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638話 『ゲームオーバー』

 ‶情報送受信室〟に2体の怪物が堂々と侵入してくる。


 その足音に静香が気づき刀を向ける。


「次から次へと一体どうなってんのこの城は!?」


 静香が後ろで倒れている零龍(リンロン)を庇いながら辺りを警戒するのだが、その零龍のすぐそばから悍ましい魔力が放たれていた。


「嘘っ!? いつの間に?」


 ユマは目の前で自分を見下す猿の怪物、ハヌマーンに驚愕する。


「……なんだ、まだそこにいたのかてめぇら。危険地帯だというのに呑気な奴らだなぁ」


「は、ハヌマーン……いつ戻ってき……て」


「‶魔獣王〟様は持ち前の邪神力で闇属性の空間移動が使えんだよ。だから‶魔獣界〟の行き来なんて一瞬よ!」


 ハヌマーンは自慢げにそう言うと呼吸の荒い零龍に注意を向ける。


「んなことよりも、てめぇ……まだ生きてやがったのか? しぶてぇ奴だ」


 ハヌマーンは零龍を鼻で笑うと、爪先を合わせて電気をバチバチとちらつかせる。しかしそのとき……


 ドォォォォォォーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 同じ階と下の階で凄まじい爆発音が響き渡り、部屋全体が大きく揺れる。


「い、一体今度は何の音なの~!?」


 静香はあまりの絶望で泣きそうな顔を浮かべる。


「……どうやらネズミの駆除が完了したようだな。なんたって‶魔獣王〟様と‶第一幹部〟が直々に掃除したんだからよぉ」


「……まさか!?」


 ユマは何かを察したのか、この階と下の階にあったはずの味方の魔力を確認する。しかし確認したところ、どちらの場所でもかすかにしか魔力が感じられなかった。


「この階にいた‶剣豪〟は‶魔獣王〟様が、てめぇらを庇って下の階で戦ってたヘーボンとかいうガキは4体の‶第一幹部〟に惨敗。残ってるのはてめぇらだけだ」


「そ……そんな……」


 ユマはヘーボンがやられたことにひどくショックを受ける。彼女の脳裏に優しくて強いヘーボンの姿がよぎる。そのとき温厚な彼女の頭に血が昇り、


「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソだぁぁぁぁ‼‼‼‼‼」


 ユマはそう叫びながら‶魔導神装〟し、暴風をまとったほうきで殴り掛かる。しかしその攻撃をあっさりと手で受け止め、長い尾で首を締めあげられる。


「俺は今喋ってる間にてめぇらの首くらい簡単に吹き飛ばせたんだぜ! それなのにわざわざ何もせず、丁寧に状況を説明してやったんだ! 俺なりの優しさとは思わねぇのかな?」


「散々私達を痛めつけて……何が優しさだ!」


「この城は‶魔獣軍(おれたち)〟の拠点だ! そこを荒らしに来たてめぇらが痛めつけられるのは当然だろうが!」


「あ……あなたたちも私達の世界を荒らしてるじゃない!」


「弱者は強者に支配される。それは昔の‶人間界〟でも同じことじぇねぇか!」


 ハヌマーンの言葉にユマは何も言い返せなくなってしまった。事実、何十年も前‶人間界〟は各国で戦争が絶えず行われており、大国だったレーフェル王国はマリアネス王国と共に多くの国を制圧してきた。そんな国の王女である彼女にはこの一言が大きく響くのだった。


「そんなことはない! ユマっちのレーフェル王国は独裁政治をしたり争いばかりする世界の秩序を壊しかねない国を止めるために戦ってたんだ! お前たちのような私利私欲のための支配と一緒にするな!」


 魔法学院で歴史を学んできた静香が必死に反論する。そんな彼女たちの声があまりにも耳障りだったのか、ハヌマーンはユマを静香のところへ投げつける。


「あ~うるせぇ……うるせぇ! てめぇらと口論する暇なんてねぇんだよ! そんなに自分の主張を貫きてぇんなら力で示してみろよ! こいつによぉ!」


 ハヌマーンはそう言うと、パチンと指を鳴らす。すると、ドアがあるのにもかかわらず壁を突き破って大熊が飛び出してきた。静香はいきなり戦闘モードのブリズリーを見てすぐに‶魔導神装〟する。


「さてと、俺は地面に落ちていった‶第三幹部(バカども)〟の回収に行くとするか!」


 ハヌマーンはそう言って穴の開いた床を通って‶情報送受信〟から出て行く。




 こうして‶最果ての魔龍城〟に侵入していた人間たちは‶魔獣軍〟の最高戦力の前に手も足も出ずに、颯太のいた地下牢獄へ監禁されるのことになるのだった。

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