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603話 『怒りの重み』

 ユマと静香は‶情報送受信室〟の目の前までたどり着いていた。このまま走ればすぐにでも目的の部屋の扉を開けられる。


 しかしそんなにことは上手く進むはずがなかった。


 ユマが先頭で走っている最中、突如として小刀が彼女の走る寸前に突き刺さる。


「ッ!?」


 あと一歩早く進んでいれば、頭頂部にぶっ刺さっていたのは間違いない。その姿を想像したユマはゾッとする。


「おやおや外してしまったか? まぁわざと外したんだがな!」


 誰もいないはずの空間からゲコゲコと不気味な笑い声が響き渡る。


「どこに隠れてんのか知らないけど、さっさと姿を見せなさ~い!」


 静香は広範囲に重力魔法を放ち、隠れている敵をあぶりだそうとする。特に天井に身を潜めている敵には彼女の魔法はよく効く。


「ゲコォォォォォ‼‼‼‼‼‼」


 再びカエルの鳴き声……しかし今度は笑い声というよりは叫び声が響き渡り、天上から地面に何かが落下する。そして落下の衝撃と共に魔力と身にまとっていた色がデフォルトの状態へと戻る。


「なるほど~、魔力と体の色をその環境に合わせて変化させることで気配を完全に消していたんだね~。でも姿と種が分かったからもう意味ないよね?」


「ぐうぅぅぅ……無念」


 カエル型の魔獣はそのままカエルのように伸びており、あっさりと負けを認める。


「ユマっちは先に行ってて! 私はこの魔獣を捕縛してから追いつくから!」


「わ、分かりました……」


 ユマは心底不安そうな顔を浮かべながら走り出す。彼女は伸びているカエルから計り知れないほどの魔力量を感じ取っていたため、このまま終わりそうにもないと思っていたのだ。


「さてと……私急いでるからおとなしく捕まっといて……ね」


 ビュン‼‼‼‼‼


 風を切る音が耳元を横切る。静香は咄嗟に首を傾けてかわすのだが、長い舌が彼女の頬をかすり、ツーと血が垂れる。


(なんて速さの舌なの~!? 颯太っちの斬撃を普段から見てなかったら確実に額を貫かれてたかも!)


「すごい反射神経だな! ああ、そうか! 重力を懸けられてたから少し速度が落ちたのか!」


(あれで落ちているだと!? というよりもなぜ動ける!?)


 静香は激しく動揺し、いつものようなユニークな口調が無くなっていた。


「ゲコココー! 油断こそ暗殺の好機だからわざとやられたふりをしたけど、やっぱ完全に油断させるような演技をするのって難しいな!」


「だから何で動けてるんだよ~!」


 静香はそう言い、重力魔法をかけた重みのある斬撃を放つのだが、カエル魔獣は軽い身のこなしでバック転をしてかわす。そして無駄のない動きで宙に浮きながら小刀を連続で静香に投げつける。


「こんなもの!」


 静香は刀で全て払いのけるのだが、カエル魔獣はすぐに彼女のパーソナルスペースに侵入し、長い足で彼女の頬を蹴り上げる。そして若干長さが伸びる手足に翻弄されながら静香は打撃を打ち込まれ続け、最後に強烈な回し蹴りで吹き飛ばされて行く。


「ガハッ‼‼‼‼」


「何で動けるかって聞いてたよな? そりゃ当然だろ? 俺は‶魔獣軍・刀剣部隊〟所属の‶第三幹部〟アサシンフロッグ! そしてお前たちが恐れる‶王格の魔獣(ロイヤルビースト)〟でもあるからな!」


「ろ、ロイヤルビースト!?」


「俺はよく人間界で姿や魔力を隠して暗殺の任務をしたりするが、殺した数はざっと数えて1万はいるな!」


「1万だと!?」


「よくどっかの国王や有力貴族の謎の死とかの内容の新聞を読んだりしねぇか? そいつの正体こそが俺ってわけ!」


「確かにそれがきっかけで各国で紛争や権力争いなんかが起こってたりしてたね。それでその調査依頼とか設け問ことがあるけど、一つも解決できなかったね。なるほど、つまり君を捕まえればすべて解決できて依頼達成ってわけか!」


「へへっ、そういうことだ」


「じゃあおとなしく捕まってもらうよ~!」


 静香はそう言って立ち上がると、刀をアサシンフロッグに突き付ける。


「何故おまえにこのことを話したか分かるか? どうせ殺すからだよ!」


 アサシンフロッグは下を勢い良く伸ばし、レーザー光線のように静香の体を貫こうとする。しかし静香は先程よりも早く反応し、今度はしゃがんで回避してそのまま前のめりで走って接近する。そしてそのまま全身に桜がまとわれ、‶魔導神装〟を発動する。


「‶居合・千里斬〟‼‼‼‼」


 静香はライフル銃の如く速い斬撃をアサシンフロッグを一刀両断しようとするが、素早い身のこなしと器用な足さばきで、小刀を投げつけて相殺させる。そして両手から小刀を取り出すと、それをハサミのようにして首元を刃紋で囲む。


「‶首狩り(ばさみ)〟‼‼‼‼」


 チョキン‼‼‼‼


 彼女の……後ろ髪は彼女の勢いのある回避でフワッとなびいたことにより、束ねている根元から斬り落とされる。


 彼女の長い黒髪が虚しく散っていく。


「よくも……よくも大事な髪の毛をォォォ‼‼‼‼‼」


 誰一人としてみせたことの無い彼女の怒りはそのままエネルギーとなり、凄まじい量の神力を生み出す。突如発生した莫大な神力の波動によってアサシンフロッグは宙へと舞い上げられる。


「‶天刑・喰羅靡斬(グラビざん)〟‼‼‼‼‼」


 彼女の怒りの斬撃は天から垂直に落下し、ギロチンのようにアサシンフロッグに落とされる。


 ズドォォォォォーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼


 重力のギロチンはアサシンフロッグの体に深く食い込み、その破格の威力によって床が耐え切れなくなり、5階から地下の空間まで叩き落された。

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