60話 『各地に出現する強魔獣』
――マリアネス第一魔法学院
周囲の魔素の異変にいち早く気づいたのはソマリだった。
学校の周辺から空間のゆがみが生じてきて、そこから亀裂が走って、中から数えきれないほどの魔獣が現れた。
そして出現した魔獣の平均危険度は10を超えていた。
「さーてと侵略を開始するか! って何だよ! 出迎えてくれたのは……女1匹かよ!悪いことは言わねえからさっさと消えな!」
1体の魔獣がシッシッと失せるように促していたが、その態度がソマリの癇に障って、
「あなたたちの方がさっさと帰った方がいいわよ! 凍り付く前にね! ‶フリーズワールド〟‼‼‼」
ソマリは魔力を上げて、半径400メートルほどを凍らせた。
空間の割れ目から出現した数十体の危険度10越えの魔獣たちは凍結して、その後に氷と一緒に崩壊した。
「雑魚たちのエラそうな態度ほど腹が立つものはないわ!」
ソマリは髪をかき上げながらその場を立ち去ろうとしていた。
しかしその時、巨大な青白い閃光がソマリの方へ飛んできた。
「よけきれない!? ‶アイスウォール〟‼‼」
ソマリは咄嗟に氷の巨大な壁を生成し、青白い閃光を防ごうとした。
けれども、青白い閃光は簡単に氷の壁を破壊して、ソマリに直撃した。
「いたたたたあ! 何て威力の‶魔獣砲〟なの!」
吹っ飛ばされて、しりもちをついたソマリは立ち上がってほこりを払いながら文句を言った。
「ウホホホホ! 俺の‶魔獣砲〟を受けてケガ一つしないとは大したもんだな!」
空間の割れ目からドラミングをしながらゴリラ型の魔獣が現れた。
ソマリは‶危険レベルチェッカー〟を起動させて、ゴリラ型の魔獣の危険度を計測した。
魔獣名: Aゴリ
特徴 : Bゴリよりも巨大で右腕の剛腕から繰り出されるナックルは山を粉砕すると自分で言っている。
体長 : 6~7メートル
危険度; 23
「Aゴリ? ……確か合宿場に現れたのはBゴリだったような……」
「そうだ! 合宿場に現れたBゴリは俺の部下だ! そして俺はそのBゴリよりも上位の存在であるAゴリだ‼‼ まあ俺のことはアルティメットゴリラとでも呼んでくれ‼‼」
Aゴリはそう言ってドラミングしながら興奮していた。
Aゴリの胸をたたく音は凄まじく、そして爆風を生み出しているため、ソマリは我慢できずに耳を塞ぎ、吹き飛ばされないようにしていた。
「さてと! 調子が出てきたところでやりますかねえ!」
Aゴリはそう言ってドラミングをやめ、超速移動をしてソマリに殴り掛かった。
ソマリはAゴリの速度に驚いて、彼女も超速移動をして攻撃を上手く躱した。
そしてAゴリのパンチによって生み出された衝撃は、あたりの建物や木々を吹き飛ばしてしまった。
「な、なんて威力なの!?」
「ウホホホー! どんどん行くぜー!」
Aゴリはノリノリでそう言いながら次々にパンチを繰り出した。
ソマリも必死に躱しているのだが、周囲の被害のことも考えて、
「このままだとこの町が壊滅してしまう! その腕を封じないと! ‶フリーズキャノン〟」
ソマリは剣を納めて、両手から冷気の砲弾を飛ばしてAゴリの両腕を凍らせた。
「これでさっさとあのゴリラの心臓を一突きにしなきゃ!」
ソマリは剣を抜いてAゴリに接近したのだが、Aゴリの様子がおかしかったのですぐに立ち止まった。
「ウホッ! ウホッ! この程度で俺の動きを封じたと思うなよ! ‶アルティメットファイアー〟!!!」
Aゴリは体全身から炎が湧き上がって、両腕の氷をみるみると溶かしていって、最終的に氷を破壊した。
「ご、ゴリラが燃えている!?」
「ウホホホホー! ここからは俺のダンスに付き合ってもらうze!!!」
驚くソマリに燃え上がるAゴリはノリノリでジャブをしながら構えていた。
リーナ様護衛隊の3人が校庭を歩いていたら、とてつもない魔力が出現して空間が割れ始めた。
「「「何!? あれ……」」」
3人はその魔力を感じ取って、驚愕していた。
割れた隙間を上半身大男で下半身馬の魔獣がこじ開けた。
「女子の匂いを辿り……私、参上!」
上半身大男て下半身馬の魔獣は決めポーズをして3人にアピールをした。
「「「き、キモイ!!!」」」
3人はひきつった顔をしてドン引きしながら‶危険レベルチェッカー〟を起動させた。
魔獣名: ジェンダーウロス
特徴 : ケンタウロス型の魔獣で魔獣界の中でも特に気持ち悪い部類に属する。
女性のフェロモンを感じ取って魔力を上げる。
体長 : 2〜3メートル
危険度: 24
この説明を読んで3人はより一層ジェンダーウロスにドン引きしていた。
「おおう! そのドン引き……イイ!!!」
ジェンダーウロスは3人の引き顔に興奮して魔力を上げた。
「俺の気持ち! 受け取ってー!!! ‶LOVEタックルー〟!!!」
ジェンダーウロスはとんでもない速度で3人に突進してきた。
「キャー!!!!! 来るなー!」
エリーサは絶叫しながら‶ファイアショット〟の詠唱をして連射していた。
しかしジェンダーウロスのピンク色の魔力によって掻き消されていた。
「も、もうダメだ!」
キャシーがそう諦めたとき、
「‶アクアランチャー〟!!!」
と奥から水の塊が凄まじい速度で飛んできてジェンダーウロスの顔面に直撃してジェンダーウロスをぶっ飛ばした。
「な、何だ!?」
ジェンダーウロスが何が起きたのかよくわかっていない状態でいた。
「みんな! 大丈夫?」
3人の前にロゼか現れて、彼女は3人に怪我があるかどうかを確認していた。
「大丈夫だよ〜、誰も怪我していないよ〜!」
ミーアはロゼが来たことに安心していつもの調子に戻った。
「だが、あいつ見ただけで分かる。強いってな! だからみんなの力が必要になる! 力を合わせて奴を倒そう!」
「「「了解!」」」
ロゼの提案に3人は賛同して剣をジェンダーウロスに向けた。
ジェンダーウロスの目眩が戻り、ロゼを見たときに一瞬にして彼の目がハートマークになった。その顔は中年オヤジのスケベ面そのものだ。
「ウォォォォォ!!!!! 美しいーーーー!!! 彼女のフェロモンを俺の男性ホルモンが受信!!! 興奮度MAX!!!!! 俺の魔力大幅UP!!!!」
ジェンダーウロスはそう狂喜しながら、魔力を上げまくった。