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616話 『託された一歩』

「グハッ! なんて速度だ!?」


 ガルーダは崩れた地面から顔を出して驚愕する。しかしさすが‶第一幹部〟とでもいうべきだろう。族長に頬を蹴り飛ばされたのにもかかわらず、ガルーダの顔面には傷が一切ついていなかった。


 ロゼやミリファはこの光景を見てたいそう驚いた様子を見せてる。


「すごいにゃ~。族長があんなに強かったにゃんて!」


「‶魔導神装〟のケモビト族バージョンってことかしら。それにしても凄まじい身体能力だわ」


 ロゼはそう思いながら‶危険レベルチェッカー〟で族長の能力値を調べる。


 魔獣名:グレンベルマン

 説明 :‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟の劣種で‶ケモビト族〟と呼ばれている。黒い毛並みにまとう紅蓮の炎はあらゆる魔獣の魔力ごと焼き焦がすほどの温度を持つ。制限付きではあるが空中歩行を可能とし、地面に着地するまでの間、空中での歩行数の分だけ空中移動速度が倍増する。

 全長 :2.5メートル

 戦力 :330万

 危険度:34


「すごい! これならあの魔獣にも勝てるかも!」


 ロゼはデバイスに映し出された高い能力値を見て、族長に大きな期待を持つ。すると族長は期待通りに凄まじい速度で空中を跳び回り、飛び上がったガルーダに近づくとさらに急加速して突進する。


「行くぜ! ‶紅蓮パッド!」


 接近した族長はガルーダに肉球を見せると、その弾力から炎の衝撃波を放ち、ガルーダを吹き飛ばす。ガルーダは咄嗟に大きな翼で身を防ぐのだが、風圧に逆らえず吹き飛ばされ続ける。


「クソが! 劣種のくせに調子に乗りやがって!」


 ガルーダは吹き飛ばされた勢いを利用して大きく旋回し、族長に‶魔獣砲〟を放つ。しかし族長は空中を蹴り上げてさらに加速して地面に着地する。

 ‶魔獣砲〟は族長に当たることなく空を切るのだった。


「なるほど、空中を蹴るたびに移動速度が上昇するのか?」


 ガルーダは1度見ただけで族長のスピードのカラクリを見破る。そして少し動揺を見せた族長の表情を見てそれが確信へと変わると、翼を置きく広げ、怪鳥の姿へと変化する。


「ならばこちらもスピードを上げるとしよう!」


 ガルーダはそう言うと翼をグッと勢いよく閉じる。そしてバッ翼を広げると、初速で何百キロもスピードを出し、あっという間に姿が見えなくなってしまう。そして数秒も経たないうちに族長の下へと帰ってくると、その大きな翼を輝かせる。


「マッハの弾丸を受けたことはあるか? ‶弾丸の羽根(ダウン・バレット)〟‼‼‼‼」


 ズドドドドドォォォォーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 羽根が生み出す弾丸の雨を受け、地面がハチの巣のように穴だらけとなる。しかしその寸前に族長は勢いよくジャンプしてその攻撃を間一髪で回避するのだった。その様子を見たガルーダは驚くのかと思いきや、何故か不敵な笑みを浮かべていた。


(見たぞ! この目でしっかりと見たぞ! 奴はこの攻撃を躱す時に何故か数歩空中を蹴っていた。恐らくその歩数の分だけスピードが上がるのならこの謎の行動とつながる。そしてさっき奴は俺の‶魔獣砲〟を躱す時に何故か地面へと回避した。そのまま空中を蹴り続けて加速して俺に反撃すればよかったのに、奴はそれをしようとしなかった。これはつまり、奴は空中での移動歩数に限界があるということだ!)


 ガルーダはIQ高めの推理をすると高速旋回で軌道を変える。そして飛び上がった族長の後を追う。


(‶魔獣砲〟を躱す時に奴は8歩目を跳んで地面に着地した。ということは奴の空中歩行の限界は8歩。それで今奴は俺の羽根をかわすために5歩使った。帰るための1歩を残しておくのなら奴に残された移動はあと2歩!)


 ガルーダがそう考えた瞬間、族長は突然反転し、空中を蹴り上げる。そして族長は炎の鉤爪をガルーダに突き付けて攻撃を仕掛けるのだが、ガルーダはその攻撃が分かっていたようにひらりとよける。


「残念ながらその攻撃は分かっていたぜ! そして躱されたのならそのまま地面に着地しようとすることもな!」


 ガルーダの言う通り、族長はその勢いのまま地面に落下しようとしていたので、着地寸前に羽の弾丸を打ち込んで追い打ちをかける。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


「クッ!」


 族長は着地しようとした場が突然爆発したため、慌てて真上へと飛び上がる。そのとき空中をもう一度蹴り上げていたため、彼に残されたジャンプはあと1回しか残っていない。


「最後のジャンプで地面に着地しようとしてんだな! だが甘い! 最後の着地地点でさっきのように爆発させればお前はもう避けられない!」


 ガルーダはそう言い、族長が最後のジャンプをするのを待つ。このジャンプが着地だと思い込みながら……


 しかし族長はガルーダの予想を大きく超え、なんと最後のジャンプを使ってガルーダに攻撃を仕掛けたのだった。


「何!?」


「俺はお前に意地でも喰らいついてやる! この技の名前の通りな!」


「クソがァ!」


「くらえ! ‶爆炎ファング〟‼‼‼‼」


 ガリィッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 勢いよく飛んだ族長は炎をまとった牙でガルーダの羽根にかみつく。しかし頑丈なガルーダの羽根に歯が通らなかったのだが、


 ボォォォォォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 族長の牙は爆炎を巻き起こし、ガルーダの全身をその炎で包み込む。


「グッ! この、小癪な!」


 ガルーダは力強く振りほどき、族長を空高く振り上げる。


「ガハハッ! ジャンプを無くしたお前はただの無抵抗なウサギだ! 天空から撃ち落とされて無様に果てろ!」


 ガルーダは高笑いをしながら宙に浮く族長を追いかける。その凄まじい速度によってこの魔獣を包んでいた炎も消火される。


 しかし族長はさらに裏をかき、なんと無いはずのジャンプをもう一度行ったのだった。


「誰が8歩までしか動けないと言ったんだ! 俺にはまだ9歩目があるんだ!」


 族長は最大速度でガルーダを横切り、そのまま勢いよく下降していく。


「一度地面に着いて体勢を立て直すしかないな!」


「そんなことさせると思うか?」


「何!?」


 最大速度で落下する族長の横でガルーダの声が聞こえ、そのまま体が地面からかけ離れていく。

 ガルーダはなんと族長があと1歩ジャンプを隠し持っていることを見抜いており、彼が自分を横切った瞬間に高速旋回して族長に追いついていたのだ。そしてガルーダは強靭な足で族長を鷲掴みし、旋回を繰り返しながらどんどんと加速させていく。


「空の旅を楽しもうぜ! 族長さん」


「グアァァ‼‼‼‼」


 ガルーダはそう言い、マッハの領域まで速度を上昇させると、そのまま‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟を取り囲む巨大な崖に直進する。


 そして……


 ガッシャァァァァァーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 ガルーダは崖の寸前で族長を離し、族長はそのまま崖に衝突する。崖は大きく崩れ、族長は崩れた岩石の下敷きとなる。

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