表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
624/680

624話 『怖さを乗り越えて』

「‶色鬼(しきき)〟は俺が指定した色以外での魔力・神力での攻撃を全て無効化させる無敵の能力。指定できる色は(せき)(せい)(りょく)(おう)()(はく)(こく)の7種類。つまりこの7種類のいずれか1種類のみでしか俺を攻撃できない」


「なるほど、それじゃあさっき黄色を指定してたから今は電気系の攻撃しか聞かないってことなのね」


 スフィアは御鬼(ゲキ)の説明でなんとなく理解し、攻撃手段のない自分が悔しくてたまらない。


「お前らじゃあ誰一人俺に攻撃することはできない。儀式が終わるまで黙って指をくわえて見てるんだな」


 御鬼はそう嘲笑いながら言うと魔法陣を展開させる。その魔法陣からは禍々しいオーラが放たれており、そのオーラは無差別に神力を喰らいつこうとする。


「こいつは‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟の果てしない食欲だ! そこらの人間の持つ神力なんかでは満足しない。莫大な神力を宿している神獣、雀臨(じゃくりん)を生贄に捧げれば、必要な神力がすべて満たされる。それがお前たちの最後だ」


 御鬼はそう叫びながら部下に封印棺(ふういんかん)を持ってくるように指揮する。しかし……


 バリバリバリバリバリバリィィィーーーーーーー‼‼‼‼‼‼


 御鬼が部下から棺を受け取ろうとしたところを、黄色い(いかずち)が襲い掛かる。


 御鬼含め3体の魔獣が直撃し、2体の部下が巨大樹から落下していき、棺も下の枝に引っかかってしまう。


「チッ! また邪魔が入りやがった」


 御鬼は感電した体を魔力で吹き飛ばし、巨大樹に飛び乗るリーナを睨みつけた。


「今のお前には電気しか通らないのなら私しか適任はいないだろ!」


 リーナが御鬼と対面したことに一番驚愕したのはスフィアだった。


「待ってリーナ! あの魔獣だけは危険すぎるわ!」


 心配でたまらない母親にリーナは安心させるためなのか笑顔を見せる。


「大丈夫だよ母上。私は負けない」


「リーナ!」


 スフィアがリーナの方へ駆けつけようとするが、そこをアシュラSコングに阻まれる。


「儀式を邪魔したこと……後悔させてやる!」


「そいつはこちらのセリフだ! 私の大事なものを滅茶苦茶にして、許さない!」


 リーナは御鬼にそう言い返すと、御鬼の棍棒をレイピアで迎え撃つ。


 バチバチバチィィィーーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎


「り、リーナちゃんが御鬼の攻撃を防いだにゃ! すごい力持ちにゃ!」


 ミリファは‶第一幹部〟の剛腕による一撃を防いだことに驚く。


「いや、あれは神力の強さによるものよ」


 ロゼはリーナの今までの戦いを思い出しながら分析する。


(颯太君と出会ってからリーナの成長速度は著しいものだった。でもそれは今に始まったことじゃなかったわ)


 ロゼの記憶の中から幼少期時代のリーナの姿が映し出される。





 ――‶マリアネス王国〟の学校にはいくつもの初等学校、中等学校が存在し、そのエリートたちが高等学校である、‶マリアネス第一魔法学院〟か‶マリアネス第二魔法学院〟に進学できる。


 私とリーナは初等学校や中等学校の頃から同じ学校に在籍していたから、ずっと前から彼女の存在は知っていた。


 私は公爵家の娘ということもあって初等学校時代からレベルの高い教育を受けてきたけど、学校教育のレベルではそれなりの実力しか身につかない。だけどリーナはその初等学校や中等学校の範囲での教育を受けただけで自分の‶奇才者〟の力に目覚めて著しい成長を遂げた。そしていつの日か教員すら出し抜くほどの強さまで身に付けるようになった。




(今になって思えばあの才能は母親譲りだったのかもしれない)


 リーナ・マリアネスの母親の家系には、かつて‶三強冒険者〟として世界に名をとどろかせていた伝説の冒険者、レームがいる。


 そんな彼の血族であるリーナがわずかな神力しかもっていないなんてことは絶対にありえない。


 だからリーナはあの怪物に立ち向かうことができるのか。いや、違う。才能あるなしに関係なく目の前の敵に立ち向かえるその勇気、それこそが強さなのだ。


「それに対して私はいつまでここで見ているだけなんだ。私だって颯太と共に戦ってきたじゃないか」


 ロゼは御鬼が恐ろしくて立つことができない自分に腹立たしく感じる。


 そんな時、彼女のすぐ横にリーナが巨大樹から叩き落される。


「り、リーナ……」


 ロゼは手を差し伸べると、リーナはその手をすぐに取り立ち上がる。


「誰だって戦いが怖いさ」


「えっ?」


「私だってあいつと闘うのは怖い。体の震えが止まらないくらい怖い。でも私の後ろでは私と同じように怖さと向き合いながら戦っている仲間がいる。そう思えば自然と前に踏み出す力が入ってくるんだ」


 ロゼにリーナの言葉が深く突き刺さる。


(そうだったのか……みんな怖さと戦って立ち向かっているのか。今ここでビビッて動けなかったら戦っている仲間たちの頑張りが無駄になってしまう。そんなこと……死ぬよりもつらい!)


 ロゼは歩き出すリーナの隣に立ち、剣を勢いよく抜く。


「絶海よ! 孤独に唄え! ‶魔導神装〟‼‼‼‼」


 ロゼの周りから海水が溢れ出し、波を起こす。そして海が徐々に引いていくと、そこには美しい人魚の姿へと変貌したロゼがいた。


「こうやってあなたの隣に立つのは久々ね、リーナ」


「ああ、一緒にあの怪物を倒そう! 2人で戦えば怖くない!」


 リーナとロゼはお互いに相槌を打つと、同時に神力を放出させる。


「「かかってこい! 御鬼!」」


「そんな友情ごっこで‶第一幹部(おれ)〟を倒せるほど世の中は甘くねぇぞガキ共!」


 2人の啖呵に怒りを覚えた御鬼はバチバチと禍々しい神力を放出させる。それと同時に先ほどまで発動していた‶色鬼(しきき)〟の効果が消えてなくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ