54話 『怨念の要塞』
「チッ! あまりちょーしに乗るなよ!」
トロンは手招きをして挑発してくる颯太に対して怒った。
「‶砲弾の雨〟‼‼」
トロンは巨大な防壁を錬成してさらにその防壁から直径50センチメートルの大きな銃口を複数錬成して颯太に一斉射撃をした。
「効かねーよ! ‶波動旋風〟‼‼」
颯太は飛んでくる砲弾を黒い巨大旋風で跳ね返した。
倍の速度で返ってきた砲弾は防壁に直撃して、トロンの錬成した防壁は簡単に粉砕した。
「さーてと、お前にはさんざんボコされたからなあ! そのお礼をしなきゃだなあ! ‶疾風螺旋乱舞〟‼‼」
颯太は黒刀を背中の鞘に納めて両拳に黒い旋風をまとってトロンに超速接近して殴りまくった。
トロンのミスリルの鎧は殴られるたびにどんどん砕けていった。
「い、痛い! も、もうやめ……」
トロンはボコボコに殴られて言葉を発することができないほどになっていた。
「ラストだ‼‼‼」
颯太の最後の一発がトロンの顔面にヒットしてトロンは10メートルぐらい吹っ飛んだ。
「が、ガハッ!」
トロンは顔面血まみれで歯も数本折れていて意識を保っているのがやっとの状態になっていた。
「お、俺は……また負けるのか……あいつに」
トロンは自分のポケットをあさって、ポケットの中から3錠の‶ストロング・D〟が出てきた。
「俺はこんなところで負けるわけにはいかねえんだーーー‼‼‼」
トロンはそう言うと、3錠あった‶ストロング・D〟を全部服用して体全身から魔力があふれ出してきた。
そしてトロンは立ち上がって、両手の人差し指と中指を立てて下に向けて両腕を交差させて叫んだ。
「ウォォォォォォォォォ‼‼‼ ぶっ潰せ!!!
‶要塞の巨神兵〟‼‼」
するとトロンの周囲に魔法陣が展開されて‶魔導神装〟をした時の数十倍の液体金属がトロンの周りを竜巻状に回った。
1分ほど液体金属の竜巻は起きていたのだが、竜巻が消失した時に颯太たちは驚愕した。
何とそこには30メートルを超える城が現れたのだ!
「キーキッキッキー! お前風に言ってやるよ! 第3ラウンドの開始だ!」
トロンの声が消えると、城がゴゴゴゴゴゴと変形を始めた。
城から手足が生えて、城の原形を保ったまま巨大なゴーレムになった。
手の甲には直径50センチメートルほどの銃口の大砲が複数備えられていて、そのほかにも肩や足など所々に大砲が備え付けられていた。
「これが錬金術師の底力だ! くらえ!
‶砲弾の雨‼‼‼」
トロンの手の甲の大砲からマシンガンのように砲弾が発射された。
颯太はこれを受け止めるのはさすがに骨が折れると思い、超速移動でその攻撃をかわした。
ズドドドドドドドォーーーン‼‼‼
颯太が全弾よけきったころにはトロンが撃ち込んだところの地面は底が見えないほどに陥没していた。
「フゥー……ここまで距離をとればしばらくは追ってこないだろう!」
と颯太はリーナと静香を下ろして汗を拭いていた。
「おい!これくらいで俺から逃げきれたと思うなよ!」
トロンはそう言うと、背中と腕と足から、ジェット機が出てきて颯太の方へ猛スピードで接近してきた。
「う、ウソーん‼‼‼」
颯太はあまりの驚きに思わず黒刀を落としてしまった。