表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
605/680

605話 『追い、追われ』

「ハァ……強さの証明のためには敵味方見境なく……か。やっぱお前らをここで見逃すわけにはいかねぇようだな!」


 颯太はそう呟くと何故か2本の刀を鞘にスッと収める。


「どうした? 負けを認めたのか? だがもう遅い!」


 ガルーダの言う通り、灼熱の突風は颯太の目前まで迫っており、普通の人間であればその距離だけで骨すら残さず焼き払われるだろう。しかし颯太はそんな突風にも一切おののくことなく、城の5階から勢いよく身を投げ出す。そして灼熱の突風のところへと落下しながら左手に邪神力をフルパワーで送り込む。すると漆黒のオーラが次第に純白のオーラに生まれ変わり、神風と呼ぶにふさわしい旋風が颯太の腕の周りを吹く。


「‶覇衝旋風(はしょうせんぷう)〟‼‼‼‼」


 ドォォォォォォォォーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


 旋風から生み出される風の衝撃波はガルーダの灼熱の突風の芯を貫いて打ち消し、そのまま下にいる本人を呑み込む。


 激しい爆発と共に大陸が陥没し、木々と共にガルーダは奈落の底へと落下していく。


 その後颯太は自分の左手を握ったり開いたりしながら状態の確認をしていた。


「多少反動があるが、前みたいに使い物にならなくなるわけじゃなさそうだな……やっぱここ数日の連戦が俺をさらに強くしたようだな」


 ジャグバドスの硬い鱗に唯一傷をつけられた‶覇衝旋風〟……以前までそれは1回の使用で腕の骨をいくつも損傷させるほど自分への負担が大きかった技だった。

 しかしジャグバドス、ケルベロス、ブリズリーと言った強敵との戦いを繰り返すうちに自身の強度が格段に増し、軽度の筋肉痛にまで反動を軽減することができたのだ。


 そして颯太はまだ動かせる左手から漆黒に満ちた閃光を生成させる。すると容赦なく陥没した奈落に向けてその閃光を発射する。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 人工的な奈落はその一撃で穴がさらに広がるほど大爆発を起こすのだが、全く手ごたえはなかった。

 理由はただ一つ、ガルーダは底にはもういなかったからだ。


「さっきの‶覇衝旋風〟……やっぱまだ完成とは程遠かったか」


「お前の攻撃が弱かったのではない。俺の耐久力が尋常じゃなかっただけだ」


 今度は颯太の頭上にガルーダがおり、颯太の攻撃をまともに受けても一切その体に傷はついていなかった。


「だがお前は俺に力押しで勝った。その事実は認めざるを得ない。だからお前だけは絶対にこの手で始末してやる! 俺は俺より強い存在を絶対に認めない」


 ガルーダはそう言い神力をさらに放出させようとする。


 しかしそのとき、一本のテレパシーがその体を引き止める。そしてガルーダは颯太には聞くことのできない念話で会話を始め舌打ちをする。


「悪いが勝負はお預けのようだ。命拾いしたな!」


「ハァ!? 誰が命拾いしただって? それはお前の方だろうが! それに俺がお前を見逃すわけねぇだろうが!」


「ほう? まだ俺と戦う気か? だったらついてこい! 絶望の処刑場でお前とケリをつけてやる!」


 ガルーダはそう言うと翼を大きく広げ、‶万物の世界樹(ユグドラシル)〟がある方へと飛び去って行く。


「待てっ!」


 颯太は一瞬呆気に取られてしまったため反応に遅れ、慌ててガルーダの飛び去った方へと走り出す。





 ――そのころ‶天空部隊・第三幹部〟のシルクスターは狂喜しながら‶情報送受信室〟を目指すユマを追いかける。そしてそのシルクスターをヘーボンが追う。


「あの(むすめ)王女なんやてな! つまりスターってことやろ? いらんねん! スターは2人も」


 シルクスターはそう言いユマが足止めのために壁を壊して作り上げた障害物を全て糸で払いのける。


「どうやってぐちゃぐちゃに汚したろかな? 全身ミイラにして判別つかんようにしたろか! 楽しみやなぁ!」


 独特な口調で呟くシルクスターの影がヘーボンの視界に映る。

 さらにヘーボンは感覚を研ぎ澄ませており、目の前の魔獣の呟いていることが全て耳に入っていた。


「絶対に……絶対にユマさんだけは守って見せる! あんな奴なんかに指一本触れさせてたまるもんか!」



 そしてユマは大きな扉の前に立ち、センサーに手をかざして邪神力を放出する。するとセンサーが認証し、頑丈な扉がゆっくりと開く。


「あの扉が動いたやと!? あれは‶魔獣王〟様しか開けられないとちゃうんかったか!」


 シルクスターはそう言いながら驚愕し、同時に取り返しのつかないことが起きるのではないかと予感する。


「ここが……‶情報送受信室〟‼‼‼‼」


 ユマは大量の機械が密集している部屋に入り、どれを触ればいいのか迷っていた。しかしそんなにもたもたしていれば追っ手が迫ってくるのも時間の問題だ。


「何曝しとんじゃこの小娘がぁ!」


 ゆっくりと閉まろうとする‶情報送受信室〟の扉を自慢の絹糸でガッチリと固定させ、機械に触るユマにワインレッドの閃光を撃ち込もうとする。


「ぐちゃぐちゃはもうやめや! 木端微塵にしたる! 喰らえ‶紅王(ベスティア・)(ピストーラ・デル)魔獣砲(ロート・カイザー)〟‼‼‼‼‼」


「させるかぁぁ‼‼‼‼‼‼」


 突如正面にヘーボンが現れ、神力を放出した剣でシルクスターの胴に打ち込む。


「‶神剣真覇衝(しんけんしんはしょう)〟‼‼‼‼‼‼」


 ズバァァァーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 神の力をまとった一撃は、7メートルを超える巨蝶の胴を見事に真っ二つに斬り裂くのだった。


 そして斬り裂かれたことでバランスを失ったシルクスターはそのまま‶魔獣砲〟を地面に打ち込み、ユマにその光が届くことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ