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613話 『劣火の強襲・前編』

「ぞ、ぞくちょぉぉぉーーー‼‼‼‼‼‼‼‼」


 ミリファは激しく動揺し、敵がいるのにもかかわらず族長に駆け寄ろうとする。しかし御鬼(ゲキ)の視界に入った瞬間、彼女の動きは完全に止められ、やられる前の族長と同じ展開になる。


「お前から攻撃を仕掛けてきたんだ。悪く思うなよ」


 御鬼は棍棒を取り出し、ミリファの方へと近づく。その棍棒からは凄まじい量の神力が溢れ出す。


「ミリファ‼‼‼‼」


 リーナはミリファのピンチに思わず飛び出そうとするが、ロゼに止められる。


「落ち着きなさい、リーナ!」


「これが落ち着いてられるか! ミリファが!」


「今飛び出しても奴に動きを止められるだけだよ!」


 ロゼにそう言われ、リーナは感情の昂ぶりをグッと堪えてその場にとどまる。


「だからあの人に任せましょう。私達の先生に!」


 ロゼの目線の先には光の速度で飛び出し、棍棒を振り上げる御鬼に接近する者がいた。


「敗者に居場所なし……死ねぇい!」


 御鬼は最後に残酷な一言を残し、(いかずち)のまとった棍棒を振り下ろす。そのとき……


 ガキィィィィーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 光の速度で現れた男の剣によってその打撃は防がれ、激しく火花が散る。


「フ……フリック先生!」


 ミリファは命の危機を感じていたため、思わず大粒の涙がこぼれ落ちる。


「すごいですね。‶ケモビト族〟の料理は……。これを食べてなかったら今の攻撃に耐え切れずに木端微塵になってたところだよ!」


 フリックはそう言い魔力を放出し、目の前にいる御鬼の棍棒を押し返す。


「やるじゃないか。‶人間界〟も捨てたもんじゃないな」


「い、一体何を!?」


 フリックは思わず聞き返すのだが、突如地面に無数の亀裂が生じ、巨大な奈落が一瞬で出来上がる。地面に足を着けていたフリックとミリファはその大きな落とし穴に吸い込まれそうになるのだが、咄嗟にフリックは光のステップで空中移動し、ミリファを助け出す。さらにそのまま族長も拾って帰る。


「ぬおぉぉ! 敵の死体を奪われた!?」


 フリックは見張っていたアシュラSコングの隙を狙って族長を助け出し、アシュラSコングは目の前にいたはずの族長がいないことに驚く。


「馬鹿が、顔が3つもあって何故気づけない!」


 御鬼はアシュラSコングの失態に舌打ちし、フリック達に追撃を仕掛けようとする。


「返せこの野郎どもがァ‼‼‼‼‼」


 そう言ったのはアシュラSコングの方であり、彼の正面の両目から紅い光が放たれる。魔獣の大技、‶紅王(ベスティア・)(ピストーラ・デル)魔獣砲(・ロート・カイザー)〟である。


 アシュラSコングは今の閃光を敵味方関係なく放ったため、御鬼はその攻撃に当たりそうになり、思わず回避する。


「何のつもりだ!? アシュラ!」


「うるせぇ! 受けた屈辱は倍にして返す! お前も消し飛んでくれたら一石二鳥だったんだがな!」


 ‶魔獣砲〟はフリックのいるところに直進し、フリック達はその光に呑み込まれるのかと思いきや……


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 彼らの背後から流れ星のように無数の魔獣砲が放たれ、‶紅王の魔獣砲〟と衝突する。


 激しい爆発でしばらく視界が煙に覆われる。


 そしてたちまち煙が静かに消えていくと、そこには百何十人もいるケモビト族がフリック達の前に立っていた。


「今の‶魔獣砲〟はお前たちのか?」


「チッ! 人間みてぇな顔をした劣種が俺たちに盾突きやがって!」


 アシュラSコングは6本の剣を構えて苛立ちの顔を見せる。格下の存在に自分の‶魔獣砲〟が撃ち防がれたのがよほど悔しかったのだろう。


「あまり俺たちのことを下に見ないことだな。もう俺たちはお前たちの家畜なんかじゃない!」


 フリックの肩を借りながらゆっくりと族長が立ち上がる。


「族長! ご無事で!」


 ミリファやケモビト族たちは族長が立ち上がったことに喜びの声を上げる。


「こいつは謀反と捉えていいんだな?」


「謀反じゃないにゃ! にゃあたちはお前たちなんかを敬ったりしてないにゃ! これは最初で最後の復讐劇にゃ!」


 御鬼の言葉にミリファが激しく反論し、鋭く尖らせた鉤爪を見せる。そしてケモビト族も一斉に武器を構える。


「突撃にゃぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼」


「殺れ」


 ミリファと御鬼の合図とともにケモビト族と‶地獄部隊〟の軍勢が衝突する。






 この戦いは後に‶劣火(れっか)強襲(きょうしゅう)〟と呼ばれるようになり、‶魔獣界〟の歴史に刻まれることとなるのだった。

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