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59話 『冒険者の死に対する感情』

 颯太とリーナは慎重に壊滅した街を探索していたら沢山の冒険者達がボロボロの状態で倒れていた。


「颯太? この人たち、生きてる?」


「ああ、生きている人もいれば、心臓が止まっている人もいる!」


「う、嘘!?」


 リーナはこの状況を受け入れることが出来なかった。


「死んだやつは‶ゴールドランク冒険者〟が10人、‶シルバーランク冒険者が〟25人、‶ブロンズランク冒険者〟が30〜50人ぐらいか」


 リーナは何食わぬ顔で死んだ冒険者を記録している颯太に我慢できなくなった。


「何してんの?」


「これか? これはこの事件の被害にあった冒険者を一覧にしているんだよ。そしてこれを冒険者ギルドに報告しに行かねえといけないんだ」


「そんなことを聞いているんじゃない! なんであんたそんなに冷静でいられるんだよ!」


「リーナ!?」


 リーナの叫び声に颯太は驚いてリーナの方を振り向いた。


「この人たちあんたと同じ冒険者だよ! 同じ冒険者がこんな風にされてあんた、悔しくないの?」


「悔しいに決まってるだろ!!!!!」


 颯太がぶちまけた一言にリーナは言葉を詰まらせた。


「こいつらの中にはなあ、昔、俺と酒を酌み交わした奴らだっているんだ! 冒険者にとって死は常に目と鼻の先なんだよ! 俺も昔はパーティに加わってダンジョンに潜っていたことだってあったんだ。だがそのダンジョンで当然犠牲者が出てくる。ときには俺一人だけ生き残って帰ってきたことだってあるんだ。そして毎晩俺の夢の中で仲間が死んでいくシーンが繰り返し流れてくるんだ。それで毎回俺の弱さを知らしめさせられるんだ。だから冒険者は仲間の死を恐れたらいけないんだよ! この失敗をバネにして誰も死なせないと自分に言い聞かせなければならないんだ!」


 颯太はリーナに自分の弱さを八つ当たりしているかのように訴えていた。

 そしてリーナも自分の放った無責任なことを言ったのに後悔した。


「ごめん、なんにも知らなく怒鳴って……」


「謝るのはこっちの方だ。言い過ぎた……」


 2人が互いに謝ったあと数秒沈黙した。


「で、でも生き残っているやつがいるんだ。しかもこんなに! これは奇跡だぜ!」


 颯太が無理やりに明るい表情をしながらリーナに言った。


「そ、そうだよね! まずは生きている人を急いで救護しなければな!」


「ああ、それでお前にも手伝って欲しいことがあるんだ!」


「一体何を手伝えって言うのか?」


 キョトンとしているリーナに颯太はニヤッと笑ってリュックサックの中から大量の回復ポーションを出した。


「一応100個ぐらいは持ってきた。これを負傷者にかけるんだ。そして回復したら何があったのかを聞こう!」


「うん!分かった!」


 リーナは颯太の言うことに頷いて回復ポーションをたくさん抱えて負傷者の方へ走って行った。





 ――1時間後


 最初にポーションをかけた冒険者が目を覚ました。


「私は確か魔獣の群れにやられたはずじゃ?」


 意識を取り戻した30代の男は何がどうなったのか理解出来ていない状態だった。


「魔獣達はみんな退散した。それよりも久しぶりだな! ベンザー!」


「む! その声は雨宮か! 久しいな!」


 ベンザーは久しぶりに会った颯太を見て安心した。


「ベンザー、それよりもこの街で一体何があったんだ? お前と同じ‶ゴールドランク冒険者〟が何人も死んだんだ!」


 颯太の話を聞いてベンザーの顔は真剣になった。


「あいつらはとんでもない強さだった。とんでもない強さのうえに知能もある。だから危険度10台の魔獣でも知能があって連携をとるからなかなか手強かった。だが問題は‶幹部補佐〟と呼ばれている連中だ!」


「「‶幹部補佐〟?」」


 颯太とリーナは聞いたことの無い単語に首を傾げた。


「‶幹部補佐〟はとんでもない強さだった。危険度も20を超えていた。そいつらが数体現れた瞬間に冒険者の方が有利だったはずの戦況が一変したんだ。その連中らの中の一体が『‶龍斬り〟はどこだー!!!』って言いながら暴れていた」


「やはり奴らの狙いは俺だったのか!」


 颯太はゴン! と地面を叩いて怒っていた。



 颯太たちの会話を後ろから盗み聞きをしていた魔獣がいた。


 魔獣名: キラーホブゴブリン

 特徴 : 普通のゴブリンよりも倍以上の大きさで人間の武器を殺して奪って使用する。

 体長 : 2~3メートル

 危険度: 17


「まずい! あいつら俺たちのことを聞き出している! 早くヤツらをぶっ潰さねーと! だがこれが成功したら俺もレオメタル様から‶幹部補佐〟の役を貰える! ウシシシシー!」


 キラーホブゴブリンはニヤニヤと自分が‶幹部補佐〟なった姿を思い浮かべながら颯太たちを暗殺しに行った。

 しかし颯太はすぐに魔力に気づいて後ろを振り向いた。


 バギッ! ボガッ! ドゴッ! ベキベキッ!


 颯太はキラーホブゴブリンの剣を奪って血まみれになっているキラーホブゴブリンの首に剣を突きつけて脅迫していた。


「‶幹部補佐〟ってなんなんだ!」


「し、しらね〜! ヒューヒュー」


 キラーホブゴブリンはしらばっくれて下手くそな口笛を吹いていた。

 颯太は笑っていたが、目は完全に怒っていた。

 そして舐めた態度をとっているキラーホブゴブリンの首に剣を当てて、


「早く答えろよ! さもないと首本当に飛ぶぞ!」


と言った。キラーホブゴブリンの首から若干血が流れていた。


「ひぃぃー! ‶幹部補佐〟って言うのは戦闘力の高い魔獣や有能な魔獣が幹部から推薦されて幹部の直属の部下となって指揮権を貰える魔獣たちだ!」


 颯太はキラーホブゴブリンが嘘をついていないと判断して尋問を続けた。

「じゃあ第二の質問だ! お前らはなぜこの街を襲った?」


 颯太の尋問はしばらく続いた。




 10分後、颯太はリーナをバイクに乗せてエンジンをかけた。

 キラーホブゴブリンは自分の剣が心臓に刺さったまま死んでいた。


「ベンザー! あとの奴らの世話を頼んだ!」


「おう! 任せとけ!」


 颯太とは急いでバイクに乗ってで街を離れていった。


「どうする? 奴ら、もう来てるんじゃないの?」


「分からねぇ! だが簡単にはやられねーとは思うんだが……あそこには‶王の騎士団(クラウン・ナイツ)〟がいるからな!」


 颯太はそう言いつつも、内心かなり焦っていた。


「急ごう! なんせ奴らの次の狙いがマリアネス王国なんだからな!」


 颯太がそう言うとバイクのギアを変えて速度を上げた。

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