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628話 『裏切りの逆転ショー』

 大爆発によって舞い上がった砂ぼこりの中から、生きよ意欲ガルーダが飛び出す。その鋭いくちばしには颯太の血と思われる赤い液体がポタポタと垂れていた。


「颯太!?」


 リーナは颯太が心配のあまり、思わず爆心地に駆け寄り目を凝視させる。しかし御鬼(ゲキ)がそんな無防備な敵を見逃すはずもなく、


「‶影鬼(えいき)〟」


「しまった!」


 リーナは気づくのが遅れ、御鬼の能力によって影ごと体を動かせなくなってしまった。


「‶龍斬り〟のことになると途端に回りが見えなくなるなぁ。やはり人間はおろかな生き物だ」


 御鬼はそう煽りながら近づいていくと、立ち上る煙の中から風の斬撃が彼とリーナの間を通り抜ける。


「こいつは!?」


「バカ言え! 他者を心配し思いやることができる仲間意識……それが人間の良いところじゃねぇか! 魔獣(てめぇら)にはない……」


「颯太!」


 リーナの目線の先には風の斬撃によって煙が搔き消され、堂々と近寄ってくる颯太の姿があった。


「……しぶとい奴だ」


「さすがに今の攻撃は痛かったぜ! なんたって背中にくちばしが刺さったんだからな! 背筋に‶鋼筋武装〟するのは難しいんだぜ!」


 颯太は背中の刺し傷を触りながらため息をつく。ガルーダは自分の大技で颯太の体に風穴があいてないことに驚愕する。


「お前らと戦ってよぉーく分かったことがある。お前らは元から頑丈な体をしている上に隙の無い3体の連携攻撃を繰り出す。おかげで俺は攻撃に集中できずに致命的なダメージを与えることができねぇ」


「馬鹿め、今更気づいたか? まぁ分かったところで俺たちに傷をつけることなど不可能だ」


 御鬼は棍棒を振り上げ、颯太に殴り掛かる。颯太はその一撃を二刀で挟み込み、御鬼の顎を蹴り上げる。


「だからお前らの気を逸らすことにした」


「何っ!?」


 御鬼は蹴り上げられた勢いで後ろの巨大樹が目に映る。するとその巨大樹に魔獣が忍び込み、封印棺に手を出そうとしていたのが見える。


「誰だ! お前は!」


「バラすのが早ぇんだよ……‶龍斬り〟」


 巨大樹の葉から姿を見せた狼の魔獣、ソースイウルフがため息をつく。まさかの‶第三幹部〟の登場にさすがの御鬼も驚く。


「ソースイウルフ!? 何故おまえがここに?」


「じゃあ逆に聞くが、なぜ‶龍斬り〟がこの儀式のことを知って邪魔をしに来たと思う?」


「なるほど……それじゃあ‶魔獣軍〟の人狼騒動の首謀者はお前だったってことか……ソースイウルフ」


 御鬼はゆっくりと立ち上がり、棍棒を地面に勢いよく打ち付ける。


「‶魔獣軍〟全部隊に告ぐ! ‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟に忍び込んだ裏切り者を始末しろ!」


 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 御鬼の命令と共にその場にいた魔獣たちが一斉に‶魔獣砲〟を放つ。しかし大勢の‶高格の魔獣(ハイビースト)〟の攻撃であっても‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟1体の攻撃に勝ることはなく、ソースイウルフの〝魔獣砲〟によって簡単に相殺されてしまう。


「魔獣の戦いに集団戦なんて存在しない。一体の強い魔獣が全てを支配する」


「だったら‶第三幹部〟が‶第一幹部〟に勝つことができないのも当然の摂理ってことだろ?」


 ガルーダはそう叫びながら炎の蹴りをソースイウルフに仕掛ける。しかしソースイウルフはいたって落ち着いており、爪先に神力を送り込む。


「‶神の鉤爪(ガラ・デル・ディーオ)〟‼‼‼‼」


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 爪撃と蹴りが衝突し、巨大樹を通して大地を揺らす。他の魔獣や‶ケモビト族〟はその揺れに耐え切れず身動きがとれないでいた。


「ガルーダさん、あんたさっきから誰と戦ってたんだ? この世界では最も強い奴が戦いを制するんだろ。だったらこの戦いはもう‶最強冒険者(あいつ)〟のものだぜ!」


 ソースイウルフはそう言い不敵な笑みを浮かべる。するとガルーダの背後から漆黒のオーラをまとった悪魔が刀を振り上げる。


「‶紫電一閃(しでんいっせん)魔旋風裂斬(ませんぷうれつざん)〟‼‼‼‼」


 バチバチと紫電をまとった斬撃が目にも止まらぬ速度でガルーダの背中に直撃する。ガルーダは硬い翼に傷をつけられ、自由に飛ぶことができずに巨大樹から落下していく。



 ソースイウルフの言葉を聞いたリーナはその後の颯太の攻撃に鼓舞され、勢いよく立ち上がる。


「リーナさん! まだ完全に回復できてないよ!」


「ありがとう、でももう大丈夫だ!」


 トムがリーナを止めようとしてもリーナは止まらず、


「そうだ、颯太は最強冒険者なんだ! 誰にも負けやしない! だから私が……私達が颯太が最強だということを証明させなきゃダメなんだ! ここで見てるだけじゃダメなんだ!」


 リーナが力強く一歩踏み出し勢いよく飛び上がる。彼女に続いてロゼ、敦、ミリファも一気に飛び上がる。


「雑魚は引っ込んでやがれ! ‶破裁断頭剣(バサギロス)〟‼‼‼‼‼」


 アシュラSコングは巨大樹に向かうリーナたちを邪魔すべく、6本の剣を同時に振りかざす。6本の剣から同時に放たれる斬撃は破壊力が合成され、一つの巨大斬撃となり、ギロチンのようにリーナたちをぶった切ろうとする。


 しかしその斬撃は超速移動で颯太が止めに入る。2本の刀に最大限まで邪神力を送り込み、刀身を黒く輝かせる。


「‶神剣武装〟」


 ズバァァァーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 颯太の純粋な邪神力による一撃により、‶破裁断頭剣〟は軌道が逸れていき、遠方の海面を斬り裂く。


 そして翼を広げ、アシュラSコングの腹部に急接近し、懐に手のひらをかざす。


「‶波動旋風〟」


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 今度は‶超神武装〟で手のひらが超強化され、凄まじい衝撃波にアシュラSコングは吐血しながら吹き飛ばされる。


「調子に……乗るなぁ‼‼‼‼‼‼」


 自分と同じ‶第一幹部〟であるアシュラSコングとガルーダが押されていることに苛立った御鬼は‶影鬼(えいき)〟で颯太の全身を拘束しようとするも、颯太がその直前に高く飛び上がることで不発に終わる。


「影鬼だっけ? こいつは相手を問答無用で完全い動きを封じる最強の技だが、対象者が地面にいなきゃ発動できない弱点がある。そうだよな?」


「そこまで見切られていたか。だがそれでもこの‶魔獣砲〟からは逃げられねぇだろ!」


 御鬼はそう言い棍棒から紅の閃光を発射させる。それも今までよりも何倍も巨大な魔獣砲だ。


「逃げる必要なんてないさ」


 颯太はそう一言呟くと、手のひらを御鬼に向ける。


「‶漆黒(ベスティア・)(ピストーラ・デル)魔獣砲(・シュヴァルツ)〟‼‼‼‼」


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼


 颯太の‶魔獣砲〟は御鬼の‶魔獣砲〟よりもさらに巨大で、瞬く間に黒い光が赤い光を呑み込み、御鬼までも呑み込んでいく。


「頼んだぜ! お前ら」


 颯太はリーナたちに聞こえない声で託すと、立ち上がる御鬼に攻撃を続ける。

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