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623話 『蹴りの王妃』

 激しく燃える倒木の中に大規模なクレーターが出来上がっていた。そしてその中心にはボロボロの翼と焼け焦げた鱗が剥がれ落ちていくフレアドスの姿があった。


「フレアドス!」


 龍長老は部下の心配をし、爆発地点へ駆けつけようとする。しかし、


「よそ見してる暇なんかあるのか?」


 龍長老の閃光で凍らされていたはずのガルーダが脱出し、脱出に使ったと思われる炎の足で顔面を蹴り上げる。


「くたばれ! ‶弾丸の羽根(ダウン・バレット)〟‼‼‼‼」


 ガルーダは巨大な翼を勢いよく動かし、羽根に魔力を込めた弾丸を連射する。


 龍長老も同じように大きな翼を高速で動かして吹雪を起こす。その風に当たった羽根の弾丸は瞬く間に凍らされて無力化される。


「空中戦で俺に勝てると思うか?」


 ガルーダは相殺されることが分かっていたのか、あっという間に龍長老に接近する。龍長老は凍結させる閃光を連続で打ち続けるのだが、ガルーダの飛行能力はそれを圧倒し、一発も直撃せずに龍長老の上をとる。


 そして自分の左足から電気が生じ、バチバチと(いかずち)が走る。


「‶金雷の足武装(ゴールデン・ソックス)〟‼‼‼‼」


 バキィィィーーーーー‼‼‼‼‼‼


 強烈なかかと落としが龍長老の頭部にクリティカルヒットし、勢いよく地面に叩きつけられる。


「ゲホッゲホッ、やはり寝たきりだったからかなりブランクがあるのう……」


 人間の姿に戻ってうまく受け身をとった龍長老は後頭部を触りながら首を動かす。彼の額からは赤い汗が垂れ落ちる。


「さあどうすんだ? 俺達はまだ全然戦えるが、お前のお仲間の龍共はほぼ全滅だ!明らかに分が悪いんじゃねぇのか?」


 龍長老の前にやって来たのはライディアスを倒したアシュラSコングだった。アシュラSコングは手放した剣を拾い集めて鞘に収める。


「ぐぬぬ……」


 龍長老は打つ手がないからか顔をしかめる。アシュラSコングはそんな龍長老の顔を見て嘲笑おうとしたが、


「ガハハハ……っておい!? 何じゃこりゃあ!」


 アシュラSコングは今の一瞬で、鞘にしまった剣を全て凍らされたことに驚愕する。


「‶刀剣王〟と呼ばれてる奴に剣を抜かれてしまったら勝ち目がないじゃろがい! だからこれくらいの班ではほしいところよ!」


「チッ! うざってぇなあ! いいぜ! こんなもん、ハンデにすらならねぇよ!」


 アシュラSコングはイライラをぶつけるように拳を振り上げ、龍長老に殴り掛かる。そのとき……


「せぇいやぁぁ!」


 女の声が舌かと思いきや、強烈な回し蹴りがアシュラSコングに直撃し、3回転ほどしながら尻を地面に着ける。


「この蹴り、神力がまとわれてやがる!」


 アシュラSコング頬に手を当てて女を睨みつける。


「女の蹴りなんかで腰をつかされて随分と情けないんだね! ‶第一幹部〟ってのは!」


「す、スフィアさん!」


 リーナと同じ金色の髪をした美女、スフィアの登場にロゼは驚愕する。


「スフィアだと? 劣種と行動を共にしてるマリアネス王妃が何の用だ!」


「あなたごとき私一人で十分よ! 龍長老様なんかに手を煩わせるわけにはいかないわ!」


「貴様ぁ!」


 アシュラSコングは怒りのボルテージが急上昇し、大きな足で踏みつぶそうとする。しかしスフィアは超速移動で回避し、素早い身のこなしで6本の腕を蹴って弾き、顔面に再び回し蹴りをお見舞いさせる。


「クソが! また神力をまとってやがる!」


「‶超神武装〟……ハァッ‼‼‼‼‼」


 その後何発も蹴り続けてアシュラSコングの動きを完全に封じ込めていた。


「トム君! 今のうちに彼らの治療をお願い!」


「はい!」


 トムはそう返事をし、急いで倒れる龍たちに駆け寄る。トムの後ろには‶魔獣軍〟にやられていたはずの‶ケモビト族〟がおり、トムのところにケガ人を運び込む。


「こいつら……一体なぜ!?」


 倒したはずのケモビト族の復活に一番驚愕したのはガルーダった。そんなガルーダにスフィアは戦いながら説明する。


「‶龍の一族〟の皆さんと敦君には全力であなたたちの足止めをするようにお願いしてました。その間に私とトム君は倒れたケモビト族の皆さんの治療を行っていました」


「治療でここまで動けるようになるわけないだろ!」


「トム君の光魔法はかなり特殊でね!」


 言い返すガルーダに龍長老は便乗して説明する。


「これで全力でそなたらを叩き潰せるわい!」


 龍長老は再び龍の姿に戻り、冷気のオーラを漂わせる。


「チッ、これじゃあいつまでたっても儀式が行えないな」


 御鬼(ゲキ)はこれ以上は埒が明かないと感じ、巨大樹の枝に飛び乗る。


「ガルーダ、アシュラSコング! こいつらの相手は任せたぞこっちで儀式を再開する」


「そんなこと……させるわけねぇだろうが!」


 何と先ほどの爆発の中心にいたはずの敦が立ち上がり、蒼炎の炎をまとわせてクレーターを這い上がって来た。


 そう、彼は爆発の瞬間、フレアドスの大きな体に爆風がさえぎられて、致命傷を避けられたのだ。


「……生きてたか」


「‶蒼炎天(そうえんてん)滅却砲(めっきゃくほう)〟‼‼‼‼」


 敦の渾身の巨大火球が勢いよく放たれる。火球は次第に速度を上げながら‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟の天辺まで飛んでいく。


「あの樹ごと焼き払ってやる!」


 巨大火球は激しく燃えながら御鬼のいるところまで接近する。


 しかし御鬼はそんな攻撃に全く物怖じせず、


「‶色鬼(しきき)(おう)〟」


 御鬼の全身は黄色いベールに包まれる。


 そして巨大火球は御鬼に直撃したと同時に魔力すら残さず消滅させられる。


「……何かしたか?」


「い、色鬼(いろおに)……だと」


 打つ手を無くした敦はその場に崩れるのだった。

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