベルチェッカー〟で確認したリーナたちは顎が外れるくらい口を開けて驚くのだった。
「そう言えば奴と戦っているときにポケットにその機械入れているの忘れてたわ」
颯太が‶魔獣王〟と戦っている最中に、彼のデバイスが‶魔獣王〟のデータを受信し、勝手に記録されており、本人はそのことに先ほど気付くのだった。
「確かこの機械って危険度40までしか計測できないんじゃなかったっけ?」
「いや違う。この‶危険レベルチェッカー〟は‶最凶の魔龍・ジャグボロス〟のデータを基準にして測れる代物なの。だから基準となるジャグボロスの危険度を40と定めて相対的に計測してから魔獣の危険度が示されていたの」
秀才のロゼが敦に説明する。
「それならばジャグバドスはジャグボロスよりも魔力量が高いと判断されたから44と表示されたのか?」
トムの言葉にロゼはコクリと頷く。それを知ったポトフは緊張のあまりお腹を下す。
「こんな数字見たことないデフ……‶第一幹部〟よりもはるかに高いデフ!」
「戦ってみて分かった。ジャグバドスの強さは‶魔獣軍〟全戦力よりも上だ。だから‶第一幹部〟3体相手に手こずっているようじゃ奴に勝つことなんてできねぇんだ!」
颯太はあまりの悔しさにデバイスを強く握る。するとそんな颯太の肩にリーナは手を乗せる。
「だからこそ一人じゃダメならみんなで、だ! 到着にもう少し時間がかかる。それまでにしっかりと作戦を考えよう!」
「……ああ、そうだな」
颯太は頼もしくなったリーナの顔を見て感激するのだが、それを押し殺して作戦を考えるのだった。