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611話 『一矢報いるとき』

 ――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 突如外の方から龍の叫び声が響き渡る。ライディアスが何事かと外へと駆けつけようとするのだが、一体の龍が血まみれの状態で大広間へと突っ込んでくる。


「おい、何があった!?」


「……人間かと思ったら魔獣で……」


「一体何を言って……」


 ライディアスはポツリとぼやく同胞に疑問を抱くのだが、大広間に侵入してきた生物を見て確信に変わる。


「なるほど、こんな奇妙な生き物は見たことないな」


「フフフ、驚きましたか? 彼らは私が開発したこの魔獣の力を宿した飴を取り込むことで‶魔人〟へと進化した存在なのです」


 ラディーゴは怒るパイロンを力で薙ぎ払い、ライディアスに説明する。


「ならばその強さを試してみてはいかがですか?」


 ラディーゴはそう言い魔力の波動で天井と壁を一瞬で吹き飛ばし外の様子を見せる。

 するとそこには大勢の魔獣の力を持った人間が‶龍の一族〟を圧倒していく姿がそこにあった。


「貴様ら! 我が同胞に何をする!」


 ライディアスは怒りの感情を爆発させて‶魔人〟の集団に突っ込んで行く。


 さすが‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)


 龍たちに致命傷を追わせた‶魔人〟たちを次々とかみ殺していき、落雷で消し飛ばしていく。


「やはりその辺で拾ってきた‶獣種(ビーシス)〟ではこの程度ですね。‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟級には全くかないませんでしたか」


 ラディーゴはさも結果が分かっていたかのように冷静であった。ライディアスはそんな彼の態度が気に入らず、


「次は貴様が血を見る番だ! 覚悟しろ!」


「だからこそあなた方の持つ‶獣種〟が必要なのです」


 ラディーゴは即座に‶反射〟の力を発動してライディアスの落雷を跳ね返す。そしてラディーゴの右足から繰り出される攻撃力の倍率を何百倍にも引き上げ、ライディアスを力の限り蹴り飛ばす。


「グゴォォォ‼‼‼‼‼」


 ライディアスはまさかの一撃でダウンし、先ほどまでの魔力が嘘のように消えていく。ラディーゴは‶飛翔〟の能力で天井よりも高く飛び、ワインレッドの閃光を生成する。


「な、なぜ人間であるお前さんが‶魔獣砲〟を!?」


「この技は別に魔獣だけのものじゃないんですよ。これは自身の魔力を大量に放出して生み出す魔力砲。つまり魔力量が高ければ誰だって使うことができるんですよ」


 ラディーゴはパイロンを見下しながら魔力をさらに放出させる。


「さらに私の‶倍増〟の能力で‶魔獣砲〟の破壊力をさらに倍増させれば……この里は終わりですね」


 ラディーゴの能力によってワインレッドの閃光は何倍にも巨大化し、一気に撃ち放つ。


 パイロンや他の龍たちも負けじと‶魔獣砲〟を放って迎撃をするのだが、1人の怪物じみた強さに一矢報いることも出来ずに噴火の如く山が爆発する。






 ――現在


「ラディーゴという男は自分の部下ごとこの里を破壊し、フレアドス達が遠征から帰ってくる頃には我々が大切に守っていた‶獣種〟を根こそぎ奪われていた。‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟が生まれる可能性のある種も奪われていた」


 パイロンが話し終えるとスフィアは涙をぼろぼろと流していた。


「あの時までは‶魔獣軍〟の連中に一歩たりとも踏み入れさせないほどの最強の里だったんだが、私やライディアスが眠っている時を狙って‶魔獣軍〟は侵略の限りを尽くした。フレアドス一人の力じゃ防ぎきれず、復興すれば再び破壊されの繰り返し。もうこの里はおしまいだと思っていたそんな時にお前さんらが現れたんじゃ」


「許せない。そのラディーゴって人間を私は絶対に許せません! いつか私がこの手で懲らしめてやりたいです!」


 スフィアは悔し涙を浮かべながら拳を握り締めたそのとき、大広間のふすまが勢いよく開く音が聞こえる。


「奴ならもう死んだ! ある英雄によって奴の野望は撃ち滅ぼされた!」


 スフィアは慌てて振り返ると、そこには汗水垂らす敦の姿があった。


「英雄? それは一体誰なの」


「そいつの名は雨宮颯太! あいつの活躍があってラディーゴが率いていた組織、‶魔人ラボ〟は崩壊した。だがそんな英雄でも‶魔獣王〟にボコボコにやられて、現在奴らの城に捕まっている。だから俺たちは颯太を助けるために‶魔獣界〟に来たんだ」


「……敦君」


「それに、一人で先走ったあいつをぶん殴らねぇと気が済まねぇんだよな!」


「ほぇ?」


 スフィアは敦の言葉に思わず呆然とした顔を浮かべる。

 そんな敦の隣には彼と修業していたフレアドスがおり、ずかずかとパイロンの下へと歩いていく。


「‶龍長老〟様、我々は敦殿たちに命を……里を救われました。ですので今度は我々が彼らの力になるときです」


「そうじゃな、お前さんの言う通りじゃフレアドス。ずっとお前さん一人で守り続けていたんじゃ。奴らに対する恨みも相当持ってるじゃろう」


 パイロンはそう言い重い腰を上げる。そして屋敷を出ると、修業していた龍たちに向けて声を張り上げる。


「皆の者よ! よぉーく聞けぇい! これから我々は憎き‶魔獣軍〟に討ち入りする! 戦う意思のある者は爪を突き上げろ!」


「「「「オォォォォォーーーー‼‼‼‼‼‼‼」」」」


 久々に聞く‶龍長老〟の命令に龍たちから歓喜の声が上がり、一斉に鉤爪を上に突き上げる。




 そして‶龍の一族〟はスフィアたちを背中に乗せ、‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟のある中央の大地へと向かう。

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