620話 『龍の猛攻』
「円城敦……‶王の騎士団〟の男が一人増えたところでこの状況は変わらねぇぞ」
御鬼は棍棒を肩に担いで敦にそう言う。
「何言ってやがる? 俺だけでここに乗り込むほど馬鹿じゃねぇよ!」
敦は指を空に突き上げる。すると空から無数の‶魔獣砲〟が豪雨の如く降り注ぐ。
ズドドドドドドォォォォーーーーーーーーン‼‼‼‼‼
激しく‶魔獣砲〟が降り注ぎ、三下の魔獣たちはどんどんと数を減らしていく。
御鬼がゆっくりと空を見上げると、その上空には何と空を覆い隠すほどの龍の軍団が飛び回っていた。
「いつの間に……!?」
「ここにいる龍たちは‶魔獣界〟でも最強の一族だ! 魔力を消して近づくくらい何でもないんだぜ!」
敦はそう言うと、地上に降りてきた炎龍フレアドスに飛び乗る。
「炎龍フレアドス……生きてたか!」
ガルーダはこの事態が想定外だったのかイラついた表情を浮かべる。
「敦殿、ここはわしに任せてはくれぬか?」
一体の老龍は勢いよく降り立ち、ガルーダに向けて冷たい息を吹きかける。
「そんなもん吹き返してやるわぁ!」
ガルーダはそう叫び、暴風で防ごうとしたのだが、冷気はその暴風すら侵食し、ガルーダの羽根先が若干凍り始める。
「やはり‶白夜龍〟の名は伊達じゃねぇな!」
ガルーダは人型の姿に変わると、翼を広げる。すると無数の氷柱が生成され、ガルーダに襲い掛かる。
「ワシが眠っている間に随分と世話になったのう、是非お礼をさせてくれ!」
「いらねぇ世話だ! ジジイはさっさと寝てやがれ! 永遠にな!」
「若造が、いい気になるなよ!」
ガルーダは氷柱攻撃を全て躱しきると、自分の正面へと回り込んでいた龍長老に驚愕する。
「ジジイ、なぜここに!?」
「羽根を凍らされたことを忘れたか!」
ガルーダは龍長老の冷たい息によって羽根を凍らされていたため、飛行速度が激減し、龍長老に先回りされていたのだ。
そして龍長老は自分の指先に冷気をまとわせると、氷の鉤爪が出来上がり、それをガルーダに振りかざす。
ガキィィィィーーーン‼‼‼‼‼
ガルーダは足の爪でその爪撃を跳ね返すも、龍長老の氷に触れた瞬間、ガルーダの足まで凍らされる。
そして龍長老は再び龍の姿へと変貌すると、口を大きく広げ、純白の閃光を生成する。
「‶龍光氷浪閃〟‼‼‼‼‼」
龍長老の放った閃光は龍を模り、直撃した瞬間あたり一帯を氷の世界へと変えてしまう。
「あれが……‶龍の一族〟の力……」
凄まじい量の神力を放出させる龍長老を見てロゼは味方ながら圧倒される。そして腰にぶら下げていた‶危険レベルチェッカー〟の画面が光っているのにも気づくことはなかった。
魔獣名:白夜龍・パイロン
説明 :‶王格の魔獣〟
魔獣界西部の高山地帯に生息する‶龍の一族〟のトップに立つ龍。周囲の龍たちから‶龍長老〟と呼ばれ慕われている。その口から放出される光輝く氷の閃光は、その輝きから夜を訪れさせないともいわれている。
全長 :13メートル
戦力 :500万
危険度:36
その圧倒的な力を誇る龍は何も龍長老だけではない。戦う敵を取られた敦とフレアドスは目の前にいる御鬼に目をつけて、勢いよく飛び出す。そして2つの炎が1つに合わさり、隕石の如く御鬼に衝突する。
「やれやれ、考えなしの特攻か……」
御鬼は呆れた様子を浮かべながら手のひらから氷の壁を展開する。しかし敦たちの熱い炎が御鬼の氷を溶かし始める。
「っ!?」
御鬼はすぐにその場から離れ、炎に包まれた左手を見つめる。
「まさか俺の‶氷鬼〟を溶かしてしまうとはな……」
御鬼はパタパタと手をはたいて火を消し、右手で棍棒を振り回す。
「こいつは少しばかり本気を出さないと痛い目に合いそうだな!」
御鬼はそう言い、棍棒に神力を送り込む。
「チッ! 使えない奴らだな! ‶地獄部隊〟ってのは・……もういい! 俺一人で済ましてやる!」
6本の腕と3つの顔を合わせ持つ怪物、アシュラSコングは‶魔獣砲〟で焼かれた‶地獄部隊〟の魔獣を蹴り飛ばし、封印棺を片手に持つ。
「この儀式さえ済ませれば、もうここに用はねぇ! この無駄な戦いにも終止符を打つことができる」
「無駄なんかではない! この戦いは我々の未来がかかってるんだ!」
声と共に落雷がアシュラSコングに直撃し、思わず封印棺を手放してしまう。
「また邪魔が入ったか! いちいちとうぜぇなぁ、‶龍の一族〟ってやつは!」
アシュラSコングは6本の剣を抜き、自分の目の前を飛ぶライディアスを睨みつける。
「‶魔獣界〟と‶人間界〟を守るためにも、この棺を絶対に捧げてはいけない! 絶対になぁ!」
「だったら守ってみろやぁ!」
アシュラSコングはそう叫び、6本の剣を勢い良く振り上げ、巨大樹の枝を跳ぶ。そしてそのまま空を飛ぶライディアスに斬りかかる。
ライディアスもそれに迎え撃つために全身から電気を放出し、黒雲を生成させる。




